「モバイルプリンター」、「モバイルスキャナー」という言葉は時折耳にするが、「モバイル複合機」という言葉はあまりなじみがないだろう。私自身、重くごてごてとしたフォルムの多い複合機の中に持ち運べる製品があるとは思えないし、今後持ち運べるようになるとは想像もしていなかったのだ
しかしそんなことはないと証明する製品が登場した。
昨年11月に日本ヒューレット・パッカード(以下HP)が販売を開始した「Officejet 150 Mobile AiO」がそれだ。バッテリーで駆動し、プリント/コピー/スキャンができる、正真正銘の「モバイル複合機」である。
持ち運ぶには重く、広い設置場所を取るというイメージがどうしてもぬぐい去れない複合機。そんな複合機を持ち運べるようになったら、オフィスや仕事環境はどう変わるのだろうか? 実機の写真とともに見ていきたい。
まずは編集部に届いた製品とご対面。見た目からして気に入ってしまった。
本体は小さく、シンメトリーで、装飾が少ない。アルミヘアライン風の外装におなじみのHPロゴが静かに主張するさまは非常にシックだ。収納した状態の外観は、カステラ、あるいはようかんのように長方形で、フットプリントは約35×17.1cm。本体の高さは約9cm程度とコンパクトだ。この状態では液晶や給紙トレーがどこにあるのかさえ分からないが、給紙トレーには印刷用の用紙(A4サイズ)50枚までセットでき、スキャン機能も利用できる。
複合機のカバーというと、少し傾けただけでぱたぱたと動いてしまうものが大半。言ってしまえば「被さっているだけ」のものが一般的だが、本機のカバーは爪を本体両側の溝にはめこむようにしてしっかりと固定されている。意図せず、カバーが開いて不都合が生じるということもなさそうだ。
カバーを開くと、裏側が用紙サイズを印字した給紙トレーになっていることが分かる。さらにその手前にはディスプレーが寝た状態で収納されている。これらは閉じた状態(携帯時/収納時)にすっきりしたデザインを実現するとともに、部品点数や無駄な隙間を減らして小型化にも貢献させようとする工夫なのだろう。
通常の複合機の使い方であれば、これらは欠点になりかねない部分だ。カバーは力を入れずにすぐ開いた方が良いし、使用するたびにディスプレーを起こすのは面倒だ。
しかし持ち運ぶとなるとこれらは途端に利点へと変わる。
カバーが固定されていることで手に持った際の安定感が確保されており、仮にぶつけてしまったとしても、飛び出ている箇所がほとんどないため大きなダメージは受けにくい。
使ってみると、極めて自然に手に持って動かせることが分かる。
実際、少し触ってみただけでも随所に「モバイル」ならではの工夫が散見される。本機にかけられた「持ち運び」への情熱がこちらに伝わってくるようである。
具体的には、「インクバックアップ機能」が挙げられる。黒のインクが切れた際はカラーインクの合成によって黒を作り出し、反対にカラーが切れた際は黒インクのみでグレースケール印刷をしてくれるのだ。インクの交換ができないシチュエーションでインクが切れた際の応急処置として、重宝することだろう。
些細だが面白い機能も搭載されている。排紙部に付いているカバーが、プリンターの準備が整った際に自動で開くのだ。携行時はカバーで排紙部を保護し、使用時には勝手に開いてくれる。ユーザーのことを考えた嬉しいギミックだ。