2chのDIMMが接続可能という
画期的なチップセット「S1-370 TL」
この「S1-370 TL」は上図のような構成になっている。特徴は下記の通りだ。
- 66/100/133MHzのFSBに対応しており、Pentium II/IIIの両方に対応
- 当時としては珍しいことに、128bit幅のメモリーバス構成が可能(つまりDIMMを2ch接続できる)
- 外部AGPポートは搭載しておらず、代わりに「S1-370 TL」とArtXコアはVirtual AGP 8xで接続
- サウスブリッジにはALiの「M1553D+」、もしくは「M1543」を利用
1つ目については互換チップセットらしく、幅広いCPUに対応できるということでよいとして、2つ目がこの当時としては画期的である。この当時はIntel 810を初めとして主要なチップセットはすべて1chのDIMM構成であった。ただしこれだとUMA方式の場合、グラフィック側のメモリー帯域が十分でない。Intel 810の描画性能がパッとしなかった理由として、グラフィックの性能そのものが低い以外に、メモリー帯域が限られていることも関係していた。
3つ目のVirtual AGP 8xというのは、この当時はまだ8x動作のAGP 3.0の仕様が定まっていなかったためである。「S1-370 TL」は、AGP 2.0に定められた4x動作をそのまま倍速動作させて、見かけ上はAGP 8x相当で接続ということで、このような表現になったと思われる。
最後の特徴であるが、この当時ATIはサウスブリッジの供給をALiに頼っていた。理由としては、まだ当時ATIにはサウスブリッジを自前で作る能力も経験もなかったこともあるが、もう1つの理由として当時ATIのCEOを勤めていたK.Y.Ho(Kwok Yuen Ho)氏(関連サイト)と、当時ALiのCEOを勤めていたDr.Chin Wu氏(関連記事)が同郷で友人同士だった、という事情も関係していると2001年頃に教えてもらったことがある。
ALiのサウスブリッジはこの当時でも安定性と性能では評判があったから、これは悪い話ではなかった。ただATIによるArtXの買収の結果として、ALiとATIで製品ラインがぶつかりかねない事態になったため、2001年頃にはALiとATIの仲は一時的に疎遠になる。これが後々関係してくるわけだが、その話は後述する。
再びチップセットビジネスに参入
今度はサウスブリッジを自社開発
さて、チップセットの歴史に話を戻すと、2000年2月に「S1-370 TL」が発表されるものの、デュアルチャンネルのSDRAM構成は当然マザーボードの価格を引き上げる方向に作用するうえ、逆にシングルチャンネルでは折角の性能が生かせない。同じ2000年には、インテルが外部AGPポートを搭載したIntel 815を投入したことで、外部AGPポートを使えないことが大きなデメリットになるなど、あまり芳しい状況ではなかった。
また伝聞ではあるが、当時のATIはまだチップセットビジネスに慣れておらず、マザーボードメーカーに対するサポートなども十分とは言えない(というより、ひどかったらしい)状況であり、結果としてビジネスとしては成功から程遠かった。
しかし、ATIはこれでビジネスをあきらめた訳ではなく、2002年に改めてチップセットビジネスに再参入する。しかも今度はインテルとAMDの両方のプラットフォーム向けに製品を投入することを決定した。
インテルはPentium 4にプラットフォームを移行していたこともあり、インテル向けのノースブリッジとしてRS200を新たに開発、これは最終的に「RADEON IGP 330/340」として製品化される。一方のAMD向けのノースブリッジは、まずAthlon/Duron向けにATI A3というコード名で開発を進め、これは最終的に「RADEON IGP 320」として製品化された。
さて、ここで問題になったのがサウスブリッジである。当時のことだから当然ノースブリッジとサウスブリッジは別構成で、これはA-Linkと呼ばれるバスで接続されたが、要するにPCIバスのことである。それはいいのだが、問題はそのサウスブリッジを誰が作るかだ。
「S1-370 TL」の時とは異なり、今回はALiによる公式なサポートは期待できないというのは、前述の通り両社がやや疎遠になってしまったからだ。そこでATIは自社でサウスブリッジの開発を決断する。それが今回のテーマである、「IXP200」である。
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