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はじめてのEMCストレージ導入 第2回

カタログに見えないコンシューマ系NASとの違いを知る

総務部担当者でもVNXeの運用を手がけられる?

2013年07月10日 08時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp イラスト●野崎昌子

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イーエムシー工業では共有ストレージとしてEMCの「VNXe 3150」の導入を検討している。総務部の河西係長から情報収集を任されたSI稲葉は、VNXeのセミナーに参加し、情報収集するとともに、EMCの担当者に直接質問をぶつけてみた。

セミナーで実感したVNXeのコスパと使いやすさ

イーエムシー工業に導入する共有ストレージとして「VNXe 3150」に目星を付けたSI稲葉。普段から購読しているTECH.ASCII.jpの記事を見る限り、サーバー仮想化と社内のデータ集約を実現するのにあたって最適なスペックといえる。

 とはいえ、VNXeの価格は既存のコンシューマー系NASよりは高価であるため、発注元の河西係長からは両者の投資対効果をきちんと出すよう依頼されている。また、実際で導入するにあたってはパフォーマンスの指標をきちんと出さないとならないし、なにより運用は基本ユーザー企業側で行なうことになるので、使い勝手が重要だ。こうした点を踏まえ、SI稲葉氏はEMCがパートナーと共同で日本各地にて開催しているセミナーを聴講した。いざ会場に行くと、競合のシステムインテグレーターの面々が何人も足を運んでいた。みんな製品に高い関心を持っているようだ。

セミナーに参加し、しっかり情報を収集するのだ

 セミナーの内容は興味深かった。EMCはもともと大企業向けのハイエンドストレージを中心に展開していたが、最近ではエントリ/ミッドレンジ、スモールビジネスといった分野にも注力している。この市場において戦略的な製品として投入されたのが、ユニファイド・ストレージである「VNX/VNXe」だ。ユニファイド・ストレージとはあまりなじみがない用語だが、要はファイルサーバーとしても、SANのストレージとしても利用できるという。高いコストパフォーマンスを実現しながら、非専任管理者でも使いやすいGUI、そして専業ベンダーならではの信頼性も兼ね備えたとのことで、スモールビジネス市場で待望の製品という印象を受けた。

 SI稲葉が注目したのが、やはりVNXeの価格だ。スモールビジネス向けのVNXeは、従来のEMCでは考えられない100万円前後という価格を実現している。特に「VNXe 3150」では、80万円台という価格を実現しているので、「販売代理店が提案しやすい商材」なのだという。確かに、今まで中小のお客様ではストレージの金額が100万円を超える段階でEMC製品は選定から外れ、コンシューマー系NASを提案していた。ただ、コンシューマー系のNASは価格だけで選んでいた部分も大きかったので、この価格はユーザーにとっても、SIerにとっても魅力的といえる。

 もう1つ、SI稲葉が感心したのがVNXeの使い勝手だ。セミナーでは講師が実機を用いて設定を見せてくれた。GUIのツールである「Unisphere」を開き、ウィザードを使い、NASとして動作させる。共有フォルダ名を入力したり、使用するプロトコルのチェックボックスをオンにするといったWindowsライクな操作で作業が管理してしまう。

ウィザードベースの設定なので、とても簡単

 また、部品が故障した際のオペレーションや、バックアップやスナップショットの設定についても見せてくれた。今まで企業向けストレージといえば、コマンドベースの難しいイメージがあったが、コンシューマー系NASを上回る使い勝手が実現されているようで、SI稲葉はかなり驚いた。最新の機能を簡単にGUIで扱えるということで、ぜひ使ってみたいと思った。

カタログに見えないコンシューマ系のNASとの違い

 セミナーの後、SI稲葉は販売代理店の担当者を介して、EMCの製品担当者と話すことができた。今まで使ってきたコンシューマー系NASとの違いを聞いてみたいと思ったのだ。ほかのセミナーでもよく聞かれるらしく、EMCジャパンの三保さんは技術的な質問に対して丁寧に答えてくれた。

