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「全員ニート」の会社が示す未来とは?

2013年07月04日 16時00分更新

文● 今村知子(Tomoko Imamura)/アスキークラウド編集部

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 若新さんは、もともと就活をやめた若者たちを集めた会を主催するなど、企業に雇われない生き方をする人々に直接接していたことから、彼らの優秀さ、センスの良さなどを評価し、「コントロールしないで、彼らにまかせてみたら面白いことになる」と感じていた。

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プロジェクト・マネージャーの若新雄純さん。慶應義塾大学SFC研究所上席訪問所員として、新しい対人・組織コミュニケーションを研究。さまざまな企業・団体とのタイアップで実験的な人材採用や組織改革プログラムなどを企画・実践している。

 若新さんからニートを活かすアイデアを聞いて、会社設立を提案したのが安田さんだ。ただし、社員として彼らを雇うとお金がかかってしまう。そこで、全員取締役にしたら面白い、となった。

 それでも、プロジェクトに集まってくるニートたちに対しては、安田さんも当初半信半疑だったという。主催する中小企業共和国に参加している企業経営者らにも「本当に優秀な人は来るのか」「事業内容や組織など決められるのか」と不安視する声が上がっていた。

TOEIC高得点者や専門スキルの人材がエントリー

 だが、エントリー時に記入してもらった「資格」や「できること」という項目には、TOEIC990点やネットショップ作成、プログラミング、中国語翻訳、3DCAD、ウェブ広告プロモーション、機械設計などが見られ、さまざまなスキルを持った人が集まってきたことがわかる。なかには、「接客業ならだいたいできる」「大手企業開拓」「営業ならすぐにでも」と、なぜニートに? と思われるような人もちらほら見受けられる。

 一方で、「やりたくないこと」「できないこと」の項目には、「徹夜残業」「ルーチンワーク」「毎日定時で出社」「二転三転する命令を出す上司の下での仕事」「人を搾取すること」など、既存の会社組織への拒否感がありあり。意外と対人関係の仕事ができる人材がいるにもかかわらず、ニートとなっている理由はこの辺にありそうだ。

 安田さんは「ニートが集まって何かやるきっかけづくりになればいいと思って始めたけど、こんなに集まって来て大ごとになりすぎた。ただ、ここまで社会的注文をいただいたので、今後スポンサーを募りたい」としている。現状では、100人もの人数を集めて会議ができる場所を確保するだけでお金がかかることから、場所提供の援助者を求めているそうだ。

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ベストセラー『千円札は拾うな。』などの著書を持ち、現在は中小企業共和国(NPO法人ヒトコトネット)主宰、「境目研究家」としてささやかな社会の疑問を考察している安田佳生さん。

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