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業界人の《ことば》から 第27回

PCが売れない時代、リソースシフトを迫られる富士通

2013年02月19日 09時00分更新

文● 大河原克行

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今回のことば

「PCよりも、タブレットの方が勢いがある。今後、タブレットにリソースシフトをかけていく」

(富士通・山本正已社長)

下げ止まらない、業績

 富士通は、中期経営方針を発表。そのなかで打ち出した構造改革への取り組みとして、PC事業にもメスを入れる姿勢を示した。

 同社は、先頃発表した2012年度第3四半期決算において、2012年度の通期業績見通しを下方修正すると発表。10月公表値に比べて、売上高は500億円減少の4兆3700億円。営業利益は据え置きの1000億円、経常利益は100億円増加の950億円、当期純損失は1200億円減少のマイナス950億円の赤字と、最終赤字への転落を明らかにした。

 売上高の修正は今期3度目の下方修正だ。

 今回の売上高の修正における最大の要因は、ユビキタスソリューション部門での修正。売上高で650億円減の1兆800億円。しかも、そのなかで、PC/携帯電話が550億円減の計画修正を見込んでおり、同社が「フロントデバイス」と呼ぶ領域で、大幅な下方修正を行っているのがわかる。

 出荷台数計画も、PCでは年初の年間700万台から100万台減の600万台に、携帯電話は同800万台から150万台減の650万台へと下方修正している。

海外では価格低下と販売量の減少、国内では在庫対策で大きな赤字

 PC事業悪化の様子は、すでに第3四半期から顕在化している。

 富士通の2012年度第3四半期連結業績では、PCおよび携帯電話を含むユビキタスソリューションの売上高は前年同期比11.5%減の2665億円、営業損失は同41億円減の20億円の赤字。PCおよび携帯電話の売上高は前年同期比11.0%減の2069億円と前年割れとなっており、PC事業は前年度に黒字から、赤字へと転落している。

 「PCは、欧州市場において想定以上に価格低下が進展。さらに、販売数量が減少した。また、国内では在庫対策を行なったために、赤字が大きく出た」(富士通 取締役執行役員専務の加藤和彦氏)と、PC事業不振の理由を説明する。

 富士通の山本正已社長は、「海外事業、PC事業、デバイス事業が悪化した。これらの課題事業を抜本的に改革していかなくてはならない」と、中期経営計画の基本姿勢を示す。

 デバイス事業では、デソソーへの事業売却など2400人の人員削減に続き、システムLSI事業をパナソニックのシステムLSI事業と統合し、ファブレス・システムLSI統合会社を設立するなど、さらに4500人規模の転籍を計画する。

 海外事業に関しては、PCやサーバー生産を行う欧州の富士通テクノロジー・ソリューションズ(FTS)において、サービス事業を中心とした事業体質へと転換。さらにハードウェアのコスト構造改革にも取り組むという。

 そして、PC事業に関しては、市場ターゲットの絞り込みを掲げ、コンシューマPCのラインアップの見直しに着手。PCの開発およびマーケティングの約100人の社員を、モバイルサービスや次世代端末の開発にシフトさせる考えを示した。

 山本社長は、「PC事業は富士通が強いジャンルである。だが、PC単独で生き残るのはかなり厳しい。今後は、PCだけでなく、モバイルデバイスという広い観点で捉えなくてはならない。また、サービスを含めた形で、モバイルデバイス事業として推進する必要もある」とする。

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