ピクセルシェーダーはハードウェア実装でも
バーテックスシェーダーはソフトウェア対応
「Intel 865G」では「Intel Extreme Graphics 2」という740の延長にある2ピクセルパイプラインのコアである(インテルの分類では第2世代コア)。DirectX 7対応といいつつ、実はHardware T&Lは搭載しておらず、ソフトウェアでエミュレートしているため、実体としてはDirectX 6.1相当のものだった。
これが「Intel 915G」では「Intel GMA 900」に切り替わった。こちらは第3世代に相当するもので、ピクセルピクセルパイプラインも4に増え、さらにDirectXのSM(Shader Model)2.0対応になった。
字面だけ追っていれば結構性能が上がったように見えるが、実際はSM 2.0のうちピクセルシェーダーはハードウェア対応でありながら、バーテックスシェーダーは相変わらずソフトウェアでの実装となっている。DirectX 7のHardware T&Lの動作も引き続きソフトウェアエミュレーションで実施されていたため、ハードウェアだけを見れば実質的にはDirectX 6.1相当ということは変わらない。
この当時、まだSM2.0をフルに生かしたゲームはそれほど多くなかったし、逆にこうしたゲームは当然ハードウェアでバーテックスシェーダーが実装されていることを前提にしていたから、これを「Intel 915G」で動かすのは“苦行”以外の何者でもなかった。
動作周波数にしても「Intel 865G」が最大266MHzだったのに対し、「Intel 915G」は最大333MHzで微増というレベルであり、結局ユーザーは「やや高速なDirectX 6.1のグラフィックス」として使っていたのが実情である。
「Intel 865G」に比べるとプロセスを微細化したにも関わらず、それほど性能が上がらなかったのは「バーテックスシェーダーはCPUでできる」(CPUでやってほしい)というCPUメーカーらしいインテルの発想があった。
それに加えて、バーテックスシェーダーまで入れるとダイが大きくなりすぎてしまうこと、そしてすでにPCI Express統合の関係で発熱が十分多かったので、グラフィックコアの動作周波数をそうそう上げられなかったことが要因と言える。
とはいいつつも、あまりに競合製品と比べて分が悪かった。DirectX 9相当の比較ならばNVIDIAの「GeForce FX 5200」クラスが競合になるわけだが、実際にはその前世代製品である「GeForce4 MX」グレードと勝負しても、時には負けたりした。
この世代の製品のテストをしたことは何度かあるが、NVIDIAがGeForce 4世代で投入した最初のローエンド向けPCI Expressカードである「GeForce PCX4300」(GeForce MX 4000にAGP/PCI-Expressブリッジを追加したもの)と比べても、「Intel 915G」はぶっちぎりで負けていたという記憶がある。
ボトルネックは色々あるが、そもそもメモリー帯域が十分でないという統合型グラフィックの宿命に加え、やはりバーテックスシェーダーをソフトウェアエミュレーションしていたことはかなり性能にネガティブな影響を与えていた。
とはいえ急にバーテックスシェーダーを追加することはできない。とりあえず915シリーズに続いて2005年に登場した「Intel 945G」では「Intel GMA 950」が搭載された。これはハードウェア的にはGMA 900と同じ(若干のマイナーアップデートとバグフィックスなどは行なわれている)で、動作周波数を最大400MHzまで引き上げた程度。ソフトウェアではバーテックスシェーダーがSM3.0相当になったが、ピクセルシェーダーは引き続きSM2.0相当。
2005年といえば、NVIDIAが「GeForce 6200」シリーズや「GeForce 6500」シリーズをバリュー向けに投入しており、これらと比較すると相変わらず性能差が明確にあった。むしろ性能差は広がったというべきだろう。
この「Intel GMA 950」シリーズは引き続き、「Intel GMA 3100」という名称で2007年にはIntel Q35/33とIntel G33/G31チップセットに搭載されたほか、2010年に投入されたネットトップ/ネットブック向けのAtom D4xx/D5xx/N4xx/N5xx向けには動作周波数/ピクセルパイプラインを削減した「Intel GMA 3150」として使われた。もうこのあたりは性能を求めず、とりあえずWindowsが正しく表示されればそれで良い、という方向で流用された。
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