このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

前田知洋の“タネも仕掛けもあるデザインハック” 第22回

コピペを感じさせない、人を動かすメールとは?

2013年08月02日 09時00分更新

文● 前田知洋

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

コピペに感じさせないのは、パーソン to パーソンのスタイルだから

 続いて

「もし、しかしながら、あえて更新手続きを選択なさらないのであれば、私、個人としてはとても残念に思っておりますし、その理由も伺いたいと願っています」

 そのあと文面には、世界最大のマジックのコレクションなど、メンバー継続のメリットが続けて説明されています。

 もちろん、未納のメンバーに同じ文面なのでしょう。しかし、会長自らが「退会をとても残念」「もし良ければ理由を…」と書いてあるのを読むと、僕のようなメンバーは「こちらがウッカリ忘れただけなのに、いい人だなぁ…」という気分になるから不思議です。「渡英の機会もあまりないから、そろそろ会員をやめてもいいかなぁ…」なんて気持ちも少しありましたが、文面を読んですぐにオンラインで会費を支払いました。

 読み手がこうした感情の流れになるのは、下のようなポイントがあるからです。

○相手の状況をできるかぎり想像することからスタートしていること。
○個人が発信して(メールを書き)、個人が受信する(読む)スタンスをつらぬいていること。
○単語登録されていてるような、決まりきったフレーズを避けていること。

ときにはコンピュータの画面が社会との対話の窓口になってしまう

日本のビジネスメールは、パーソン to パブリックか、
パブリック to パーソンがほとんど

 よく、ビジネスメールでも【代表者 ごあいさつ】なんてあったりしますが、表現が紋切り型だったり、都合のいい自社アピールだったりすることがほとんどです。それは、「私は皆様に…」のパーソン to パブリックのスタンスで書かれているか、「我が社は、顧客一人、一人に…」というパブリック to パーソンのスタンスがほとんどです。【お知らせ】と言葉をかえた宣伝や広告も同じです。そうしたビジネスメールは、当たり障りの無い分、コピペのように思われがちです。

 コピペではないはずの、担当者同士の文にしても、誰も書きそうな(単語登録されていそうな)フレーズは読み飛ばされてしまうことがほとんどです。ネットでよく話題になるメールの冒頭挨拶、「お世話になっております」という紋切り型のフレーズも、それぞれのケースで「(御社には、昨年から)お世話になっております」なのか「(〇〇様には、たびたび)お世話になっております」なのか「(これからの取引で)お世話になります(ことを願っています)」なのかを考えてみる。メールの冒頭でなくても、『お世話になり、いつも感謝していること』を文中や文末で伝えることも可能なはずです。

少しだけでも感情や想いを含ませる

 ビジネスメールでは、避けられがちな書き手の感情。それでも「感謝している」「嬉しい」「感動」「残念」「またお会いしたい」などの率直な想いを少し含ませるだけでも、読んだ側を動かすメールに変わります。受け取り側に「面倒だなぁ」「嫌だなぁ」「どうしよう…」などのネガティブな気持ちを味わわせないようにするのも大切なことです。

 用件を簡素に表現することも重要ですが、「この人からのメールなら、また読みたい」と相手に思ってもらえる秘密。それは、こんなことにある気がしています。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。現在、ビジスパからメルマガ「Magical Marketing - ソシアルスキル養成講座 -」を配信中。

■関連サイト

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