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ネットアップが考える失敗しないフラッシュ活用術 第1回

ストレージを変革するフラッシュの真のメリットとは?

万能デバイスって本当?フラッシュにまつわる5つの誤解を解消

2013年07月26日 13時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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エンタープライズストレージの世界を確実に変えつつある「フラッシュ」。圧倒的なI/O速度を誇るフラッシュだが、「高価」「容量が小さい」「すべての用途に万能」など、さまざまな“誤解”が存在するのも事実だ。ここではエンタープライズフラッシュにまつわる誤解を解消していこうと思う。

ストレージの世界を変えつつあるフラッシュ

 2000年初頭から急速に市場を拡大したフラッシュメモリ(以下、フラッシュ)が、ストレージの世界を大きく変えつつある。従来のように高いI/O性能を求める特定領域だけではなく、エンタープライズやサービスプロバイダーの導入で、効果を発揮する例が次々と登場してきたのである。

 フラッシュのメリットとしてもっともフォーカスされるのは、やはり性能だ。従来の主記憶媒体であったハードディスク(HDD)は、物理ヘッドを動かして、回転するプラッタ上に記録されたデータを読み取るため、性能面に限界があった。これに対し、電気的にデータを書き換えられるフラッシュはシーク動作がないため、高い性能が実現される。特にランダムリードの性能は圧倒的で、HDDに比べて数十倍~数百倍のI/O性能の向上、遅延の改善が得られる。また、HDDをリプレースすることにより、スペースや消費電力などに基づくコスト削減効果が大きなメリットとなる。

エンタープライズストレージにおけるフラッシュのメリット

 昨今では、このフラッシュを活用したストレージ製品が次々と登場し、HDDをベースにした従来型ストレージを置き換えつつある。大手ストレージベンダーのネットアップも、エンタープライズストレージへのフラッシュ導入に長らく注力してきたベンダーの1つだ。

多彩なフラッシュの実装形態

 同社は、「Data ONTAP」というストレージ専用ソフトウェアを搭載したユニファイド・ストレージ「FASシリーズ」を展開している。Data ONTAPはディスクアレイ管理やデータ保護のみならず、ユニファイドアクセス、運用サポート、そしてリソースの仮想化など共有型ストレージに必要な多彩な機能を搭載する。そして、同社では2009年頃からいち早くフラッシュを導入し、すでにトータルで44PBという高い出荷実績を誇っている。

フラッシュをリードしてきたネットアップ

 Data ONTAPで最初に投入されたのは、ストレージコントローラーのリードキャッシュとしてフラッシュを利用した「Flash Cache」だ。Flash CacheはもともとFASシリーズでメモリが足せないという弱点を解消すべく生まれたもので、FASの内蔵メモリに次ぐ、二次キャッシュとしてフラッシュを動作させる。Flash Cacheの導入により、レイテンシやI/Oスループットを改善しつつ、高価なHDDの本数を減らせるのでコスト面でもメリットがある。

 次にディスクアレイ側のHDDの代替として、SSDを採用することでI/Oを向上させる「Flash Pool」が導入された。Flash Poolではリードだけでなく、ライトまでキャッシュするのが特徴だ。頻繁に書き込まれるデータは読み出される可能性も高くなる傾向にある。そのため、HDDに書き込む前のデータをあらかじめフラッシュにキャッシュしておくことで、次回のリードを高速化できるわけだ。また、ライトによるHDDへの負荷を軽減することができるのも特徴。Flash Cacheに比べて、コスト面での効果が大きく、ギガバイトあたりのI/O単価を大幅に下げることが可能だ。

 そして2012年に投入されたのが、もっともCPUに近いサーバー側にキャッシュを置き、限りなく低いレイテンシを実現する「Flash Accel」だ。バックエンドのストレージと連携されており、ネットアップのソフトウェアがサーバー上のフラッシュを管理するため、サーバとストレージ間のデータの一貫性を保つほか、高いI/Oの向上を実現する。サーバー側で利用するフラッシュはネットアップが再販するFusion-io社の「ioDrive2」をはじめ、サードパーティ製品を選択できるというのが大きなメリットといえる。

 さらにHDDの代わりに、すべてをフラッシュで構成した「オールフラッシュストレージ」に関しても、積極的に製品化を進めている。2013年5月には1ミリ秒未満の低遅延で、35万を超えるIOPSを実現する「EF540」を市場に投入。さらに来年には、フラッシュのためにOSをイチから作り直した「FlashRay」と呼ばれる新製品がリリースされる予定。同社のフラッシュへの意気込みが伝わるはずだ。

 ネットアップがこのように多彩なフラッシュの実装を行なっている理由は、やはりユーザーによって用途が異なるためだ。性能や容量、コストといった要件にあわせて、さまざまな選択肢をユーザーに提供し、実績と数値に基づいて最適なフラッシュ導入を支援するというのが、ネットアップ流というわけだ。

(次ページ、フラッシュ導入をためらわせる誤解を解消する)


 

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