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ソフトバンク「全社一丸」のビッグデータ分析

2013年05月28日 07時00分更新

文● 今村知子/アスキークラウド編集部

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ビッグデータを分析し、ビジネスへ活用する「データサイエンティスト」が人材市場で人気を呼んでいるが、実際に専門職として活躍している人は非常に少ないのが現状だ。しかし、もしその人気職種を自社で育成することができたら……。それを実現している企業が、ソフトバンクだ。

 先ごろ、ビッグデータ可視化分析企業のLucky Sortを買収したというニュースが報じられた米ツイッター社だが、その数日後にはソーシャルメディア分析の新興企業Hotspots.ioも買収したという。立て続けのデータ分析企業の買収には、今年中に上場を狙うと言われるツイッター社の本気が見られ、収益に結びつく施策として今やビッグデータ分析が最優先事項になっていることがわかる。

 では、日本企業でのビッグデータ分析の現状はどうなっているのか。先月、「Oracle CloudWorld Tokyo」にてオラクルのラリー・エリソンCEOに対して「ここまでやっている日本企業はない」とビッグデータ活用の成果について豪語した、孫正義社長の率いるソフトバンクのケースを見てみよう。

半年で3倍以上に増えた専門集団の大半は、内部の人材

 ツイッター社の例にあるように、ビッグデータ分析には非常に専門的な技術や知識が必要とされ、それを行う専門家である「データサイエンティスト」が「今世紀もっともセクシーな職業」とももてはやされているほどだ。だが、現実には「データサイエンティスト」と呼ぶに足る人材は数が限られ、採用でも引っ張りだこと聞く。自社での育成が間に合わず、社外の専門企業に依頼する企業も多いと言うが……。

 そのような「ビッグデータ」熱の高まりに対して、「経営者の意思がしっかりしていれば、誰でもデータ分析ができるんじゃないでしょうか」と、さらりと語るのはソフトバンクモバイル株式会社のWebコミュニケーション部を統括する高橋宏祐氏だ。同社では、ソフトバンクの顧客サービス満足度を高めるというミッションに対して、データ解析を行うことにより、プロジェクトを始めてからたった数カ月で最下位から1位奪取を果たすという成果を出すことに成功している。

 もともと17人だった部署は半年間で60人と大きく増えたが、リサーチを担当していた部署やヤフーなどのグループ会社からの転籍が多く、内部の人材活用が大半だ。リサーチ部門から異動したWebコミュニケーション部Web企画課課長・岩本嘉子氏もその一人。

高橋氏、岩本氏

ソフトバンクモバイル株式会社Webコミュニケーション部部長・高橋宏祐氏(左)と、同部Web企画課課長・岩本嘉子氏(右)。


 異動前のリサーチ部門でデータ分析ソフトも使っており、ユーザーが何を求めているかを分析し、改善点を挙げる作業には抵抗はなかった。ただ、「満足度」というあいまいな指標に対しては、やはり苦労したという。

「単純にアクセスログの解析でユーザビリティを改善する、といったことでは、お客さまの満足度との間の溝は埋められない。いくらサイトが使いやすくても、お客さまは満足していないかもしれない。使い勝手ではない部分、ログには表れないエモーショナルな部分も関わってくるからです」。しかし、あくまでデータによる裏付けが仕事のベースとなっているだけに、岩本氏は徹底して「満足度」をデータ分析によって捉えようとした。

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