人工知能技術「ココロエンジン」とは
シャープでは、「情報通信」を「情報通心」という文字に置き換えて、その姿勢を説明する。
「日本では、『おもてなし』という言葉が使われるが、これは英語のホスピタリティとは若干意味が違い、家族的である、あるいは友達のようなといった心の表現まで含まれる。心が通うことがシャープが取り組む『情報通心』であり、これがユーザーと家電の新たな関係を示すものになる」と述べた。
情報通心で示す「心」には、2つの意味があるという。
ひとつ目は、双方向で家電と人の心が通うものであるということだ。
「これまでの家電は、オン/オフといったように、最初と最後の設定だけの一方向のものであった。しかしこれからの家電は、双方向かつフレンドリーで、心が通っているような関係にしなてくはならない。心を吹き込むことができる人工知能技術を採用したインターフェースを可能にする『ココロエンジン』を搭載し、家電製品がより身近に感じられるものにした」とする。
ココロエンジン家電をクラウドを通じてつなぐ
2つ目がココロエンジンの家電同士がクラウドを通じてつながり、ユーザー情報を共有することで、利用者により良い暮らしを提供するというものだ。
機器同士がつながることで、部屋全体の温度、湿度をコントロールし、さらには見守りといったサービスを提供できるようになる。
「洗濯機は、お風呂場の近くに置かれることが多く、洗濯が開始されたら、リビングでテレビや本を見たりして過ごすことになる。洗濯が終了した際に、洗濯機が音で知らせるのではなく、リビングのテレビと連動して、洗濯が終了したことを教えてくれる。また、温度と風向きを変えてほしいと語りかけると、空気清浄機とエアコンが相談して、エアコンの風向きを変えてくれる。そして、家電が自分の健康にも気を使ってくれる。また、クラウドやSNSを介して、いつでも、どこでも頼りになる存在になりうる。こうしたことは、うれしく、楽しいことであろう」
家電同士のつながりによる「ともだち家電」
こうした家電同士のつながりによって実現する世界を、奥田会長は「ともだち家電」と称する。
「家電が健康を気遣ってくれる、賢いともだちに変わってくれる。まさにともだち家電である」というわけだ。
そして、こんな言い方もする。
「もしかしたら、冷蔵庫が奥さんの強いともだちに変わってしまうかもしれない」。
奥さんが、冷蔵庫に向かって、「お父さんはいまどこにいるのかなぁ」と質問すると、冷蔵庫はスマートフォンと連動して、GPSセンサー機能から六本木にいると答えてくれる
「冷蔵庫が奥さんの味方になる。男性は行動や生活を考えないといけないかもしれない」として会場の笑いを誘った。
こうしたクラウドとの連動では、家族の予定や地域の予定、さらには天気予報などの外部データが連動し、これを分析することで、役に立つ情報が提案。コンサルテーションの仕組みが加わることで、新たなICTの仕組みができあがるという。
「これによって、新たなビジネスも形成されることになるだろう。アイデアはたくさん出るだろうが、ユーザーが本当に求めているウォンツ型のサービスを提供することが必要だ」などと語った。
日本を最先端のICT都市のショーケースに
一方で奥田会長は、4K8Kが当たり前となる世界が訪れて、それが新たな市場を創造すること、健康分野においてもICTが大いに活用されるようになることなどを紹介。最後に、「Technology to Customer」が重要であるとしながら、人と機器とのつながりや、人と社会との適切なつながりや関わりを保つことができるようになり、ICTは便利さや快適性だけでなく、心と心がつながり、心に響く機器に進化していく必要があるとした。
「心と心がつながることで、ICTは難しいものではなく、頼りになれる存在に進化することになる」。
CIAJの会長就任時に奥田会長は、「ICT+を目指す」と発言した。
「(ICT+の)“+”とは、人を指している。人にフォーカスした仕組みや制度の導入、条件の緩和によって、新たなICTの発展につながるだろう。地域ごと、年齢ごと、産業分野ごとにICTの理解に差がある。ICT人口をどう増やすのか、ICTスキルをいかに高めるかが必要である」と語った。
また、東京オリンピックの2020年開催が決定したことについても言及。「1964年の東京オリンピックの際には、高速道路、新幹線などの交通インフラが劇的に整備された。今度の東京オリンピックでは、東京を訪れた世界中の訪問者が、簡単に情報を得られ、行きたい場所に簡単に行けるような形を実現することが求められる。これはICTによってインフラを備えなくてはならない。8K本放送を前倒しをしていく必要もあるだろう。2020年の東京オリンピックに向けて、日本を最先端のICT都市のショーケースにしていく必要がある」と提言した。