モバイル市場を掌握するには
低消費電力が不可欠
消費電力削減へのニーズが高まった背景にあるのは、ARMベースのシステムオンチップとの競争である。
現在ARMの「Cortex-A15」やこれと同等の独自プロセッサーと、インテルのIvy BridgeやHaswell、CedarmontとSilvermontは市場を争っているわけだが、性能そのものはともかく消費電力に関してはARMになんとか追いついたレベルであり、優位性がそれほどあるわけではない。
そのARMベースのシステムオンチップは現在TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing)の28nmプロセスをベースに製造されているが、今年から来年にかけてはまず20nmプロセス、ついで2014年後半からはFinFETベースの16nmに移行する予定である。
TSMCだけでなくGLOBALFOUNDRIESもほぼ同じタイミングで14nmのFinFETベースのプロセスを実用化する予定で、インテルはこうした最新プロセスの製品と競合していかないと、モバイル市場を失いかねない。
ここで市場を逃がさないためには、性能もさることながらさらなる消費電力削減が必要であり、このためP1272は従来と逆にシステムオンチップ向けの低速・低消費電力のものとし、デスクトップ向けのハイスピードロジックは翌年回しとする決断を下したようだ。
これが可能になったのは、インテルのプロセスはシステムオンチップ向けでも2GHz程度の動作周波数は楽に維持できるため、Broadwellのアーキテクチャーならばそれなりの性能が確保できると判断できたことらしい。
ただモバイル向けにはともかく、デスクトップ向けで最高周波数が2GHzかそこらでは製品として成立しない。伸びはなくなった(というか、僅かながら減少傾向にある)とはいえ、ハイスピード向けのニーズは確実にあるからだ。
2014年中に14nmプロセスでハイスピードロジック向けの製造も同時に行なうのはいくらインテルでも不可能であり、2014年は引き続きHaswellがデスクトップ向けに供給されることになった。これがデスクトップ向けにBroadwellが提供されない主要な理由である。
デスクトップ向けは2015年の
Skylakeが本命
では2015年はどうかというと、現在のスケジュールに沿う限り、2015年にはSkylakeが間に合う計算になる。
HaswellはIvy Bridgeのバックエンドに手を入れた構造で、フロントエンドにあまり変更がなかった関係でこちらがボトルネックになってあまり性能があがっていない。しかし、SkylakeではHaswellのフロントエンドに手が入る、つまりボトルネック解消に向けた変革が行なわれると見られ、当然性能の改善も期待できる。
であれば、無理にBroadwellを提供しなくてもSkylakeで十分というのは誰しも考えるところ。もっともこれが順調に行くかどうかを語るにはまだ時期尚早すぎるわけで、図の2015年のラインナップには「?」マークをつけさせていただいた。
もう1つ不明なのは、Haswell-EX/EP/Eのラインナップだ。Haswellは原則としてP1270 v2のプロセスを前提として設計されているから、完全に物理設計をやり直しするのでもない限り、やはりP1270 v2のプロセスを使うことになると思われる。
ところがこのP1270 v2は前述のとおり、P1270をやや低消費電力側に振ったプロセスであり、このプロセスそのままで130W枠のXeon用プロセッサーを本当に作れるのか、というあたりは今のところ確証が取れていない。
Ivy Bridgeと同じP1270ならば確実だと思われるが、これは物理設計のやり直しになるので、正直考えにくい。またこれまでXeon系列は平均して2年ごとに製品の入れ替えをしており、ところが2013年~2015年は毎年製品が切り替わるという忙しいことになる。状況によってはBroadwell-EX/EP/Eが2016年送りになる可能性もあるが、そのあたりはまだ完全には見えていない状況である。
最後に「では2016年以降は?」という疑問が出てくるが、これはもっと不明確だ。以前のロードマップでは、2016年には10nmプロセス(P1274/P1874?)を使ったSkymontが予定されていたが、14nmプロセスでこれだけ色々話が出ているのに10nmがスムーズに行けるかどうかは「神のみぞ知る」。
加えて、インテルはそろそろ450mmウェハーへの移行を考えているはずで、これが14nm世代で実現するのか10nm世代に持ち越しになるのかはわからないが、こちらもそう容易に行きそうにない。そんなわけで現状では「さっぱり見えない」を答えとしておきたい。
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