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3年ぶりのハイエンド機「SHURE SE846」

SHURE開発者に聞く、究極イヤフォンはこうして生まれた

2013年05月13日 11時00分更新

文● 小林 久

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マーケティングやスペック訴求のために技術を取り入れるわけではない

── 思い切った価格帯だ。ここまで高価だとカスタムイヤフォンと比較するユーザーも多いだろう。

エングストローム 「カスタムイヤフォンのマーケットは10年で変わった。10年前は最低でも1000ドルからという状況だったが、最近では200ドル程度で買える製品もある。この価格帯ならSE215やSE315でも競合になりうる。つまり価格帯の幅が広すぎて、比較が難しい。カスタムイヤーと比較してどうかという点は考えていない」

サリバン 「SE864には、ほかのどのイヤフォンにもない技術を入れている。もちろんカスタムイヤフォンもそうだ。比べようがない。(高価というが)オーディオファイルが使うホームオーディオの価格は1万ドル、2万ドルだ。そう考えれば、このサイズまで微細化する技術を使いながら、この価格に抑えているのはリーズナブルなのではないか」

── 今後この技術をローエンドに展開していくことは難しいのか。

エングストローム 「ローパスフィルターで使用している金属やプレートの加工精度には高い技術水準が必要だ。下位機種に展開していくのは現時点では難しいだろう」

ハイブではない、リアリティーを求める

── 10万円を超えるハイエンドヘッドフォンは国内では珍しくなくなっているが、日本だけのトレンドなのだろうか?

エングストローム 「世界的な傾向だ。ポータブルで音楽を気軽に聞く環境が整ったことで、聴く層が増え、高音質の追究に興味を持つ人たちが増えている。これを繰り返すと自然により高い次元の製品への買い替えが進む。だからグレードをダウンするのではなく、少しずつアップする方向に進んでいくのだと思う」

── 低域用にダイナミック型、中高域にBA型を使うハイブリッド型イヤフォンに対してはどんな感想を持っているか。

サリバン 「ハイブリッド型の走りとしてはSuper.fi 5EBなどがある。個性的な音を出す製品という印象だった。しかし実際の開発では、ダイナミック型とBA型を一緒に使うことから生じるデメリットもあると認識していた。一般に2つの異なる技術を一緒に使うと問題が生やすくなる。例えば、BA型とダイナミック型ではリニアリティー(入力した信号と出力した信号が直線的=比例するかどうか)が異なるので、ボリュームを上下した際の周波数カーブに差が出る。聞こえ方に違いが出るのだ。そのハードルは越えられるものだとは思うが」

── バランス駆動はハイエンドヘッドフォンの流行だが。興味はあるか。

エングストローム 「いまのところない。計測上、突出した差が出ないためだ。こういったものは得てしてハイブのようなもので、リアリティではない」

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