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コミックマーケット84「見本誌の閲覧提供」サービスを体験してみた!

幻の「艦これ」スタッフ本を米沢嘉博記念図書館で読む方法

2013年09月20日 16時00分更新

文● コジマ/ASCII.jp編集部

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見本誌閲覧サービスの裏側を特別に見せていただいた

 かくして、申請から2週間が経った。読者にとっては2ページ目に移動しただけかもしれないが、編集部員としては今か今かと首を長くして、10日以上も待っていたのである。胸をワクワクさせながら図書館に向かい、受付を訪れると……しっかり見本誌が用意されているではありませんか!

探していただいた見本誌たち

受け取るところを撮影したのだが、何かの授与式のようになってしまった

 これで目的は果たされたような気もするのだが、今回は当日貸出もお願いしてみることに。本来ならば時間がかかるのであまり推奨できないのだが、特別にスタッフの方々の作業風景を拝見し、サービス提供の舞台裏も見せていただくためである。

当日貸出を体験してみることに

 というわけで、特別に見本誌の倉庫の中に入れていただいたのだが……その量たるや、ものすごいものである。会場の東京ビッグサイトがあれだけの人で埋まるのだから、当然といえば当然なのだが、「見本誌だけでもこんな数になるのか」とあらためて実感させられた次第だ。

 それにしても、この大量の箱はどこから用意したものなのだろう? コミックマーケットのロゴ入りで、大きさも見慣れないのだが。

ずらり並んだ見本誌の山たち

「この箱はもともと、郵便局がゆうパック用に以前販売していたものと同サイズなんです。あまりに使い勝手がいいので、郵便局での扱いが終わったあとも、コミックマーケットが発注して使い続けているというわけです」

「この箱は底面がB4サイズで、高さはちょうどB5。要するに、一般的な同人誌のサイズぴったりなんです。しかも、受け皿となるダンボール箱に、もう一回り大きいダンボール箱をかぶせる形になっています。重い荷物を送るために頑丈にしつらえてあるのですね。じつは、米沢嘉博記念図書館でもこの形のダンボール箱を使っています。ちなみにこれを作っているところって、もう1社しかないんです」

「最近ですと、同人関係の業者さんなども同形の箱を利用されています。個人発注する同人誌のコレクターさんもいらっしゃるようですね。昔からのコミケスタッフの方の話だと、みんなが郵便局に買いに行っちゃって、夏・冬のコミケのあとは箱の在庫が無かったりしたそうですよ」(山田さん)

こちらがその箱。箱詰めはコミケ開催中にリアルタイムでやっているので、余裕がある箱は、後日隣接するサークル箱同士で詰め合わせする。「再フュージョン」とはそれを示す用語だそう

 あらためて確認しておきたいのは、「目当ての同人誌」単位ではなく、「頒布したサークル」単位で出納することだ。つまりスタッフの方々は、まず複数サークルの同人誌が収納されている箱を開け、中をすべて確認し、閲覧を依頼されたサークルの見本誌(1冊だけとは限らない!)を丁寧に探しだしてくれるのだ。

スペースごとに収納されている

この中からスタッフが人力で探すのだ

 したがって、当日閲覧を申し込んだ場合、用意にどうしても時間がかかってしまう。少なくとも10日前、できれば余裕をもって2週間前には申し込んでおきたい。

 前述したが、CDなどのメディアも会場では見本誌として提出されるものの、米沢嘉博記念図書館では再生機器がないので預かっていない。ただ、それらが本の中に挟んである形で頒布されていた場合、あるいはカレンダーやメモ帳など、イラストで描いてあるものが複数枚あるものに関しては、図書館に届いている可能性もある。ただし、「必ずあるとは限りません」とのことだ。

 しかし、なぜこのようなサービスを図書館でスタートさせたのだろう。今回の取材にご協力いただいた山田さんに、その理由を聞いてみた。

「コミックマーケットでは第一回の頃より現在までずっと見本誌を集めています。それはコミケで頒布された同人誌をすべて保存し、それで誰もが見られるような図書館的な施設、見本誌図書館を作りたいという夢が昔からあったからです」

「ただ、将来的にはそうしたいと思っていたものの、リソースがなかったんですね。そこで、実験的に米沢嘉博記念図書館を使いたいと。テストケースとして、見本誌がどのような使い方をされるのか、どのくらい利用されるのかといった事例を集めているんですね」

事前・当日閲覧で受け取った見本誌の数々。これらを図書館で読めてしまうのだ。1回につき10サークルまで受け付けできるので、場合によっては数十冊を一度に渡される可能性もあるとか

 ……ということだそう。理由はわかったのだが、こんなに簡単に見本誌が読めてしまうとあっては、毎回多くの希望者であふれかえってしまうのではないだろうか?

「いえいえ、多い時期でも半年間に十数人くらいです。また利用される方の半分は何度も来てるリピーターですね」

「とくに当日にいらっしゃる方は、何を見たいか明確にされていない場合が少なくないんです。この図書館には、観光目的で来館される方もいらっしゃいますので。そういう場合は滞在時間も限られていることが多いですから、遠方から来られるときには注意してほしいですね」

 つまり、サービス自体が意外と知られていなかったり、知っていても当日に申請しようとして断念したり……といったケースもあったということ。とても便利なサービスなのだから、事前に申込の方法などをよく把握して、じっくり楽しみたいところだ。

閲覧室でじっくり読む。入手しそびれた本をこんなに簡単に読めてしまうなんて、ちょっと感動

 そんなわけで、ざっと見本誌の閲覧提供サービスを体験してみたが、「自分も利用してみたい」と思った人もいるのではないだろうか? コミケで買い逃した本がある人のみならず、サブカルチャーを研究したいという学生・研究者にとっても、実用的かつ興味深いサービスであることは間違いない。コミケ戦士は要チェックだ!

お知らせ

 現在、米沢嘉博記念図書館と日本SF作家クラブ主催により、明治大学博物館特別展示室で「SFと未来像展」が開催されている。SFと社会的に流布された未来像との相関に焦点を合わせ、その時代ごとの変遷と、現実の未来へのヴィジョンを、原画や当時の玩具などにより展示されている。開催は9月29日までとなっており、入場は無料。気軽に足を運んでみてはいかがだろうか。

 また米沢嘉博記念図書館1階展示コーナーでは、併催企画展として「小松左京『日本沈没』展ー未来へのヴィジョンー」も開催されている。SF好きなら、こちらも合わせてチェックされたい。

SFと未来像展

 会期:2013年9月1日(日)~29日(日)
 会場:明治大学博物館特別展示室
 時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
 入場無料/会期中無休

小松左京『日本沈没』展ー未来へのヴィジョンー

 会期:2013年6月7日(金)~10月6日(日)
 会場:明治大学 米沢嘉博記念図書館1階展示コーナー
 休館日:毎週火・水・木曜(ただし祝日の場合は開館)
 ※特別整理などで休館の場合あり
 入場無料

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