アドビ システムズ社がマーケティングサービスの大手であることはあまり知られていない。足がかりは、’09年に買収したオムニチュア社だった。’10年にはスイスのデイソフトウェア社を買収しており、デジタルマーケティングの強化に向けて着実に準備を進めていたのだ。そして現在、「Adobe Marketing Cloud」と呼ばれるクラウドサービスをデジタル市場に向けて展開している。
3月6日(米国時間)、ソルトレイクシティーで「Adobe Digital Marketing Summit 2013」が開催された。27カ国から約5000人が来場。会場内では、同社のデジタルマーケティングの製品情報や事例を始め、アクセス解析やソーシャルメディアとの連携といった内容のセッションが開かれた。
本サミットで発表されたいちばんのニュースは、これまで27種類もの製品群で構成されていたAdobe Marketing Cloudを5つの製品群に集約したことだ。ちょうど、クリエーター向けの「Photoshop」「Illustrator」「Flash」などを「Adobe Creative Cloud」として提供しているのと同じ格好だ。デジタルマーケティングのワークフローに合わせて製品をまとめてあり、ソリューションとして活用しやすい。Marketing Cloudのひとつ「Adobe Experience Manager」では、新しいユーザーインターフェースを採用してメジャーアップデートされており、さまざまなサービスをシームレスに使えるようになった。
基調講演には、シャンタヌ・ナラヤンCEOとブラッド・レンチャー上級副社長がステージに上がった。架空の会社のキャンペーンを例にあげて「新製品のキャンペーンを始めてページビューは伸びたのに、コンバージョンが想定よりも落ちてしまった」という問題をそれぞれの製品が解決する場面をデモで披露した。広告代理店の担当者とウェブで使う素材をスムーズにやり取りしたり、マーケティング担当者が戦略的にキャンペーンや広告、ソーシャルメディアを活用したりと、具体的な事例をあげて解説していた。
基調講演後の質疑応答では、「オラクル社やIBM社のほうが大企業へのソリューションを提供するという点でアドビよりも優れているが、どう対抗するのか?」という厳しい質問が飛んだものの、「マーケティングの担当者やCMOとちゃんと対話できるのはアドビだけ」と力強く答えた。
なお、新しいMarketing Cloudは現在、夏からのサービス開始を見据えて開発やテストが進められている。同社では、Creative Cloudを「右脳」、Marketing Cloudを「左脳」と位置づけており、この分野でのビジネス拡大に期待を寄せているようだ。