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ITサービスからビジネスサービスへの領域拡大、その背景は?

「ビジネス視点での戦略化案件が増加」EMCサービス部門幹部

2013年08月16日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 エンタープライズストレージのみならずビッグデータ、クラウド/仮想化など幅広い領域に提供ソリューションを拡大してきたEMC。そのプロフェッショナルサービス部門では近年、従来よりも上流の戦略提案やコンサルティングにフォーカスしているという。来日した米EMC グローバルサービス担当シニアバイスプレジデント、エドワード・A・バーント(Edward A. Berndt)氏に話を聞いた。

米EMCのグローバルサービス担当シニアバイスプレジデント、エドワード・A・バーント(Edward A. Berndt)氏

――グローバルサービス部門が提供するプロフェッショナルサービスは、現在のEMCにおいてどのような役割を担っているのでしょうか。

 EMCでは20年以上前からプロフェッショナルサービスを提供している。ただし、当時のプロフェッショナルサービス事業は、EMCの事業全体の1%にも満たない小さなビジネスだった。提供していたサービスが、顧客の保有するITインフラにEMCの製品をつなげる「導入(Deploy)」の部分だけだったからだ。

 だが、2003年ごろを境に状況が大きく変化した。EMC製品のテクノロジーが非常に速いスピードで高度化し、複雑化するなかで、顧客側の技術スタッフのスキルアップがそれに追いつかず、せっかく導入した製品を十分に活用できないような事態が生じてきた。そこにわれわれがお手伝いする余地ができたわけだ。

 さらに当時、EMCがより高度なソリューション提供を目指して、レガートやドキュメンタム、ヴイエムウェアなどを買収し、より広範な製品と技術が提供可能になったという背景もある。

 2004年にアクセンチュアと共同で「EMCコンサルティング」を起ち上げ、製品導入に先立ってITの戦略的な計画立案をサポートしていくことになった。現在はEMCが同社を買収し、ワールドワイドで6000人以上のスタッフを抱える組織になっている。

 2003年以前のサービスは「導入(Deploy)」のみだったが、現在は「戦略化(Strategize)」「設計(Design)」から「運用(Operate)」までをカバーしている。EMCのプロフェッショナルサービスにおける最大のミッションは、EMCの製品をより良く活用していただくための、高品質なサービスの提供である。

EMCグローバルサービスの提供領域は戦略化(Strategize)から導入(Deploy)、設計(Design)、運用(Operate)まで幅広い

――ITベンダーによるサービスというと、やはり導入作業の部分をイメージしてしまうのですが、もっと広範な領域をカバーしているわけですね。

 事実として、先に述べた4つのサービス領域で最も伸びているのは「戦略化」の部分だ。EMCでは現在、IT環境の変革のためにクラウド、ビッグデータ、トラストという3つの大テーマを掲げているが、戦略化コンサルティングではこれに沿った戦略化を行う。

 戦略化の次に伸びているのが「運用」サービスだ。製品に対する十分な知識が顧客社員にない場合、運用サービスを契約していただき、われわれEMCがトレーニングなどを提供する。

 古くから提供してきた導入サービスは、われわれの事業としては縮小傾向にある。まず、製品自身のスマート化が進んできて、IT環境への実装が簡単になっていることが理由の1つ。また、導入サービスをEMC自身ではなく各リージョンのビジネスパートナーに任せ、EMCはより戦略化サービスにフォーカスするという方針も採っていることもその理由だ。

――IT製品導入前の戦略化、戦略策定はなぜ重要なのでしょうか。

 現在EMCではIT、そしてビジネスの「変革(Transform)」を提唱している。例えばITインフラの変革では、これまでばらばらに構築されサイロ化してしまっている、最適化されていないIT環境を、プライベートクラウドなどの形に整理、統合、最適化することになる。

 だが、例えばプライベートクラウドを導入したとしても、事前にきちんとした「戦略」がなければ、結局は元の混乱した状態に戻ってしまう危険性がある。何を達成すべきかという目的を定めなければならないのだ。

 もちろんこれはITインフラだけでなく、アプリケーション開発の変革や運用モデルの変革といった領域でも同じだ。そしてEMCはこうした領域でも、顧客の変革を戦略化の面でサポートすることができる。

――広範なサービス領域をカバーするためには、グローバルサービス部門自身にも「変革」が必要そうですね。

 そのとおりだ。われわれ自身も常に役割の変革に迫られている。実際、7月には社内的に「プロフェッショナルサービスデリバリにおける変革」をアナウンスしている。

 まず、サービスを提供するスタッフ自身のスキルを常に向上させていかなければならない。たとえば数年前まで、“第3のプラットフォーム”への対応をお手伝いできるスタッフはゼロだったわけだが、現在はワールドワイドで300名以上を数える。

 また顧客の業界、例えば金融やヘルスケア、ライフサイエンスといった産業に対する知識も持たなければならない。われわれが提供するのはもはやITサービスにとどまらず、ビジネスサービスでもある。

 こうした変革を実現するため、業界標準よりも長い期間の社員教育を実施したり、先述したアナウンスとともに組織変更、キャリアプランの変更を行ったりしている。

――他の大手ITベンダーやITコンサルティングの企業も、ITの戦略化サービスを提供しています。他社と比較した場合のEMCの強みとは何でしょうか。

 すべてのものの中心に「データ」があると、しっかり理解していることだ。たくさんのデータから、ビジネスを実行可能にする「情報」が引き出される。そのための仕組みを提供するのがITとしての最も大事なサービスだと理解している。EMCは、データセントリック、インフォセントリックな観点から、より良いソリューション提案ができると考えている。

 また、サーバーベンダーやクラウドサービスベンダーの場合はどうしても自社製品へのロックインに傾きがちだが、EMCはストレージベンダーとして比較的ニュートラルな立場がとりやすく、顧客に最適なITを提案できることも強みだ。もちろん、ビッグデータコンサルティングなどの領域においてグローバルなナレッジ、豊富なベストプラクティスが提案できることも大きい。

――実際の顧客として多いのはどういった企業群でしょうか。

 業種に大きな偏りはないと思う。企業規模で言うと、超大手企業は課題への先進的な取り組みを自ら実行できる環境にある。その次にランクする企業群が(人材リソースなどの問題で)取り組みが遅れており、超大手に追いつこうとしてわれわれのサービスを活用している。

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