各キャリアが料金プランを発表し、iPhoneユーザーの争奪戦が熱を帯びている。中でも積年の恨みを晴らすのは今とばかりに注目を集めているのがドコモだ。
「ドコモへおかえり割」は、過去MNPで他キャリアに乗り換えたユーザーが同じ電話番号でドコモに(MNPで)戻ってくると、「タイプXi にねん」の基本使用料780円が2年間無料になる。さらにドコモ端末を解約した時に残っていたドコモポイントを、再契約する機種購入代金から割引できるサービスも用意している。iPhoneを使いたいという理由で、他のキャリアに移ったユーザーをドコモに取り戻す意欲が見られる。
この独自の料金プランでどれくらいのユーザーがドコモへ戻ってくるのか、またキャリア間の戦いがどのように変化するのか注目したい。
戦う相手をアップルからアマゾンに変えたNEC
一方、7月にスマホ事業からの撤退を発表したNECは、企業向けのクラウドサービスを刷新し、新たな勝負を仕掛けた。6700円という業界最低水準の月額利用料を打ち出してアマゾン ウェブ サービス(AWS)に対抗する。神奈川県内にデータセンターを新設し、今後5年間で300億円を投資する予定だ。
MM総研の調査によると、国内クラウド市場は、2017年度に2012年度の4倍の規模となる2兆円超まで拡大する見通しでまだまだ成長市場にある。
NECの強みは価格だけでない。まず、サーバーや通信機器、ソフトウエアなどクラウドサービスに必要な設備等が自前で揃えられること。現在、最新技術を駆使した省電力サーバーを開発しており、新設するデータセンターに導入する考えだ。また、データセンター自体も独自の冷却技術を採用しており、空調の消費電力が従来のものに比べて年間30%削減できるという。
NECのクラウドサービスは当然、円建てで請求書払いに対応している。当たり前のように見えるが、実はこの決済方法はAWS対して有利な点でもある。
AWSは2011年3月、東京にデータセンターを開設したにもかかわらず、決済は「ドル建て」で支払いは「クレジットカード」に限定している。AWSが日本でシェアを広げている中、いずれもユーザーから何度も改善要求が出ている課題だ。
円建て決済や請求書払いを希望するユーザーには、支払いを代行するAWSのパートナー企業が紹介される。しかし、その実体はパートナー企業がドル建て決済とクレジットカード払いを代行しているだけに過ぎない。多額のクレジットカードのポイントをパートナー企業が受け取っているケースも少なからず存在するという。
大企業だけではなく、多くの中小企業はクレジットカード払いに対応できない。NECはこういったネガティブな理由でAWS導入を見送っている企業をターゲットにしているのだ。
スマホ撤退により不安視されたNECだが、戦うフィールドをスマホからクラウドに変え、戦う相手をアップルからアマゾンに変えて勝ちを狙いに来ている。