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まもなく2周年!北の大地に石狩データセンターあり第2回

「イノベーション」から「ソリューション」への道筋を追う

インテルまで巻き込んだ石狩データセンターの実験の成果

2013年10月16日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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インテル主催の石狩データセンターの最新レポート第2弾は、「最新技術の実験場」としてのデータセンターの役割について見ていく。インテル参加の分散ストレージ、開所以来取り組んできた直流給電、注目度の高い超伝導送電までじっくり解説する。

1ビットを一番安価に保存できる分散ストレージサービス

 2年前、担当は石狩データセンターの開所時に書いた記事のまとめに、「最新技術の実験場『石狩データセンター』のすべて」というタイトルを付けた。今回、2年ぶりに石狩データセンターを訪れ、中身を見学させてもらったが、改めてこのタイトルは間違ってなかったなあと思う。石狩データセンターは単にIT機器を集積したラックの塊ではなく、最新技術を徹底的に検証し、ソリューションとして仕立てるための「イノベーションの苗床」なのだ。

 今回披露されたのが、インテルとさくらインターネットとの共同研究で実現した分散ストレージシステムだ。これは2013年5月に開催されたインテルの発表会で登壇したさくらインターネット代表取締役社長 田中邦裕氏からアナウンスされたもの。見学会において、田中氏は「日本で1ビットを一番安価に保存できる場所を目指す。今期中には課金まで含め、サービスを開始する」と語った。

分散ストレージシステムの採用

 データセンター・省電力化に注力するインテルがさくらインターネット研究所と技術的な情報交換を始めたのは、今から数年前にさかのぼる。それ以降、メニーコアプロセッサーやマイクロサーバーなどの先端的な技術の研究や啓蒙などを両社で連携して進めてきたという。また、インテルとさくらインターネットの共催でXeon Phiの開発者イベントを企画したり、インテルの新CPU発表へのコメントをしたこともあったとのこと。そもそも石狩データセンターにおいても、ほぼすべてのサーバーでインテルアーキテクチャを採用しているほか、クラウドやVPSなどのサービスでインテルの仮想化技術「VT-x」をフル活用している。

 今回さくらインターネットでは、インテルのリファレンスモデルをベースに台湾のクアンタが製造したストレージサーバーを2ラック分導入。約1PBの容量を確保し、正式なサービス開始までの検証を進めているという。

インテルのリファレンスモデルをベースにしたストレージサーバー

 インテル クラウド・コンピューティング事業本部 データセンター事業開発部 シニア・スペシャリスト 田口栄治氏は、2020年までのクラウド時代を見据える「オープン・クラウド・ビジョン」におけるデータセンター技術の進化について説明した。田口氏によると、当初はサーバーにおける仮想化の導入だったが、現在はサーバー、ストレージ、ネットワークのそれぞれの分野で負荷に応じた最適化技術が浸透している状況。エンタープライズアプリケーション、ビッグデータ、コンテンツやゲーム、HPCなど多種多様なワークロードに応じたリソースの最適化が鍵になっているというわけだ。今回導入した分散ストレージ技術も、「コールドストレージに特化したソフトウェア技術で、Erasure Codingにより、三重コピーよりも高い利用効率を実現しているといったメリットがある」(田口氏)とのことだ。

インテル クラウド・コンピューティング事業本部 データセンター事業開発部 シニア・スペシャリスト 田口栄治氏

 さらに田口氏は、今後のデータセンターを見据えた「ラックスケールアーキテクチャ」についても説明した。これは今までのようにサーバーをラックに備え付けるのではなく、ラック自体にバスが走り、高密度なIT機器が直結されるというもの。実装密度の向上、電力や配線の削減、帯域の拡大などさまざまなメリットが得られるほか、導入や運用もSoftware-Definedされる。そのためにインテルでは実装密度を上げるためのAtomやXeonのSOC化、シリコンフォトニクスやファブリックなど、ラックスケールアーキテクチャ実現のための要素技術の開発に注力しているという。

インテルのラックスケール・アーキテクチャ

ITサービスは安ければ大量に売れる

 田口氏は、「こうした技術をいかにオープンで、コモディティ化されたモノで実現できるかが、われわれの課題」と語る。田口氏は、FacebookやGoogle、Amazonなど時代をときめくプレイヤーに共通する成功要因として、コモディティ化されたIAサーバーを大量に導入し、サービスを構築した点を指摘。「確かにコモディティ製品はお金があれば誰でも導入できるが、最終的にはソリューションが勝負。やはりGoogleでしかGoogleにはなれなかった」と述べ、安価でスケーラブルなインフラ上があったからこそ、Webジャイアンツ独自のアイデアやビジネスを実現できたとアピールした。

 コモディティの推進論者であるさくらの田中氏も、「コモディティは、安くなると大量に消費されるコモディティとそうでないコモディティの2つある」と持論を展開。「トイレットペーパーは1/10の価格になっても、爆発的には売れない。しかし、ITのサービスや製品は安ければ、利用が拡がり、大量に売れる。弊社でも法人向けに4980円/月で売られていたVPSを980円/月にしたら、お客さんがたくさん集まってきた」と語った。

 さらに田中氏は「(インテルは)個人向けのCPUを、企業向けにきちんと設計しなおして、サーバー向けとして販売している。大量に売れるものの方が信頼性が高いし、安価だし、いつでも入手できる。もちろん固定費はすごくかかっているはずだが、ブレイクイーブンを超えれば利益が安定する」と、コモディティ化を前提としたインテルのビジネスに関しても親近感を示した。両社が緊密に連携する理由は、やはり「コモディティの推進」という点にあるようだ。

(次ページ、「イノベーションの苗床」からの第1弾はHVDC)


 

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