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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第24回

Amazonで電子書籍の出版を体験! 本の未来について考える

2013年05月26日 14時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura

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どんなアプリで仕上げたか?

 では、書籍をどんなアプリで仕上げていったのでしょうか。この点については非常に楽観的で、Mac向けワープロ・ページレイアウトソフトであるPagesを使えばいいや、と言う程度に考えていました。というのも普段から使い慣れていたPagesにはEPUB書き出し機能があり、そのままKDPにアップロードすることができたからです。

Pagesでのアウトライン編集は、目次作りから本文執筆へとシームレスに移れる

 まずは目次。Pagesのアウトラインモードで作成し、章・大見出し・小見出しという3階層で組みました。アウトラインの作り方はここでは割愛しますが、まず章立てで本全体の流れを作り、章の中に大見出しを、大見出しの中に小見出しを、という手順で掘り下げていきました。その見出しの中に本文を書く、という方法で書き進めました。

 電子書籍でなく長めのレポートを書く際にも利用する事ができるこの手法ですが、結果的には、Pagesで作ったEPUBデータを入稿することはありませんでした。理由は、Aamazonが用意しているプレビューソフト「Kindle Previewer」でエラーが出たことと、そして出来上がったファイルが200MBを越えていたことが原因でした。

 結局、フリーのEPUB編集ソフト「Sigil」にPagesから文章をすべてコピー&ペーストし、再度見出しをつけてファイルを作り直すことにしました。ペーストする際に書式がついていない普通のテキストに戻りますが、構造化された文書だったため、校正をしながら見出しをつけていく作業をしました。

 ちなみにSigilでは、h1、h2といったHTMLでおなじみの見出しをワンタッチでつけていくことができ、見出しから目次を生成するのも簡単です。

結局使うことにしたSigilもシンプルで軽快なオーサリングが可能だ

秘策はInstagramとAutomater

 Sigilで作り直したといっても、画像そのもののサイズは変わりません。ファイルサイズを小さくした方が、ダウンロードして読むまでの時間が短くなります。一方でできればキレイな写真で見せたいと思い、大きめの解像度の写真を使っていましたが、点数も多くなり、とんでもないサイズになってしまいました。解像度や画質を落とせばファイルサイズは小さくなりますが、本の中でディザが出る画像を見せたくないなという悩みもあります。

 見栄えの良さとファイルサイズの小ささを両立するにはどうすればよいか頭をひねりましたが、普段からわざと劣化させた写真を楽しんでいることに気づきました。そう「Instagram」です。フィルターをかけた正方形の写真は、決して画像がクリアというわけではありませんが、雰囲気と情感の伝わる写真に仕上がります。そこで、すべての写真をInstagramで加工して貼り付けることにしました。

 Instagramにアップロードされている写真のダウンロードには、「Instadesk」というMac App Storeのアプリを利用しました。また裏技として、iPhoneを機内モードにして写真を加工しアップロードしようとすれば、Instagramにアップロードされずにカメラロールに加工済みの写真だけが保存されます。1枚ずつInstagramで加工する作業もまた楽しいものでした。

画像の容量削減と見栄えを両立するため、Instagramを使うことに。Instadeskで写真をダウンロードできる

 さらにファイルサイズを小さくするため、Macの標準アプリ「Automater」で、PNG画像をJPEG画像に、1辺を400ピクセルにするという処理を施してSigilへ取り込みました。こうして200MBあったEPUBファイルは7MBにまで小さくすることができました。これは大きな差ですね。

MacのAutomaterでInstagram加工した写真のサイズを整えた

 このようにしてできあがったEPUBファイルをKDPに登録し、3時間ほどでAmazonの店頭で購入できるようになりました。珈琲本の取材活動自体を始めたのはちょうど1年前だったのですが、本にまとめるまでの時間は3週間程度。そんなKDP初体験でした。

こうしてKDPを介して書籍が発行された

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