どんなアプリで仕上げたか?
では、書籍をどんなアプリで仕上げていったのでしょうか。この点については非常に楽観的で、Mac向けワープロ・ページレイアウトソフトであるPagesを使えばいいや、と言う程度に考えていました。というのも普段から使い慣れていたPagesにはEPUB書き出し機能があり、そのままKDPにアップロードすることができたからです。
まずは目次。Pagesのアウトラインモードで作成し、章・大見出し・小見出しという3階層で組みました。アウトラインの作り方はここでは割愛しますが、まず章立てで本全体の流れを作り、章の中に大見出しを、大見出しの中に小見出しを、という手順で掘り下げていきました。その見出しの中に本文を書く、という方法で書き進めました。
電子書籍でなく長めのレポートを書く際にも利用する事ができるこの手法ですが、結果的には、Pagesで作ったEPUBデータを入稿することはありませんでした。理由は、Aamazonが用意しているプレビューソフト「Kindle Previewer」でエラーが出たことと、そして出来上がったファイルが200MBを越えていたことが原因でした。
結局、フリーのEPUB編集ソフト「Sigil」にPagesから文章をすべてコピー&ペーストし、再度見出しをつけてファイルを作り直すことにしました。ペーストする際に書式がついていない普通のテキストに戻りますが、構造化された文書だったため、校正をしながら見出しをつけていく作業をしました。
ちなみにSigilでは、h1、h2といったHTMLでおなじみの見出しをワンタッチでつけていくことができ、見出しから目次を生成するのも簡単です。
秘策はInstagramとAutomater
Sigilで作り直したといっても、画像そのもののサイズは変わりません。ファイルサイズを小さくした方が、ダウンロードして読むまでの時間が短くなります。一方でできればキレイな写真で見せたいと思い、大きめの解像度の写真を使っていましたが、点数も多くなり、とんでもないサイズになってしまいました。解像度や画質を落とせばファイルサイズは小さくなりますが、本の中でディザが出る画像を見せたくないなという悩みもあります。
見栄えの良さとファイルサイズの小ささを両立するにはどうすればよいか頭をひねりましたが、普段からわざと劣化させた写真を楽しんでいることに気づきました。そう「Instagram」です。フィルターをかけた正方形の写真は、決して画像がクリアというわけではありませんが、雰囲気と情感の伝わる写真に仕上がります。そこで、すべての写真をInstagramで加工して貼り付けることにしました。
Instagramにアップロードされている写真のダウンロードには、「Instadesk」というMac App Storeのアプリを利用しました。また裏技として、iPhoneを機内モードにして写真を加工しアップロードしようとすれば、Instagramにアップロードされずにカメラロールに加工済みの写真だけが保存されます。1枚ずつInstagramで加工する作業もまた楽しいものでした。
さらにファイルサイズを小さくするため、Macの標準アプリ「Automater」で、PNG画像をJPEG画像に、1辺を400ピクセルにするという処理を施してSigilへ取り込みました。こうして200MBあったEPUBファイルは7MBにまで小さくすることができました。これは大きな差ですね。
このようにしてできあがったEPUBファイルをKDPに登録し、3時間ほどでAmazonの店頭で購入できるようになりました。珈琲本の取材活動自体を始めたのはちょうど1年前だったのですが、本にまとめるまでの時間は3週間程度。そんなKDP初体験でした。
この連載の記事
-
第264回
スマホ
ライドシェアにシェアバイク、これからの都市交通に必要な真の乗り換え案内アプリとは? -
第263回
スマホ
Amazonが買収したスーパーマーケットで生じた変化 -
第262回
スマホ
日産「はたらくクルマ」でみたテクノロジーでの働き方改革 -
第261回
スマホ
WWDC19で感じたのは、体験をもとにアップルがサービスの整理整頓を進めているということ -
第260回
スマホ
LoTで、いかにして世界から探し物をゼロにできるか?:Tile CEOインタビュー -
第259回
スマホ
ファーウェイ問題で感じたテクノロジーと国家対立の憂鬱 -
第258回
スマホ
スマホでの注文が米国でのスタバの役割を変えた -
第257回
スマホ
10連休に試したい、ゆるやかなデジタルデトックス -
第256回
スマホ
人によって反応が異なるドコモの新料金プラン -
第255回
スマホ
「平成」と「令和」 新元号発表の瞬間の違い -
第254回
スマホ
Adobe Summitで語られたAdobe自身のビジネスや開発体制の変化 - この連載の一覧へ