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山谷剛史の「アジアIT小話」 第42回

黒歴史となるか? 中国でGoogleが受けた仕打ち

2013年03月05日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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 Googleのエリック・シュミット会長の著書「新デジタル時代」(The New Digital Age、 John Murray Publishers刊)が4月25日にリリースされる。この中で中国についての記載があり、「中国は地球で最も危険な国であると同時に、先端的で多産なクラッカーである」と言った。折しも中国のハッカーについての情報が西側諸国のメディアなどで割り出されたばかり。

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 たった10年前の中国インターネット黎明期の頃には、中国でGoogleは百度のシェアを上回っていた。記憶している限りサービスは自由に使えた。中国で支持されるべく、横文字が苦手な国民に向けて「谷歌(グーガ)」という中国名を名乗り、「g.cn」という最短のドメインを獲得し、利用者にアピールしつづけた。

 しかし今やGoogleは、中国インターネット黎明期からGoogleを利用していた旧ユーザーを中心に、検索サービス利用者の1割にしか支持されていない。検索サービスはキャッシュ機能が利用できず(Not Foundに)、YouTubeも使えなければGmailも使えない。

 Androidですら搭載機を買ったところでGoogle関連サービスがプリインストールされていない機種が当たり前。つまり、Androidのエコシステムに乗ろうとしない機種が続々と登場している。

 他にも数々のGoogleのネガティブなニュースが中国で報じられた。なんとなく中国でのGoogleの立ち位置はよくないという話は知っている読者も多いだろうが、改めてその歴史をまとめてみたい。

中国シェアNo1のGoogleに迫る「百度」

Google中国こと「谷歌」のトップページ

Google中国こと「谷歌」のトップページ

 2000年9月、Google中国語版(簡体字・繁体字)がリリースされる。「CNNIC」(China Internet Network Information Center)によれば、まだ中国の中でたった2000万人しか利用者がいなかった頃だ。米国にサーバーがあり、中国や香港に移転した後に比べてひどく検索に時間がかかったことを記憶している。

 この2年後の2002年8月、初めてGoogleにアクセスができなくなり、老舗ネットユーザーを驚かせた。この頃から「政治には関心を持たないから自由に使わせてほしい」というメッセージが掲示板サイトに書き込まれた。

 翌月にはGoogleにアクセスできるようになったが、その翌年の2003年に再びアクセスできなくなる。その2003年までは今では信じられないかもしれないが中国でシェア1位であった。シェア1位からの転落のきっかけは新興の地場検索サイト「百度」が2002年にMP3検索サービスで軌道に乗ったことも影響している。

 翌年2004年からトップシェアの座を百度に譲る。百度はさらに矢継ぎ早にさまざまなサービスをリリースし、Googleとの差を引き離していく。

中国市場に積極的なGoogle! 2008年までは……

 百度が上場した2005年、シュミット会長は「谷歌元年」を宣言。北京にR&Dセンターを設立し、翌2006年には「最大の電脳街秋葉原+研究都市つくば」的なポジションの北京の中関村に中国総本部を設立し、中国名の「谷歌」を命名、またサーバーを中国に移転し、google.cnドメインでのサービスをスタートするなど積極的に攻勢をかけた。

 ライバルの百度に押され気味だったが、まだこの頃はGoogleも気勢を上げていた。google.comにはアクセスできないが、google.cnにはアクセスできるということもおきた。google.cnの中国での運営と同じくして、検索サービスで中国政府の意向に従ったフィルタリングが開始された。

 よろしくない検索ワードを入れると「法律法規政策により検索結果は一部表示されません」というメッセージが表示されるようになった。欧米メディアを中心に、一部中国ネットユーザーも「悪魔になるな」とGoogleのこうした中国展開を批判した。

 それでもGoogleは中国市場で受け入れられるべく、それまで他サイトの運営許可証を借りて運営していたが、中国当局から運営許可証も正式に取得。2007~2008年にかけて百度と競うように中国向けの新サービスをリリースし、中国の有力ネットサイトやベンダーと提携した。また覚えやすい最短のドメイン「g.cn」を取得した。

 百度で人気だった音楽検索サービスも開始した。管理が不十分だったのか、ポータルサイト「捜狐」のIMEを盗用し開発した「GoogleピンインIME」をリリースした事件も発覚した(その後、問題ない独自開発のIMEをリリースしている)。それでもGoogleのサービスは当時はまだ中国のユーザーの目にも魅力的に映っていたと記憶している。

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