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PCオーディオでアイドルを聴く人がいるから、高音質を届けたい

オーディオメーカーと音楽制作者が考える、本物のいい音とは (5/7)

2013年10月01日 15時00分更新

文● 編集部、外村克也(タトラエディット) 写真●今井宏昭

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今の音楽を「いい音」で流したい

小島 ハイファイを目指したオーディオ機器なら、基本的には入ってきた信号を忠実に増幅して出すことが目的になります。とはいえ実際にオリジナルの音をそのまま出力することは今の時代すごく難しい。生音がベースにあるわけではないので。ですから多少アコースティックな素材とか、なにか本能的に気持ちのいいと感じられる要素を探します。そしてオリジナルを想像しながら、感覚的なところで「こうなるべきだ」とハード側の音を追い込んでいくんです。すると結果的には、時代性のようなものが機器にも反映されます。ですから昔の機器で今の音楽を聴くとやっぱり少しバランスが悪くて。ビンテージの機器ならその時代の音楽と組み合わせると一番バランスがよかったりするんですね。

松隈 じゃあ、今の音楽に合わせて研究されているわけですね。

小島 そうです。ただ、自分たちが作る機器の実力を確認したりする場合、クラシックやジャズがチューニングの素材としては多いんですよね。本音は、今の人が聴く音楽をいい音で再生したい。でも、いろんな音楽ジャンルの中でこだわるアーティストやエンジニアの人たちがちょっとずつ現れてきて、耳のいいファンを探し当てて、ちゃんと相思相愛になっているんですよね。クラッシックやジャズだけじゃなく、今世の中で流れている音楽にもフォーカスしたいい音を、機器に盛り込んでいきたいと思っています。

松隈 細かいことをやっても再生側はどうせ聴いてくれない、そんな表現も機器によって再生できないと思ったらこちらとしてはすごく悲しくて……。細かいことを受け止められる度量は、こっちも用意をしていますよという部分を伝えたいですね。クリエーターとかアーティスト側からすると「結局あれで聴いちゃうんでしょ」という切なさでやっているところはありましたから。

小島 PCオーディオのいいところはフォーマットに依存しないところですね。CDのように、固定された規格だと、どんなにいい音を作っても最終的にはCDフォーマットという枠にはめなければいけない。PCオーディオならば録音した環境をなるべく活かしたままリリースができます。ちなみにアーティストやクリエーターの人が自分で制作した音源を手軽にリリースしたいと思ったときに、それができる環境はあるんですか?

松隈 もうすでにあるんです。僕はレーベルを自分で作ったので、24bitで出そうとMP3でだそうと、盤にしなければなんでもいいんです。まだ実験段階ですが、通販サイトみたいなところで曲の配信もしています。今の話をお聞きして24bit版を売ろうと思いました。

小島 そういうアーティストが増えてくれば、今度はそれをいい音で聴く機器、差がわかる機器を選びたいという人も出てくるでしょうし。それはすごく嬉しいですね。

松隈 やはりいろいろこだわる音楽ファンが増えてきていますし、そういう人たちの使っている機器がこだわりに対応し始めているのも事実です。こういう時代だからこそ、いいモノというのはそのよさが伝わりやすかったりするじゃないですか。逆に悪いものも伝わりやすい。このちょっとした差が伝わらなければお金や手をかけても、もったいないと思うんです。今は確実に伝わるタイミングだと思うんですね。ちゃんと差を聴き分けられる環境もすでに各社たくさん出している。そうするとどんな人でも、音源さえ入手すれば今までのCDとは明らかに違う音が聴ける。マスターの段階で多少ターゲットを絞っている作業をすれば、しっかりとした音を届けられるのはうれしいです。

小島 CDにしなきゃという前提が今まであったからでしょうね。16bit/44.1kHzにしないとという。ターゲットをどこにするかで当然音作りっていろいろと違うと思いますし、たとえば24bit/48kHzが最終的なパッケージの形だという風にある程度決めていれば、そのための作り方ができますよね。

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