山手線をはじめ、京浜東北線、中央快速線、京葉線——。首都圏では、電車の車内に液晶を搭載し、乗り換え情報や天気予報などのコンテンツを配信する路線が増えている。JR東日本と液晶を提供する三菱電機ではさらに一歩進めて、車内液晶とスマホとの連動を視野に入れている。「Interop Tokyo 2013」で三菱電機に話を聞いた。
通勤電車のドア上に設置された、2枚の液晶。左側に動画広告、右側に電車の運行情報が表示されている。液晶式の車内案内は近年のトレンドで、首都圏ではJR東日本に加え東急、小田急、東京メトロなどの各路線で採用されている。
従来のLED式の運行表示に比べ情報量が多く柔軟な情報提供ができるほか、フルカラーで見やすいといったメリットがある。
一方で液晶のサイズは15~17インチと大きいため、ドア付近など限られたスペースにしか設置できない。座席に腰掛けた乗客にとっては画面を見づらいのだ。
JR東日本と三菱電機が共同研究中の「トレインネット」は、そのような液晶式の車内案内の欠点を克服できるかもしれない。「Interop Tokyo 2013」で展示されていたので、三菱電機の担当者に話を聞いた。
「トレインネット」は、車内の液晶に表示されている運行情報を手元のスマートフォン(スマホ)のアプリを介して配信するサービス。2012年9月から2013年1月にかけての山手線での実証実験を終え、近年中の実用化を検討している。
アプリの上半分が運行情報(電車の右側の液晶)、下半分が広告スペース(左側の液晶)にそれぞれ相当する。「トレインネット」対応車両に搭載された無線LANに接続することで、アプリに電車の情報が送られてくる仕組みだ。
配信される情報は、所要時間や乗り換え案内、ダイヤ情報だけではない。
例えば、車両の混雑度。電車の重量を計測するセンサーと連動し、どの車両がどれだけ混雑しているのかを把握できる。同様に、車内の空調情報から車内温度も分かるという。
アプリ画面の下半分では、駅付近の店舗情報やお得なクーポンを配信する。また、エンタメ要素も充実。前回の実証実験ではエイベックスのアイドルプロジェクト「iDOL Street」とコラボし、「山手線ガールズ」としてアプリ内で動画やつぶやきといったコンテンツを配信した。
アプリ自体は無料だが、アプリ内の広告で利益を上げるビジネスモデル。実証実験では駅ナカやニューデイズといったJR東日本系列の店舗のみ情報が表示される仕組みだったが、「今後は駅の周辺にある飲食店などからも広告を募る可能性もある」(担当者)という。
気がかりなのは、乗客のプライバシーにどこまで配慮しているか、だ。
スマホが車内無線LANにどの駅で接続し、どの駅で回線を切断したかを見れば、端末の乗車区間は把握できる。ただし個人アカウントなどに紐づけた情報ではないので、個人が特定されるようなことはない。
情報配信が高度になればなるほど、プライバシーの問題がせり上がってくる。そのバランスを見極めつつ、いかに乗客に便利に使ってもらうかが今後の課題だ。