3月14日、シスコシステムズはWi-Fiの位置情報を活用した「Connected Mobile Experiences」のソリューションについての記者説明会を行なった。顧客の位置情報を活用することで、オペレーションの改善をもたらすほか、マーケティング分析やエクスペリエンスの改善に役立つという。
アプリケーションやブラウザ、チップセットで検知
シスコのConnected Mobile Experiencesは、無線LANでの位置情報を元にアプリケーションと連携する仕組みを提供するもので、シスコが昨年買収したThinkSmart Technologiesのソリューションをベースにしている。Connected Mobile Experiencesは、無線LANを利用するモバイルユーザーを検出する「Detect(検知)」、ユーザーとの接続を確保する「Connect(接続)」、顧客とのエキスペリエンスを向上する「Engagement(エンゲージ)」の3つから構成されている。
特徴的なのは、接続や情報収集などエンゲージ方法が選べるということだ。たとえば、スマートフォンのアプリケーションを使うことで、屋内のGPSを用いてナビゲーションを行なったり、ストアのアプリをポップアップさせたり、メッセージングを用いてコンテンツを表示することが可能だ。また、Webブラウザを用いた接続も可能で、コンテキストに応じてバナーやサービス内容もカスタマイズできる。ここまでは普通だが、クアルコムの新チップセットではチップセット自体がサービスを検知できる。専用アプリのダウンロードなしで、Wi-Fiで位置情報収集が可能ということだ。
システム的には、「Cisco Mobile Services Engine(MSE)」がロケーション分析を実現しており、アプリケーションと連携する。無線LANコントローラーと連携し、信号強度などで座標を収集。Wi-Fiのデバイス数を色で表すことで、混み具合を見たり、ゾーンごとの利用状況を確認することができる。閲覧データは詳細にフィルターでき、どのエリアに長く滞在しているのか? ピークタイムはいつか? 新規来店か、リピート客か? よく使われている経路はどれかといった分析が可能になる。これを元にビジネス上の意思決定を支援するアプリケーションを構築できる。
発表会で登壇した米シスコのブレンダン・オブライエン氏は、実際のConnected Mobile Experiencesのユーザー事例として、コペンハーゲン空港の例を挙げた。
コペンハーゲン空港では、Connected Mobile Experiencesで検知した乗客に応じて、保安要員やチェックイン担当者、税関担当者などを動的に再配置したり、レイアウト自体を変更。空港内のオペレーションを改善したという。マーケティングにも活用されており、「顧客のトラフィックを分析することで、レイアウトを変更。免税店への誘導を50%上げることができた」(オブライエン氏)という。また、米国のファーンバンクミュージアムでは、閲覧しているものの説明を自動化したり、子供に見ているモノに関連したクイズを出したりと、顧客にパーソナライズドされたサービスの提供を行なっているという。
その他、ホテルでは顧客に部屋を案内したり、バーのハッピーアワーを通知したり、あるいは観光客に空き駐車場を案内するといった事例も考えられるという。一番の課題は、やはり新規ユーザーにどのように利用してもらうかで、「そこがまさにチャレンジだ。電子チケットのバーコードを使って簡単に登録できるようにしたり、インセンティブを用意したり、さまざまなアイデアが試されている」という。
最新バージョンは日本でも投入され、顧客の導線分析などに興味が集まっているとのこと。遠からずユーザー事例も発表できる予定だという。