6月に1泊2日で温泉に行ってきたのである。
遠くへ遊びに行くときは、まず地図を見ながら行き先の候補をいくつか決める。温泉があるとこがいいな、とかローカル線が走ってるとこがいいなとか。ポスターや雑誌やウェブなどで見かけて興味を持った場所とか。
まあ普通はそうですな。
次に行なうのは検索である。「××× 猫」などとググってみるのだ。日本中どこにでも猫好きはいるもので、猫好きは猫を見つけたら写真に撮ってブログに残したりしてくださるから、つい調べちゃうのだ。猫に出会えるかどうかが行き先や宿泊先決定の重要な要素なのである。
「~~に猫がいる」「~~を歩いてたら猫に会えた」そんな曖昧な情報でいいんだけど(どうせ実際に会えるかどうかは運なんだし)、今回ばかりはちょっと違った。
行き先候補のひとつだった、長野の渋温泉に旅館猫がいるらしいという情報に行き当たったのだ。「歴史の宿 金具屋」という宿のブログに猫の話が出てきたのである。
しかもここ、調べてみると、登録有形文化財に登録された昭和初期の木造建物をもってて、そこの部屋にも泊まれるという、古い建築好きにはたまらん老舗宿だったのだ。なにしろ、1758年(江戸中期)に宿屋開業である。約250年前である。これは古い。
一瞬にして宿泊先が決定。
でも、猫がウリの旅館なわけでもなんでもないので、館内を猫が闊歩してたりするわけもない。でも猫には会いたい。翌朝になったら宿の人に尋ねてみよう。
そして早朝、5時半頃、はやく目が覚めたので、フロントに降りて「猫がいると聞いたんですが」と聞いてみると、「ちょっと待って」と即答。その1~2分後、白い老猫を抱えてやってきてくれたのだった。なんて親切な。
名前はシロ。もちろん早速撮影である。
だがしかし、(たぶん)バックヤードでくつろいでたところを無理矢理連れてこられて不機嫌なシロがじっとしててくれるわけもなく、しばらく爪を研いだり毛繕いしたと思ったら、すっと立ち上がり、トトトトッと開いてる窓に近づいてひょいと出てしまったのだ。
後を追って窓から身を乗り出してみると、ありがたや、ちょうど「古い温泉街には猫が似合う」構図に収まってくれたのである。
でもこれはこれでよし。
シロを追って外に出ると、またもやシロはベストポジション。シロの後ろには、ちょうど「登録有形文化財」の木造建築がいい感じに見えてるではないか。
無愛想で無口な老猫だが、これではまるで「ここ撮れにゃんにゃん」ではないか。なんか撮ってるのか撮らされてるのかわからなくなってきた。あなどりがたし、貫禄の老猫。
ここでいったん部屋に戻り(上の写真に写ってる、右側の灯りが透けてる部屋に泊まっておりました)、温泉に入り、朝ご飯を食べ、ふたたび部屋に戻ってくつろいでいると、遠くで声がする。「今、猫の声がしなかった?」「した。あれは猫だよね」。
これはフロントに猫が現われたにちがいないと、カメラを手に部屋を飛び出してみると、案の定、シロとは違う黒っぽい猫がのんびり毛繕いしてる。この猫、やたらよく鳴く。鳴いてたのは君だったのね。
仲居さんによると、こっちの黒白猫は「にゃんた」。シロもにゃんたもここで飼っていたわけではなく、いつの間にかいついちゃったのだという。温泉地域猫に近い感じですな。
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