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環境インフラで160兆円市場を狙え

2013年06月13日 16時08分更新

文● 宮原 淳(Jun Miyahara)/アスキークラウド編集部

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「世界で500ほどのスマートコミュニティーに関するプロジェクトが実施されている。市場規模は2015年で160兆円。諸外国へのインフラの輸出や育成を日本主導で進めたい」──国内企業355社が加盟するスマートコミュニティ・アライアンス(JSCA)の会長を務める佐々木則夫氏(東芝 取締役 代表執行役社長)は、5月に開催された「スマートコミュニティJapan 2013」でこう語った。また、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の古川一夫会長は同じ壇上で、「スマートコミュニティーは成長戦略、経済発展に寄与する。日本国内でのノウハウを生かして海外実証実験の場に注力したい」と続けた。

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「スマートコミュニティJapan 2013」では、東芝や三菱重工、NTTグループをはじめ、多分野にわたって国内の主要企業が集まった

 NEDOとJSCAは官民一体となるかたちで、スマートコミュニティーを推進している。そもそもスマートコミュニティーとは、経済産業省によると「家庭やビル、交通システムをITネットワークでつなげ、地域でエネルギーを有効活用する次世代の社会システム」のことだ。この社会システムは、地球環境を守ろうという意義深い活動であると同時に、幅広い分野の製品をインフラとして輸出できる巨大なビジネスでもある。

 日本では、横浜市と豊田市、けいはんな学研都市、北九州市の4地域で大規模な実験が行われている。特に横浜市の規模は大きく、現在1682世帯が参加。最終的には4000世帯が加わる大プロジェクトだ。これらのプロジェクトは政府や自治体のほか、三菱重工やトヨタ自動車といった大手企業も参画しており、NEDOとJSCAがまとめ役を担っている。

 NEDOとJSCAの実験の場は海外にも広がっている。4月末、スペインのマラガ市で大規模なスマートコミュニティー実証実験を開始したのだ。スペインの政府系機関と共同で取り組むこの実験は、ICTを駆使してEV車の大量充電の負担を分散するというものだ。三菱自動車と日産自動車製のEV車200台と、急速充電器が持ち込まれている。

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会場内ではNEDOとJSCAがステージを用意。スペイン・マラガ市市長や日本の実証実験担当者が講演を行った

 マラガ市での実験は、当然スマートコミュニティーに関連した輸出を有利に運ぶ狙いがある。マラガ市はスペインで人気の観光地であり、欧米からの観光客に日本の技術を見せつけるのにはぴったりの場所だ。さらに日本が国際標準として規格化を目指す充電方式「CHAdeMO(チャデモ)」は、米独の自動車メーカー8社が推進する「Combined Charging System(コンボ)」と争っている。CHAdeMO方式の充電器設置は米独へのけん制であり、既成事実化する狙いもうかがえる。

 NEDOとJSCAのトップがそろって登壇した冒頭のコンベンションでは、経済産業省の菅原一秀副大臣が「G(政府)toGでバックアップしていく」とエールを送っている。まだデファクトスタンダードの定まっていないスマートコミュニティーは、日本のビジネスにとって好機なのだ。


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