ランキング自体はあまり信用されていない中国の実情
海賊版天国と揶揄される中国で、JailBreakしたiPhoneへのアプリ導入はマニアックではなく大衆的で身近な存在だ。
携帯電話街にはJailBreakを代行するショップが多数あり、知識ゼロでも安価でJailBreakしてくれる。JailBreakした後は、無数にある中国語のアプリサイトから無料のアプリをダウンロードする。
いくつかの調査レポートでは、中国では少なくとも6割のiOSデバイスがJailBreakをしていると分析している。世界では1割のiOSデバイスがJailBreakしているとの調査レポートがあるので、中国のJailBreak率は非常に高い。
ただ、一方でApp Storeを利用してアプリをダウンロードする人も多数いる。結果こうした環境のもとで、ニュースと連動して「中国でのApp Storeの無料アプリランキングで1位となった」と考えられる。
ちなみに、奇虎360は著名企業と真正面から喧嘩をして話題となる手法をしばしばとるが、そんな同社は過去にApp Storeで同社のアプリの評価を金で買ったとして、あらゆる同社のiOS向けアプリがApp Storeから消えたという前歴がある。
中国にはランキング操作(「刷排名」と呼ばれる)業者が多数あり、ダウンロード数をランキングの指標とするサイトや、評判が書き込めるサイトがあれば、業者により操作されることはよくある。そのためアプリのランキング自体が中国人に信用されていない。
App Store以外の、つまりJailBreakしたiOSデバイスユーザー御用達の中文アプリストアを見てみると、定番アプリとして「微信」はあるものの「連我」(LINE)はない。本体を買ってJailBreakした後にアプリストアにアクセスし、定番アプリをダウンロードしようとすると、LINEにたどり着くことはできないわけだ。
微信の代わりとしてLINEがさらに普及する?
そう考えると、どうもLINEが中国App Storeの無料アプリランキングで1位になったということは、素直に喜べないように思うのだが、一方で前途もある。
ここ最近、中国政府関係者が騰訊に、微信の有料化を求めるコメントをよく出している。政府が庶民から金を取ろうとすれば、最近はネットユーザーも表だって堂々と反発する。
ネットユーザーは政府関係者の発言に「俺ら庶民から金を吸い上げようとしているのか!」と怒りのコメントを多数上げているのだ。
こうした中で一部のユーザーが微信の対抗馬を選ぶ動きがある。LINEのユーザーがLINEを気に入って、口コミで知り合いに伝えれば、ランキング1位よりもずっと効果的に人々は利用していくだろう。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)を執筆。最新著作は「日本人が知らない中国インターネット市場[2011.11-2012.10] 現地発ITジャーナリストが報告する5億人市場の真実」(インプレスR&D)。
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