SI稲葉:今回、サーバー仮想化とデータ集約の案件でVNXeの導入を検討しているのですが、やはり中小企業だとコンシューマ系NASの導入が多く、違いを聞かれることが多いのです。

EMC三保:確かに価格的には、まだVNXeの方が高いですからね。ただ、コンシューマ系NASはあくまで安価な個人向け製品の部品を集めて作ったプロダクトです。かたやVNXeはストレージ専業ベンダーが、信頼性や性能を考えて作った企業向けの製品です。決定的に違うところがいくつもあります。

SI稲葉:私もそう説明しているのですが、具体的には?

EMC三保:まず、コントローラーや電源が二重化に対応していますので、基本的には障害時でもサービスを継続できます。ダウンを許されない企業の重要なデータの保管で利用されることが多いので、だいたいデュアルコントローラーの構成で導入なさいますね。

SI稲葉:確かにコンシューマ系NASは、シングルコントローラーが多いですね。あとは見えにくい性能面も気になります。

EMC三保:最新のXeonプロセッサーを採用しているので、高い性能を実現しています。SSDにも対応しているので、アクセス頻度の高いファイルをSSDに配置することでパフォーマンスを高めることが可能です。ハードウェアに余裕があるので、ファイルサーバーを複数台立ててもらっても、十分な性能を確保できます。NASの足回りとも言えるネットワークインターフェイスでも10GBASE-Tやトランキング、VLANなど、企業レベルのアクセスに耐えられる性能・機能を持っています。ほかにも細かいところの、違いはいくつもあります。

ディスクも、RAIDもさすが専業ベンダーの作り

SI稲葉:それは気になりますね。

EMC三保:たとえば、RAIDひとつとってみても、コンシューマ系NASとのアーキテクチャに違いがあります。通常、512バイトで切っているブロックをEMCは8バイト多い520バイトで切っています。この8バイトにパリティ的な情報を埋め込んでいるんです。ミッドレンジに実装してきた実績が積まれているんです。

SI稲葉:なるほど。カタログでは、RAIDレベルの有無しか書かれないのでわかりませんね。

EMC三保:そうなんです。ディスクも、2つのコントローラーからアクセスできるデュアルポートのディスクを採用しています。しかも、書き込まれたデータはライトキャッシュを介して、別のコントローラーと同期されます。これは通常ミッドレンジ・クラスのストレージで使われるキャッシュの二重化技術ですが、VNXeでは標準搭載なんです。これもカタログには出てこないVNXeの実力です。

 SI稲葉は、力強いEMCの担当者からリコメンドを聞いて、とても感銘を受けた。一口にRAID対応のNASといっても、数万円の製品から数千万円の製品までピンキリだが、やはり価格によって大きな差があるということだ。今回のイーエムシー工業の案件の重要度を考えると、やはりコンシューマ系NASではなく、VNXeのような企業向けの製品が必須だと改めて思った。

VNXeとコンシューマ系NASを構成案に

 セミナーから戻ったSI稲葉は、さっそくVNXe販売パートナーで調べたEMCの販売代理店にVNXe 3150の試用を依頼しつつ、イーエムシー工業への提案書を作成し始めた。基本は、既存のアプリケーションサーバーをVMwareで仮想化し、データは「VNXe 3150」に格納。NFS経由で利用するという一般的な構成を取ることにした。

 さらに公正を期すため、低価格なコンシューマー系NASを用いた構成も提案として用意した。最近のコンシューマー系NASはiSCSIをサポートし、VMwareの認定を取得している製品もあるからだ。予算の面でこちらが選択される可能性がないわけではないが、河西係長にはコスト対効果や信頼性の観点について説明した方がよいだろうと考えた。

 いずれにせよ、両者の違いを説明するため、社内での検証は必須といえる。次回はいよいよシステムの導入と構築を進めていく。

(提供:EMCジャパン)

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