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東京・大阪間でのアクティブ/アクティブ構成も視野に

異ベンダーファブリックを実践!ネットワン、データセンター刷新

2013年02月05日 13時00分更新

文● 渡邊利和

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2月4日、ネットワンシステムズは自社データセンターのリニューアルに関する説明会を開催した。今回のリニューアルでは最新のネットワークファブリックを導入した全社共通の基盤を構築、2社のファブリックを並列的に導入することでノウハウを蓄積し、ユーザーへも還元していく。

仮想化だけでは不十分

 サーバーを仮想化して統合することでITリソースの利用効率化を図る、と簡単に言われるが、その前提にあるのは仮想化された統合基盤を作ることである。そのため、従来のスタイルの「アプリケーションごとに独立し、分断されたサイロ型システム」をそのまま仮想化しても「仮想化されたサイロ型システム」になるだけで、さほどの効率向上は望めない。とはいえ、システム単位で“できるところから順次仮想化していく”というアプローチで仮想化を導入する場合、システム単位で個別に仮想化していく、というやり方になりがちなのも確かである。

設計方針と採用された機器

 2009~2011年、ネットワンは全国各拠点に点在していた物理サーバーを仮想化してデータセンターに統合/集約していたが、業務システム単位で独立した「サイロ型仮想環境」となっていた。ネットワンシステムズの社内システムも、まず仮想化してデータセンターに集約した段階ではこうした状態であったが、続けて実施された今回のリニューアルで複数のシステムで共用する統合された仮想化基盤を構築し、ICTリソースの最適配置を実現している。

 あくまでも“ユーザー”という立場で社内システムの仮想化を進めている取り組みだが、同時に同社の事業であるシステムインテグレーターとしては、ユーザーが陥りがちな状況からより望ましい環境への刷新を自ら経験しておくことでノウハウを蓄積するというメリットもある。

 データセンターのリニューアルについて説明を行なった同社のシステム企画グループ システム企画本部 プラットフォーム部 サービス開発チームの古森 浩一氏は、今回のデータセンターリニューアルの目的を端的に「利用者とインテグレータ双方の視点で実践・ノウハウ向上 お客様への更なる満足度向上・信頼向上を図る」としている。

ネットワンシステムズ システム企画グループ システム企画本部 プラットフォーム部 サービス開発チーム 古森 浩一氏

 内部的には、5月に予定されている本社オフィスの移転に向け、新たなワークスタイルの実現を支えるICTインフラを準備する、という意味合いもある。たとえば、現在は約1000ユーザーが利用している仮想デスクトップ環境は、新オフィスの移転後には3000ユーザーに増加する計画なので、これを支えるインフラの整備は不可欠となる。

ユーザー/インテグレータ双方の視点から見た場合のデータセンターリニューアルの目的

アクティブ/アクティブ構成は現実解ではない?

 将来的には、東京と大阪の2カ所のデータセンターをアクティブ/アクティブ構成とし、システムの場所を意識せずに利用でき、かつ災害対策としても有効、というデータセンターの実現が目標とされているが、現時点ではまだアクティブ/スタンバイ構成に留まっているという。この理由について古森氏は、「現時点ではまだ現実的なコストで実現するための適切な技術がない」としている。

現時点でゴールと想定されているデータセンターの構成。現時点ではこのアクティブ/アクティブ構成は主にストレージ同期の難しさからまだ実現できてはいない

現時点でのシステムイメージ。まずはStep1として東京地区データセンターが構築された。次いでスタンバイサイトとなる大阪地区データセンターの整備が行なわれる

 具体的に問題となるのは両拠点間でつねにデータの同期を取るためのストレージの部分だ。技術的には、両拠点間をダークファイバーで接続して充分な帯域を確保しておけば東京大阪間でもストレージの機能によってデータを同期させることができる。しかし、ダークファイバーの確保には「月額数千万円」(古森氏)というコストがかかり、到底現実的とは言えない。より低コストで利用できる回線でデータ同期を実現する技術の開発も進んでいるところなので、そうした技術を待って将来実現することを目指していくという。

 データセンターの内部では、最新のソリューションを活用した構成が実現されている。サイロ化の要因の1つともなっていた仮想化ソフトウェアのバージョンのばらつきなどは基本的に統一され、複数のシステムが共通の仮想化基盤上で実行される構成となっている。

リニューアル前の課題とファブリックによる解決。特定のシステムでリソースが逼迫しても効率的な再配置ができないなどの問題がファブリック化によって解消された

 内部ネットワークでは「Brocade VCS Fabric」と「Cisco Fabric Path」の2種類のネットワークファブリックが構築されている点がユニークなところだ。これは、インテグレータとして両方のソリューションを知っておくことで顧客により深い提案ができる、というもので、インテグレータならではの構成と言える。実際、古森氏は、STP(スパニングツリー)を排除して効率よく帯域拡大できるといった基本的なメリットは共通だが、実装の考え方は異なっており、「シスコは従来の環境との親和性を重視している反面、チューニング等をきちんと行なう必要がある」「ブロケードは完全にSTPを排除した形だが、その分増設等はまったく手間なくごく簡単に実施できる」と紹介している。

 こうしたノウハウが得られる点は、ユーザーとしての立場で実際に利用してみてこその価値だと言えるだろう。このほか、仮想化基盤を統合するためのバージョンアップの手順やデータ移行の作業など、多くのユーザーが直面するであろう問題点に関しても実践的なノウハウが得られたという。

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