まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第39回
ミクシィ 川崎裕一氏、廣木大地氏インタビューから考える
mixiの活路はどこに? 川崎・廣木 両執行役員に訊く
2013年09月10日 11時00分更新
新生mixiはどこへ向かうのか?
川崎氏・廣木氏から語られたのはmixiに残された強みとは何か、という根本的で重要な話だった。以前にも筆者は笠原氏や、今はmixiを離れた原田氏にも話を伺ったが、すべてにニーズを満たす戦略から、かなり実情にあった路線への転換が図られていることがわかる。
特に、バーチャルグラフとコミュニティにmixiの強みがあるという判断が示されたことは、「mixiはオワコン」といった揶揄に対する回答にもなっているだろう。ネットの世界は実名・リアルグラフだけで成立するものではない、という部分では筆者もまったく同感だ。しかし、いくつか気になったポイントもある。
1つは、バーチャルグラフにおけるつながりが、どの程度収益を生めるものなのか、という点だ。
例えば、いずれも決済に運営者が介在し、取引におけるリスクを低減するということにおいて、「mixiマイ取引」とヤフオク!との違いは、値付けで落札者が決まるか、それともプロフィールなどを見て出品者が買い手を選ぶかだが、これがmixiマイ取引を選択する決定的な相違点になるかは未知数といえる。
スマホゲームにおいてはDeNAとの協業の効果を期待したいが、今回語られたネイティブアプリの分野はその対象外となる上、ソーシャルゲーム自体が転換期にあるなか、ここも不透明な部分が残る。
もう1つ大きな懸念は、リアルグラフ陣営もバーチャルグラフに食指を延ばしつつある点だ。Facebookが始めたグラフサーチは、まさに「東京在住でハンドボールを趣味にする人やページ」を検索することを可能とした。
また、実名を謳うFacebookでも実際にはニックネームで運用しているユーザーも多い。必ずしもID・ニックネームといった「顕名」がmixiの強みになるとは断言しづらい面もある。
無料通話・メッセージアプリは電話番号を知るもの同士でつながることになるLINEも18歳以上にはID検索を公開しており、バーチャルコミュニティ「LINE PLAY」では実質的に見知らぬユーザー同士の交流を一定の範囲で認めている。
バーチャルグラフをベースにしたつながりの創出は、必然的に「出会い系」利用のリスクを高めることも避けられないが、そこは、mixiがこれまで培ってきた監視体制や運営能力に期待したいところだ。
また、バーチャルグラフに軸足を置くからこそ、そこで生じる様々なニーズや課題に対してきめ細かい対応もできるはずだ。その成否が新生mixiの生き残りの鍵を握る。
また、ここまで見てきたように、SNSとしてのmixiの前途は不鮮明な部分も多いというのが正直なところだ。着信メロディを中核事業においていたドワンゴがニコニコ動画を生み、オンラインゲームや検索サービスのNAVERがLINEを生んだように、事業の軸足を拡げていく必要もあるだろう(当のmixiにしても、“求人情報サービス運営会社による新事業”だった)。
一定の成功を収めたアルバムサービス「ノハナ」を社内公募制度「イノベーションセンター」を通じて分社化するといった動きもその一環であるはずだ。
今回、赤字決算となったことである意味「膿を出し切った」とも見ることができるmixi。国産SNSとしては最大となるユーザー資産や技術資産を次につなげることができるかどうか――決算内容を見ても新経営陣に残された時間的猶予は潤沢とは言えないが、果たしてこの挑戦が実を結ぶのか、引き続き注目していきたい。
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