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スケールアウト/ハイパースケール市場を狙い製品ポートフォリオを強化へ

HP、サーバー向けUbuntuと高密度x86サーバーを販売開始

2013年10月07日 06時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は10月4日、サーバー向け商用Linux OSの「Canonical Ubuntu Server」、およびラックマウント型高密度x86サーバーシステム「HP ProLiant SL2500 Scalable System」の販売開始を発表した。エンタープライズ領域でもニーズが高まりつつある、スケールアウトサーバー市場向けの製品ポートフォリオを強化する。

Ubuntu Serverの24時間×365日サポートを提供開始

 Ubuntu Serverは、パブリッククラウドサービスやハイパースケールシステムの領域で人気の高いLinux OS。クラウドプラットフォーム「OpenStack」のリファレンスOSにもなっており、OSそのものはオープンソースコミュニティで開発が進められる一方、商用サポートなどのサービスを英国カノニカルが提供している。

 Ubuntu Serverに関して、HPではこれまでも対応エージェントソフトウェアのリリース、カノニカルからのサーバー認証取得、ハードウェア情報の開示といった取り組みを行ってきた。今回はカノニカルとの協調体制のもと、サーバーオプションとしてUbuntu Server(StandardおよびAdvancedエディション)の販売を開始する。なおサポート機種は、2ソケットのProLiantサーバー現行モデル全機種となっている。

 Ubuntu Serverはライセンス/サブスクリプション料金がかからず、テクニカルサポート料金のみで利用できるため、大量のノードをベースとするハイパースケールシステムでも低コストで利用できるメリットがある。またアプリケーションやOSの展開を自動化/オーケストレーションする「Juju」や「MAAS」、高度なシステム管理を行う「LANDSCAPE」といったツールも標準で提供されており、スケールアウト環境における運用管理の省力化が図られる。

ライセンス/サブスクリプション料金が発生しないため、ノード数が多いシステムでは特にコストメリットが高い。なおAdvancedエディションではクラスタリング、HAフェイルオーバの機能が利用可能

アプリケーションの展開ツール「Juju」のデモ画面。画面左の一覧からアプリをドラッグ&ドロップするだけでデプロイ完了。MAASやクラウドコントローラとの連携でサーバやOSのプロビジョニングも自動化する

 テクニカルサポートは、HPがハードウェア、OS双方の一元的な窓口となり、ワンストップで提供する。Ubuntu Serverに関する問合せや障害対応は、日本とグローバルのHP、カノニカルとの協調体制で対処する。

 発表会に出席した英カノニカルのクラウドチャネル&アライアンス担当バイスプレジデントのジョン・ザノス(John Zannos)氏は、HPとカノニカルはPC、サーバー、クラウドといった幅広い領域で長期にわたる協力関係にあり、今回の日本HPとの協業は「日本の顧客にとっても非常に大きな発表だと思う」と述べた。

サポート体制。日本HPがサーバーとUbuntu Serverのワンストップ窓口として機能し、HPグローバルやカノニカルにエスカレーションを行う

英カノニカル クラウドチャネル&アライアンス担当バイスプレジデントのジョン・ザノス氏。HPとの長期にわたる協力関係を強調した

2Uに4ノードを格納する高密度x86サーバーシステム

 HP ProLiant SL2500 Scalable Systemは、スケールアウト型利用を前提とした「SL(Scalable Line)」シリーズのラックマウント型高密度x86サーバーシステム。2Uサイズの「ProLiant t2500シャーシ」と、ハーフラック幅のサーバーノード「ProLiant SL210t Gen8」の組み合わせにより構成され、2Uスペースに最大4ノードを格納できる。

HP ProLiant SL2500 Scalable Systemの本体背面。前面はHDDアレイが配置されており、ノードの抜挿やケーブリングはすべて背面側から

SL2500システムのスペックと最小構成価格

 シャーシには電源およびファンのモジュール(各ノードで共有)と、最大24本の2.5インチHDDまたは最大12本の3.5インチHDDを搭載する。電力効率の向上のため、電源ユニットはAC/DC変換効率が最大96%の「80 Plus Titanium」規格のものを採用。また、AC/DC変換ロスのない直流給電用のDCパワーサプライにも対応している。

 サーバーノードはインテルの「Xeon E5-2600v2」ファミリーのプロセッサを搭載しており、1ノードあたり最大2ソケット、メモリ512GB、内蔵ストレージ12TBを実現する。なお、サーバーノードには高さの異なる2つのモデル(1U/2U)が用意されており、1Uモデルでは2つのPCIeスロット、2Uモデルでは4つのスロットが実装されている。

 そのほか、オンボードの管理/監視モジュールである「HP iLO」、ProLiant Gen8シリーズの各種管理機能も継承している。

 なお同日、ProLiantシリーズの既存5製品(SL6500、ML350p、DL360p、DL380p、BL460c)についても、新たにGen8製品の販売開始が発表されている。

エンタープライズ市場でもハイパースケール需要が高まる

 製品発表会で日本HPのサーバー&ネットワーク製品統括本部 統括本部長の橘一徳氏は、同社がスケールアウト事業に注力する背景について説明した。

日本HP サーバー&ネットワーク製品統括本部 統括本部長 橘一徳氏

企業が注目するスケールアウト型技術への障壁を下げるのがHPのスケールアウト事業の狙い

 橘氏によれば、日本HPでもスケールアウト市場向けのサーバーはすでに出荷台数の30%前後を占めている。また米国HPでは今年5月にサーバー事業部の組織改編を行い、エンタープライズサーバー、コアサーバーの部門に並ぶかたちでハイパースケールサーバーの専門部門を起ち上げ、本格的に注力する姿勢を見せている。

 エンタープライズ領域では、「Hadoop」などを使ったビッグデータ処理に加え、今後は膨大なセンサーデータを扱う“モノのインターネット(IoT:Internet of Things)”のITシステム需要も拡大していくことが予想されている。

 橘氏は、サービスプロバイダーだけでなく、今後はエンタープライズ領域でもハイパースケールシステムへの需要が見込まれるとして、特に「IoTで生まれる膨大なセンサーデータの効率的な管理と活用に向け、製品やサービス、サポートを提供していく」と述べた。

訂正とお詫び:一部組織名に誤字がありましたので訂正いたしました。お詫び申し上げます。(2013年10月8日)

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