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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第22回

3時間じゃ足らない! 米西海岸の体験型科学館を見る

2013年04月28日 12時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura

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ワークショップと教材作りも展示の一部
理科の先生向けのトレーニングコースも

 エクスプロラトリウムでは、ワークショップも行われています。例えば牛の目を解剖したり、植物に触れてその性質を知るといった理科の授業のようなセッションや、電子工作などもあります。またいつでも参加できるワークショップの1つに、電池と電球やモーターを使って自分の回路を作る展示がありましたが、ここで使われている1つ1つの道具が、すべてエクスプロラトリウムで手作りされたものであることに驚きました。

ワークショップも常設や時間制で開催されている。ここでは手作りの道具を使って、自分の海路を作ることができる展示

 展示スペースの所々に展示物を作ったり修理したりする工房が設置してあり、そこで作業をしている風景を見ることもできます。創設者であるオッペンハイマーが1950年代に高校で行なった、オリジナル教材を使いながらの教育スタイルが、サンフランシスコの博物館にもしっかりと根付いており、装置や展示品を作ることも展示の一部になっている点はユニークです。

 エクスプロラトリウムでは、理科の先生向けのトレーニングも含まれています。ウェブサイトを見ると、エクスプロラトリウムのような体験学習をどの様に教室で実現するか、といった方法をガイドするツールキットを提供しています。また毎年500人を超える学校の先生を体験型学習が行えるようにトレーニングするプログラムもあり、科学に関する教育を作り拡げる拠点としての役割も担っており、このプログラムは1984年から展開されている点には驚かされます。

印象的だったのは、展示品の製作や修理も施設内で行なっている点。装置がどの様に作られるのかも展示の1つなのだ

おまけ:木曜夜はオトナの時間

 筆者は3時間では足りなかったという、やや不完全燃焼感を持ったエクスプロラトリウムですが、毎週木曜日の夜は17時に一般公開が終わり、18時からは「Adoult Happy Hour」として18歳以上しか入場できない日程を設定しています。通常25ドルの入場料も15ドルと安くなり、美しい建物とともに展示物を楽しむ事ができます。

 また毎月第1木曜日の夜は「After Dark」というイベントが設定され、カクテルを楽しみながら音楽からセックス、電気、最新テクノロジーといった毎回異なるトピックを学ぶことができるとのこと。

 例えばリニューアルオープン後の初回となる5月2日は「Home」というテーマで、建築家とエンジニアが死蔵している倉庫を「エネルギーゼロ」の博物館エクスプロラトリウムに生まれ変わらせるまでを語るトークセッションが用意されているそうです。

 科学というテーマを体験型にし、好奇心をかき立て、またエンターテインメントやシティーライフの対象へと溶け込ませるエクスプロラトリウムは、街の機能としても、また学びの場としても、非常に魅力的に映ります。サンフランシスコを訪れる機会があった際にはぜひ、たっぷりと時間を取って、その規模と思想に触れながら、思い切り楽しんでいただければと思います。

博物館の先端は海に面しており、海を見渡せるレストランがある。ランチやティータイムに休憩をするにもピッタリだ


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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