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なぜ無料の「オープンソース」がビジネスになるのか

2013年05月31日 16時00分更新

佐藤正生/アスキークラウド編集部

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「特定の業務に関してはパッケージソフトウエアを導入しているが、それ以外はオープンソースソフトウエア。社員の約6割が何らかのかたちでOSSを使っている」(電子機器メーカーのシステム部門担当者)

 企業による「オープンソースソフトウエア」(OSS)の導入が急速に広まっている。OSSは、ソフトウエアの設計図に当たるソースコードを無料で公開し、誰でも変更や再配布ができるソフトウエア。OSの「Linux」やウェブサーバーソフトの「Apache」、ウェブブラウザーの「Firefox」などが代表的だ。OSSの開発には、企業や個人にかかわらず世界中の技術者がボランティアで参加。

 IDCジャパンが今年4月に発表したOSSの利用実態調査によると、調査対象の国内企業1124社のうち、自社の情報システムにおいて、OSSを本番環境で導入していると回答した企業は25.3%に上った。

国内ユーザー企業におけるOSSの導入状況
本番環境でOSSを導入している企業が4分の1を占める

 業種別では通信/情報(30.6%)が最も多く、次いで公共/公益(28.9%)、金融(25.6%)の順で導入が進んでいる。

 OSSを導入する理由としては、「導入コストを削減することができる」(52.1%)、「運用保守コストを削減することができる」(38.8%)といったコスト削減効果を期待する一方で、特定のベンダー(開発メーカー)への依存の排除を挙げる企業もあった。

「OSSを積極的に導入している企業は、コスト削減よりもベンダーによる囲い込みを避けたいのが本音だ」(電子部品のシステム担当者)


OSSは儲けの薄いビジネス?

 ユーザーにとっては少ないシステム投資やベンダーからの囲い込みを回避できるというメリットがあるOSSだが、素朴が残る。そもそも、OSSを提供する企業はどのようなビジネスモデルで事業を進めているのだろうか?

「OSSそのもので儲けるのではなく、ユーザーにどのような高付加価値を提供して利益につなげるのかが、各社のビジネスだ」(ソフトウエア業界関係者)

 例えば、OSSではユーザーサポートだけでビジネスが成立する。OSSの開発・販売を手掛ける米レッドハットが発表した2013会計年度の決算では、売上高は前年同期比17%増の約1345億円、営業利益は同0.5%増の約203億円。同社のビジネスは、Linuxを検証し、使いやすいようにパッケージ化したソフトの販売、サポートを展開。日産自動車や大和証券グループ、KDDIなどが同社製品を導入しており、高い開発能力やサポート力への評価が高い。OSSの開発コストはこうした高付加価値化で補っているのだ。

 また米IBMは今年3月、「IBM SmarterCloud」にオープンスタンダード(OSSの標準規格)を採用することを表明しており、クラウドサービスとソフトウエアを「オープンクラウドアーキテクチャ」ベースで構築していく。

IBM
日本IBMのスマーター・クラウド事業部理事の紫関昭光氏

 日本IBMのスマーター・クラウド事業部理事の紫関昭光氏は「ユーザー企業はPaaSを採用したいと考えているが、環境の移行で高いコストがかかってしまう。またクラウドは、小さく始めて大きく育てると言われるが、大きく育つとレンタル料も大きくなってしまうのが問題だ」と、クラウド利用の現状を語り、同社の「IBM SmarterCloud」によって他のベンダーとの相互運用や、他のベンダーからの移行が可能になるという。同社はベンダーロックインのない世界を目指しているというが、「狙いはあくまでアマゾンやグーグルのサービスを利用しているユーザー企業」(IBM関係者)であり、クラウドベンダー間の競争が激化しそうだ。

 ただ、OSSを導入している企業の多くは、大手ベンダーが開発した商用ソフトとOSSをうまく使い分けているのが実情。OSSの導入には社内で精通している人材を確保していることが前提であるため、「ライセンスにはお金が掛からないが、人的なリソースをどう振り分けるのかといった潜在的なコストも掛かる」とOSSに否定的な意見もある。

 とはいえ、ベンダーロックインのないOSSは開発のスピードが早く、自由度も高い。スモールスタートにも向いており、今後のIT業界での地位はますます大きくなるだろう。


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