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業界人の《ことば》から 第46回

感性の価値を提供できる企業へ

「ソニーがない世界はつまらない」のか?

2013年07月02日 09時00分更新

文● 大河原克行

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変人たちと話をした

 ではどうやって感性価値を提供できるソニーを取り戻すのか。

 「ひとつは、既存の製品カテゴリーにおいては、さらに機能を向上させ、もっと感動してもらう部分に、惜しみなく技術を投入すること。もうひとつは、これまでにない新たな製品領域において、お客様が面白いといってもらえるものを作ることが必要である」とする。

平井一夫社長。写真は5月22日に実施した経営方針説明会で撮影したもの

 平井社長は、この1年間に、厚木の開発拠点に4~5回足を運んだことに触れながら、「『変人』たちと議論をしてきた。強い商品を出していくには、エンジニアにモチベーションを高めてもらうことが必要であり、社内のイノベーションが大切である。イノベーティブな社員を多く抱えるのが価値創造の源泉である。また、それを生かす場、アイデアを創出する仕組みを作り、アイデアがあれば、場合によっては試作品を作り、マネジメントに説明し、製品化のプロセスに乗せるといったことも積極化させたい」などとした。

 ソニーでは、独自のアイデアを創出する優れた社員のことを、敬意を表して「変人」と語る。変人をどれだけ抱え、それを生かす風土が維持できるかどうかが、ソニーらしさの回復につながるというわけだ。

 そして、こうも語る。

 「私は、CEOになったいまでも、自分で製品を使ってみないと気が済まない。CEOの立場と、顧客の立場から、この製品がSONYのブランドをつけるのに相応しい製品になっているのかどうかを評価する。また、使って、感じたことを直接フィードバックしている」

 また、世界中のソニーグループ社員に対しても、次のように語る。

 「いろいろと外から言われていることが悔しいと思うならば、自分たちで、ソニーを直していくことが大切である。厳しいという現状認識を持つとともに、お客様に喜んでいただけるものを提供していくことが大切。私はそう思って、毎日会社に来ている」とする。

ソニーらしさとは何かを再定義

 最後に平井社長は、株主に向かって、こう語り出した。

 「『ソニーがなかったら、そんな世界はつまらない』といってもらえるようになりたい。ソニーは、エレクトロニクス、エンターテイメント、金融分野でも、新たなスタイルを築いてきた会社である。それがソニーのDNAである。これからのソニーは、魅力的な製品、サービスを生み出す。ぜひ期待してほしい」

 スマートフォンや4K対応液晶テレビの強化、年内のプレイステーション4の発売など、新たな製品が相次ぐことになる。

 「グループ各社が持つ経営基盤の持ち味や、ソニーの再生にかける社員の情熱を、製品やサービスを生み出す力へと生かすことが私の役割である」

 平井社長の2年目の挑戦は、業績回復とともに、ソニーらしさを回復したといわれる片鱗を、成果としてみせることができるかどうかにあるといえよう。

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