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Samsung「Samsung SSD 840 EVO」

アクセスを高速化した「Samsung SSD 840 EVO」の技術とは?

2013年07月18日 17時50分更新

文● 平澤 寿康

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NANDフラッシュメモリーの一部を
バッファとして利用し高速化を実現

 840 EVOのアクセス速度高速化を実現する上で重要なポイントとなるのが、「TurboWrite Technology」だ。搭載するNANDフラッシュメモリーのうち、ユーザー領域外の予備領域として確保されている部分に専用のライトバッファを確保。そして、そのライトバッファとして確保した領域に対しては、SLC NANDフラッシュメモリーと同じように、1つのセルに対して1bitのデータを書き込むようになっている。

TurboWrite Technologyでは、NANDフラッシュ予備領域の一部をライトキャッシュとして利用するとともに、キャッシュ領域のセルにSLC相当としてアクセスすることによって、書き込み速度を大幅に高める技術だ

TurboWrite Technologyによって、シーケンシャルライト速度が、840から最大約3倍にまで向上する

 3bit書き込めるセルに対して1bitしか書き込まないため、ライトバッファの容量は実容量の1/3となるが、SLCと同じ方法での書き込みとなるため、TLC NANDに書き込みを行なう場合に必要となる多くの処理が省かれ、高速に書き込みが行なえることになる。確保されるライトバッファの容量は、120GB/250GBモデルが3GB、500GBモデルが6GB、750GBモデルが9GB、1TBモデルが12GBとなる。

通常利用での十分なライトバッファサイズを3GBに設定し、容量ごとに異なる容量のライトバッファを確保。120GB/250GBでは3GBだが、1TBモデルでは12GBを確保している

 840 EVOでは、基本的に書き込みはすべてTurboWrite Technologyのライトバッファを介して行なわれる。書き込まれるデータは、いったんライトバッファに書き込まれ、その後アイドル時にユーザー領域に転送されることになる。

 ライトバッファがフルに利用され空きがなくなった場合には、データはユーザー領域への直接記録へと切り替わるため、速度が低下することになる。その場合のシーケンシャルライト速度は、120GBモデルが140MB/s、250GBモデルが270GB/s、500GB/750GB/1TBモデルが420MB/sとなる。

 ただ、通常利用時にはライトバッファが完全に埋まることは非常に少なく、速度が低下する場面もほとんどないという。

ライトキャッシュが埋まってしまうと、ユーザー領域に直接書き込む方式へと切り替わるため、シーケンシャルライト速度が低下する

 もし、ライトバッファとして利用している領域のセルが不良となった場合には、それ以降TurboWrite Technologyは利用できなくなり、ライトバッファを介さない直接記録に切り替わる。そして、その場合の速度は、ライトバッファが埋まった場合の速度と同等となる。

 ただ、バッファ領域のセルはSLC相当のアクセスにより、セルの耐久性は書き換え回数約10万回となるため、バッファ領域のセルが不良となり、短期間でTurboWrite Technologyが利用できなくなる可能性は低いとしている。

専用ユーティリティーを
利用した高速化も実現

 発表会では、もう1つアクセス速度の高速化技術が紹介された。840 EVOの発売に合わせ、サムスン製SSD専用ユーティリティー「Samsung Magician Software」がバージョン4.2にアップデートされるとともに、そのユーティリティ内に「RAPID Mode」というアクセス速度の高速化機能が追加され、利用できるようになるという。

840 EVO発売に合わせてSumsung Magician Softwareが4.2にアップデートされ、新機能となるアクセス速度の高速化機能「RAPID Mode」が利用可能となる

 PCを利用している場合、通常はCPUやメインメモリーには余剰の処理能力や空き領域がある。そこに着目し、RAPID Modeでは余剰のCPU処理能力やメインメモリー空き領域を利用し、システムレベルでSSDのアクセス速度を改善するといもの。メインメモリーの一部をキャッシュとして活用するとともに、SSDへのアクセスを最適化することによって、リード・ライト速度が高速化される。

RAPID Modeでは、CPUの余剰処理能力とメインメモリーの空き領域を利用し、システムレベルでSSDへのアクセスを最適化し、速度を高める

 実際に発表会では、840 EVOでのRAPID Modeの有無によるアクセス速度の違いを、ベンチマークテストを利用してデモしていたが、写真のように、RAPID Mode利用時には、特に書き込み速度が大きく向上していることがわかる。また、ランダムアクセス速度の向上度合いもかなり高く、実際に利用する場合の体感速度が大きく高まるものと思われる。

RAPID Modeによって、ランダムライト速度が大幅に向上する

 これと同様のアクセス速度高速化技術としては、Windows Vista以降に搭載されている「Super Fetch」があるが、Super Fetchは効果が現れるのがアプリケーションのみというように、適応範囲が狭いのに対し、RAPID Modeはシステムレベルで高速化を実現するためそういった制限がなく、すべてのアクセスに効果が発揮される点が利点としている。

RAPID Modeの利用で、ベンチマークテストの結果も大幅に向上するという

 キャッシュの特性上、キャッシュ上のデータの書き出しが完了する前にPCの電源が落ちた場合には、書き出しが完了していないデータは失われる。ただ、デスクトップPCなどで、いきなり電源ケーブルを抜くといったようなことをしない限り、キャッシュ書き出し前にPCの電源が落ちるような場面はほとんどないため、利用にはそれほど神経質になる必要はないだろう。なお、RAPID Modeの対応OSは、Windows 7およびWindows 8のみとなる。

発表会で行われた、CrystalDiskMarkを利用したデモ。840 EVO 250GBモデルを利用し、左がRAPID Mode不使用時、右がRAPID Mode使用時の結果。書き込み速度やランダムアクセス速度が大幅に高速化されていることがわかる

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