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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第39回

ミクシィ 川崎裕一氏、廣木大地氏インタビューから考える

mixiの活路はどこに? 川崎・廣木 両執行役員に訊く

2013年09月10日 11時00分更新

文● まつもとあつし

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徹底したスマホアプリへのシフト

mixiコミュニティ

 わかりやすい例が3月にリリースされたアプリ「mixiコミュニティ」だ。

 mixiの全機能を扱うアプリではなく、自分の好みにあったコミュニティを探して、参加して、その中での交流が快適に行なえるように設計されている。

 アプリ「mixiコミュニティ」は川崎氏の目指す「個別の目的に合わせたアプリを入り口とし、全体のトラフィックを拡大させる」方針に当てはまるアプリだ。

 氏の話す“アプリ50本を目標に単機能アプリを提供し、多様なニーズに応えていく”という計画に沿ったものだと言えるだろう。

 いずれにせよPCからスマホへのシフトは、これまで広告収益が中心だったmixiのビジネスモデルを大きく転換することも意味する。下の図でも示されているように、従来の広告中心のモデルから「月額課金」「コンテンツ課金」「ゲーム課金」に注力していくことになるのだ。

今後は単機能アプリを入り口とした拡大・課金を図っていく(mixiの配布資料より抜粋)

 こちらの具体例としては、7月11日に開始された「mixiマイ取引」が挙げられるだろう。買い手がmixiあんしん支払いを利用し、ユーザー同士で物品を売買できる新サービス。川崎氏自身が起業した「株式会社kamado」にかけて、本物のカマドの取引を行なったことで話題を集めた。

 先の決算では、スマートフォンにおけるミクシィグループの月間ログインユーザー(スマホのみ)が993万人(3月)から795万人(6月)と減少傾向にあることも明かされた。インタビュー時点で2本だったスマホ向けアプリを50本にするというのが当面の目標とし、スマホでのログイン数の低下をアプリ群によって挽回できるかどうか、今後注視しておくべきポイントとなる。

 川崎氏は「スマホ中心の世界では、広告を第一に置いた事業設計は現実的ではない。あくまでユーザーの課題解決がある先の広告」とするが、同じく減少している広告収益を、こういったスマホシフトに基づく新しい収益源がどの程度補っていけるのかも気になるところだ。はてなで広告とユーザーの利便性のバランスを取ってきた川崎氏の手腕が問われる部分とも言えるだろう。

 これまでmixiの技術的な強みは、大量のウェブアクセスが押し寄せてもサービスが安定している点にあった。しかし、スマホシフトのなかにあっては、技術者に求められるスキルは大きく異なっている。

 サーバーサイドから、アプリのようなフロントエンドへの技術スキルのシフトを図るため、mixiでは新規採用と並行して社内講習会を開催し、アプリ開発技術の底上げを図っている(決算説明会では、技術者のうち4割以上がアプリ関連となったと報告されている)。また、アプリならではスピード感に対応するため、アプリは2ヵ月間で完成させることを徹底するという。

スマホシフトに伴う社内講習会が活発に行なわれているという(mixiの配布資料より抜粋)

 短期間での開発と、単機能アプリの量産というコストアップのリスクを軽減するために、mixiではスマホアプリの技術基盤の整備も進める。課金やシングルサインオンといったプラットフォーム機能は標準で利用できるようにした上で、目的に応じた単機能アプリを手早く作り上げる、という仕組みだ。

廣木大地氏。2008年ミクシィ入社。メディア統括部長などを歴任。現在、執行役員・ユーザーサービス本部長を務める

 このような技術基盤は、2009年のオープン化のようにサードパーティも利用できるものかと質問したところ、廣木氏は、「まずは内製での採用を前提とし、利用が拡がれば外部への開放も考えたい」と語った。

 先のオープン化は不発に終わったが、スマホベースのアプリ開発とそれを支える基盤整備が、外部利用につながるまで成功できるかも今後注視しておくべきポイントになる。

 リリース後は利用者数・アクティブ率・継続率などの指標に基づき、撤退も含めた評価を下していくことで新陳代謝を促し、品質と満足度の向上を図っていく方針だ。

 それと同時に、ラボアカウントも用意し、mixiとは異なる視点で課題を解決するアプリ群も生み出していきたいと川崎氏は話す。

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