今回は本連載で取り上げたいろいろなサービスの復習シリーズです。Mailbox、Passbook、Vineの3つのサービスを採り上げます。できるだけ新しい話をご紹介しようとしてますが、以前紹介したサービスを実際に使ってみたり、その続報があったりと、やや定点観測的に見ていくこともまた、テクノロジーのサービスの面白さでもあります。
上に写真を掲載したWBCの話も早くしたいのですが、まずは日々のメールの話から。
話題のメールアプリ「Mailbox」
早速Dropboxに買収される
本連載の前々回にご紹介した、メール体験をまったく新しいものに変えてくれるアプリ「Mailbox」(関連記事)。筆者も使い始めてから、iPhoneのこのアプリでしかメールを見なくなったというほどです。メールのコミュニケーションをシンプルに、そしてパワフルなものに変えてくれています。
Mailbox | |||
---|---|---|---|
価格 | 無料 | 作者 | Orchestra, Inc. |
バージョン | 1.0.1 | ファイル容量 | 8.9 MB |
カテゴリー | 仕事効率化 | ユーザーの評価 | (4) |
対応デバイス | 対応OS | iOS 6.0以降 |
そんなMailboxをリリースしたOrchestraという企業が、3月15日にクラウドストレージサービスでおなじみのDropboxに買収されました。名前がやや似ていて、兄弟みたいなサービスだな、と思っていたら本当に縁組みをしてしまったのでびっくりしました。
Mailboxによると、アプリ公開後に1日に扱うメールの量は6000万件に達し、サービスで利用する帯域も2000倍に膨らんだといいます。公開された時点から、無料でサービスを提供するMailboxがこのままビジネスモデルなしに発展できるとは考えられなかったので、どこかに買収されるのが狙いだろうとは思っていました。というのも、プレミアムプランなどをリリースしても(もちろんリリースされたら筆者はお金を払うつもりでしたが)、成長のスピードと有料会員の増加のスピードが合わないだろうと考えていたからです。
OrchestraとDropboxは双方のブログポストでこれを報告しています。
Mailboxからは「Mailboxがなくなるわけではない」と明らかにした上で、「あなたのDropboxとMailboxがつながったら、どんなクールなことが起きるのか、想像してみてほしい」としています(ブログポスト:http://mailboxapp.tumblr.com/post/45426605131/to-grow-even-faster-mailbox-is-joining-dropbox)。
一方のDropboxは、「あなたと同じように、Mailboxを発見したとき、恋に落ちた」とラブコール。「多くの人たちが約束してきた溢れる受信ボックスへの対処を、Mailboxのチームは現実にしてくれた」とその成果をたたえました(ブログポスト:https://blog.dropbox.com/2013/03/welcome-mailbox/)。
Mailboxとしては、経営や運営の基盤を強固にすることができ、Dropboxは自社サービスのコンセプトや利用シーンにシナジーのあるアプリをラインアップして、より顧客サービスを強化し、有料会員に魅力を伝える事ができるようになります。
筆者は現在のiPhoneでのメールの使い方で、DropboxやEvernoteの「共有可能リンク」でファイルをやりとりすることが増えてきました。メールにファイルを添付するのではなく、これらのサービスで発行されるリンクをペーストして相手に送る。すると、手元でファイルを更新すれば、相手にも最新版のファイルをダウンロードしてもらえるため、何度もファイルを添付してメールを送ったり、どれが最新版か混乱を来すことがないからです。
この原稿のファイルを担当に送るのもそうです。iPhoneのDropboxアプリでファイルの共有パスを取得し、Mailboxに切り替えてペーストしました。しかしこの作業が、Mailboxのアプリ内だけで完結したら、どんなに素敵でしょう。普段のワークフローが線のようにつながる感覚が、MailboxとDropboxの連携への最初の期待です。
普段使っているサービス同士の買収や合流は、それらのアプリのユーザー体験がどのようになるのか、あるいはどうなったらうれしいか、と言うことがイメージしやすいものです。
他にも筆者が使っているiPad向け手書きアプリの「Penultimate」がEvernoteに買収されましたが、手書きメモをEvernoteに保存してMacなどからも見られるようにしていたので、とても納得感のあるうれしい買収でした。皆さんも普段使っているアプリやサービスがどうなると嬉しいか、スマートフォンやタブレットのホームスクリーンを眺めてみてください。あるいは、このサービスにラブコールを送るようなアプリを作る、というのも1つの手かもしれません。
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