ハイレゾ音源は「ファイル」で提供するのがトレンド
一番メジャーなのは「リニアPCM」や「FLAC」
現在、ハイレゾ音源は光メディア(SACDなど)でも提供されているが、むしろ単体のファイルとして配信されているのがはやっている。
配信サービスについては後ほど触れるとして、まずは音楽データのファイル型式について解説しておこう。
音楽ファイルというと、「MP3」や「AAC」などが有名。これらは圧縮方式(コーデック)の種類も意味しており、それを再生するにはMP3用、AAC用の解凍(デコード)機能を持つ再生ソフトが必要だ。
現在の再生ソフトはほぼすべて、MP3やAACの再生が可能だが、ハイレゾ音源の場合は、非圧縮の「リニアPCM」や、ロスレス圧縮(圧縮前のデータと解凍したデータが同等となる方式)である「FLAC」形式の音楽データで提供されることが多い。
リニアPCMの場合、ファイル型式はWAV形式となる。WAV形式はPCでCDをリッピングするときに選択することもできるので知っている人も多いだろう。言わばデジタルデータを何の加工もせずにそのまま記録してしまうものだ。
FLAC形式は圧縮されているので再生のためのデコーダーが必要になる。FLACは「Free lossless Audio Codec」の略であり、使用料が必要ないことから再生プレーヤーソフトや半導体プレーヤーでも再生が可能なものが増えてはきている。
しかし、再生ソフトの定番である「iTunes」や「Windows Media Player」では再生に対応していない。
すなわち、WAV形式のハイレゾ楽曲ならばともかく、FLAC形式の楽曲はiTunesなどでは再生できない。FLAC形式を再生するには対応した再生プレーヤーソフトを使う必要がある。まずはここを注意しよう。
リニアPCMやFLACとは異なる次元の「DSD」
ここでDSD音源についても触れておきたい。DSDは非圧縮のデジタル記録方式だが、リニアPCMとは異なる発想で生まれたもので、2.8MHz(または5.6MHz)のサンプリング周波数で1bit記録される。
リニアPCMの192kHzに比べて強烈に高速なサンプリング周波数のため、0と1で信号記録するデジタル記録でありながら、記録されたデータは音の変化の大きな部分は信号の密度が高く、変化が少ないと密度が低くなるという、アナログ波形の粗密波のような形で記録される。
いわゆるデジタル記録でありながらアナログ記録に近い方式という表現はここからきている。もちろん、記録された音楽も微小な余韻や空間の響きなどの再現が得意で、自然な音質を再現できると言われている。
ちなみに、理論上の高域限界は可聴帯域をはるかに超えるレベルだが、方式上、超高域成分のノイズが出やすいため、一般的なDSD再生機器はすべて100kHz程度を高域再生限界とし、それより上の帯域の情報はカットしている。
このため実際に再現できる音域という意味では、リニアPCMの192kHzとほぼ同等と考えていい。
DSDのほうがFLACよりもファイルサイズが小さい!?
3分間の音楽ファイルのサイズ比較 | |
---|---|
FLAC 96kHz | 51MB |
FLAC 192kHz | 106MB |
リニアPCM 96kHz | 100MB |
リニアPCM 192kHz | 200MB |
DSD 2.8MHz | 83MB |
記事掲載当初、上記表の項目に誤りがありました。お詫びして訂正いたします(2013年9月24日)
当然ながらファイル型式によって、そのデータ量にも違いがある。主なハイレゾ楽曲によるデータ量は上の表の通りだ。データ量=楽曲の情報量なので、CD音源と比べてもデータ量は大きいし、1/10以上に圧縮するMP3などと比べてもデータ量は大きくなる。
HDDならばそれほど困ることは少ないだろうが、半導体プレーヤーなどでハイレゾ楽曲を楽しむ場合は、楽曲を保存できる数が減ってしまうことになる。もちろん、ダウンロードにもそれなりの時間がかかる。そのことを考えても、いわゆるストリーミング形式での楽曲提供は今のところはちょっと難しいだろう。
意外なのは、DSD音源は非圧縮のままでも情報量が少なめということだ。リニアPCM192kHz/24bitと同等の音質となるDSD2.8MHzの場合、WAV形式どころかロスレス圧縮のFLACよりもデータ量は小さい。
将来的にポータブルプレーヤーなどでもハイレゾ再生ができるようになってくると、DSD音源のデータ量の小ささは魅力になるように思う。
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