「ミクで行く」と決まってから
苦難の道のりが待ち受けていた
今でこそ、一般的な宅配ピザだが、このスタイルを日本で最初に始めたのは実はドミノピザだという。新たな市場に切り込んで、定着させた功績は計り知れない。そんなドミノピザが初音ミクとコラボしたという。「なんでミクとピザ?」という疑問を、仕掛人でもあるドミノピザ・ジャパンの唐澤 淳氏に聞いた。
──初音ミクはこれまでも様々な商品などとコラボをしていますが、まさかピザ! どこがどうやったらミクとピザが結びついたのか、教えてください。
唐澤氏(以下、唐澤) いくつかあるんですが、大きく分けてビジネス向けとお客様向けの理由があります。ビジネス的なことから説明しますと、ドミノピザは比較的若年層に弱いという部分があって、若い人たちへどうやったらリーチできるのかということに、ここ数年取り組んでおります。
その中の一環として、キャラクターを使ったプロモーションは有効だろうということで、いくつか検討した結果、初音ミクが一番メジャーだろうという結論が出ました。なんと言っても“姫”ですから、われわれとしてもぜひ一緒に仕事をしたいなと(笑)。
──若年層へのアピールに初音ミクが一番有効だということだったんですね。
唐澤 インターネットでのピザ注文というシステムを、ここ10年くらい促進していて、ネットユーザーに刺さるプロモーションというのを常に模索しております。その中で、ニコニコ動画を始めとした人気サイトなどで有名なキャラクターといえば“初音ミク”が大きな部分を占めますよね。
──そういえば、なぜかドミノピザのスタッフがボカロ曲を作ってますが……。
唐澤 普通キャラクターものというと、権利元にお金を払って契約期間中キャラクターを貸してもらう、というビジネスだと思うんですけど、初音ミクでそれをやっても面白くない。みんなの歌姫をお金で買ったみたいで、そんなのは許されないじゃないですか(笑)。
まずはわれわれが初音ミクを楽しむところから始めました。正直なところ、会社の30代以降の人は「初音ミク?」という感じだったんですけど、現場で働いているクルーは20代、アルバイトも含めると10代後半から20代後半までの若い人ばかりなんです。だからなのかもしれませんが、ボカロ曲を社内で募集したら、たくさんの応募があった。初音ミクの知名度は絶大なんですよ。こうやって、ドミノピザ自身がミクで楽しむことで、世の中に数多くいらっしゃるボカロPさんやミクファンのみなさんの仲間に入れてもらうところから始めたんです。最終的に10曲作りました。
──なるほど、まずは初音ミクというカルチャーを楽しんでみようと。社員からの反響はいかがでしたか?
唐澤 年齢が上の人たちに「ボカロ曲作ろう!」と言っても「うーん??」という感じでしたが、先ほどもお話したとおり、若い子たちにはすんなり受け入れてもらえましたよ。それを見て、上層部の方々も「そこまで言うならやってみれば」と。
──会社を挙げてのプロジェクトだと思うんですが、よく英断されましたね。
唐澤 そうですね。もともとドミノピザは日本初の宅配ピザショップということもあり、チャレンジャー精神を常に持ってやっています。会社の動きが止らないように、世の中にないものを作り出していくというスピリットがあります。あとは、初音ミクを起用するということは話題にはなりやすいですが、反面それなりのリスクもありますよね。失礼な扱い方をすると、ユーザーを怒らせてしまい、マイナス要素も生まれてきます。わからないからと言って、中途半端にはできません。そういう意味でもチャレンジでしたね。
──かなり盛りだくさんな内容のキャンペーンですが、いつから動き出していたんでしょう?
唐澤 最初に案が出たのは去年の5月くらいからですね。
──10ヵ月も前から準備していたんですか!
唐澤 クリプトンさんといろいろ相談したり、教えていただいたりしながら慎重に進めてきました。
──リリースをこの時期にしたのは、やはり3月9日のミクの日に、ということでしょうか?
唐澤 そうですね!(キッパリ)
──ですよねー!
唐澤 ボカロの曲だけを作っていては話題にはなっても、拡販には繋がりません。それを繋げるには春だろうなあ~と思っていたのですが、せっかくですのでこの日に(笑)。
──ユーザーからの反響はどうですか?
唐澤 予想以上です。お恥ずかしい話なんですが、アプリ経由でご注文いただくと、ミクの箱に入れて持って行くというサービスを行なっているのですが、これが想定してた数では全然足りなくて……。予想の10倍以上注文が入ったお店もあって、かなり多く見積もったんですけどねえ。今、急ピッチで増産してます。
※現在、この「初音ミク スペシャルBOX」は一部店舗で品切れ中ですが、3月20日をメドに解消される予定となっております