さらなる価格訴求戦略を打ち出す
2つめには、日本マイクロソフトでは、これまでにもSurface RTを対象にした1万円値下げキャンペーンを実施してきたが、これに加えて、さらなる価格訴求戦略を打ち出すという狙いだ。
日本マイクロソフトでは、他国に先行する形で、6月14日から7月14日までSurface RTの全モデルを一律1万円の値下げキャンペーンを実施した。これを継続する形で7月15日からは1万円値下げした価格を新価格として改訂。32GB版のモデルは3万9800円の設定としている。
だが、7月に入って、米国では150ドルの価格引き下げを実施し、32GB版を349ドルの新価格で販売。これを米国以外の主要国でも展開し始めた。日本市場向けのSurface RTでは、Office Home & Businessが標準搭載されているという付加価値はあるものの、価格だけで比較すれば、米国での価格に比べて5000円ほど高いことになる。
今回の「Surface RT」乗り換えキャンペーンは、この価格差を埋めるものともいえ、その上で、日本市場が先行して、iPadユーザーをターゲットとしたスイッチキャンペーンを展開することになる。
日本マイクロソフトの樋口泰行社長は、「iPadを購入したユーザーからは、iPadはこの程度のことしかできないのかという声を聞く。Surfaceでは、一歩進んだ『進化したタブレット』として、これまでのタブレットの利用シナリオを超える体験をしてもらえるだろう」と、Surface RTの特徴を訴える。
そして、今後も日本マイクロソフトは、Surface RTを軸としたキャンペーンを仕掛けてくる可能性がありそうだ。そのキャンペーンは、日米の価格差を埋めるようなものとなり、それでいて、今回のようにiPadを意識したものになるだろう。
Surfaceシリーズは大苦戦を乗り越えられるか?
米マイクロソフトは、先頃発表した6月末を締めとする2013年度決算で、Surface RTの在庫調整費用として約9億ドル(約873億円)を計上した。
これは裏を返せば、Surfaceの販売実績が想定を大きく下回ったことを意味する。
また、米マイクロソフトが、7月30日に、米証券取引委員会(SEC)に提出した会計報告書によると、Surfaceシリーズ全体の売上高は8億5300万ドル(約828億円)となっている。アップルが発表した決算報告から、Surfaceの発売時期にあわせた2013年10月〜2013年6月までのiPadの売上高を集計すると、なんと258億ドル(約2兆5000億円)の売り上げ規模になり、10億ドルにも満たないSurfaceとの差は歴然だ。
今回のキャンペーンでSurface RTは、iPadとの対抗軸を明確にすること、そして少しでも多くの人に購入してもらうための仕掛けによって、Surface RTの利用を促進。それをベースとして、今後発売するであろう次期Surfaceの販売にも弾みをつけたい考えだ。
このキャンペーンが、次につなげるための仕掛けとして、どれだけ効果を発揮するか。
次期Surfaceが登場するまで、まずは、iPadと戦うための製品というポジショニングを明確化することから始まるといえそうだ。
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