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薬のネット販売解禁で広がるビジネスとは

2013年07月05日 16時00分更新

文● 腰 裕人(Koshi Hiroto)/アスキークラウド編集部

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 ケンコーコムとウェルネットが、一般用医療薬(市販薬)のネット販売を規制する厚生労働省令は違憲だとした裁判は、今年の1月に最高裁が厚労省の上告を棄却。事実上、市販薬のネット販売が解禁された。

 これを受けて、マツモトキヨシやサンドラッグなどのドラッグストアは参入の意向を表明。イオンやビックカメラはすでに、副作用のリスクがやや高い第2類の医薬品を販売中。アスクルも低リスクの第3類医薬品の販売を6月から同社の通販サイト「ロハコ」で始めた。それ以外にも、高リスクの第1類医薬品について、希望小売価格より3割も値下げした商品を販売しているネット通販業者もあり、流通大手の参入で、市販薬のネット販売は早くも価格でしのぎを削る激戦区になりつつある。

第1類医薬品「アレグラFX 28錠」の楽天市場での価格表。6月末、希望小売価格1980円に対して、最安値が1575円と安い値段で販売されていた。

 医薬品のネット販売の追い風になりそうなのが電子マネーの利用者拡大だ。電子マネーで支払うことにより、購入したサイトでのポイントに加え、電子マネーの利用自体にポイントが付与される。利用者はこのポイント目当てが多い。商品にボーナスポイントを付与することで人気を集めているイオンの「WAON」の電子マネー市場でのシェアは5割以上だ。

 来春の消費税引き上げで、流通企業は価格面での対応を迫られる。対応策の1つとして、電子マネーを活用したものも出てくるだろう。増税で価格が上っても、その上がり幅以上のポイントを付与すれば、商品自体の値段を直接値引きするより負担が少なくて済み、なおかつ消費者への効果的なアピールになるからだ。

 消費税が5%から8%に上がる来春以降は、ポイント目当てで電子マネーを利用する人が、さらに増えるだろう。そうなったとき、すでに「楽天Edy」や「nanaco」など、ネットショップでも使える電子マネーを利用している人は、より多くのポイントを求めて医薬品のネット購入に傾倒するのではないだろうか。

 

 ネットでの市販薬の販売には懸念の声もある。副作用リスクの高い第1類医薬品のネット販売は、安全性が充分に確保できないというものだ。ケンコーコムの後藤社長は、医薬品のネット販売実施にあたって薬剤師の配置やシステム開発など、安心・安全への投資が必要と語る。すでに一部コンビニでは、コールセンターから薬剤師が店頭のお客さんにテレビ電話で商品説明するシステムがあり、同様の仕組みをネット販売に用いることは往々にしてあり得る。

 消費税増税を前にした価格競争と電子マネーとポイントの活用、安全な売買を成立させるための仕組みづくり——医薬品のネット販売で広がるビジネスチャンスはまだその端緒が見えたばかりだ。


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