健全な事業拡大がひとつのキーワード
キヤノンマーケティングジャパンの川崎正己社長は、「デジタルカメラの市場は、カメラメーカーだけではなく、電機メーカーが存在感を高めている。だが、これから3年間は、電機メーカーが生き残りを賭けて、この領域に力を入れてくるだろう。我々は、この市場で負けるわけにはいかない。商品力をしっかり磨き、販売戦略も強化していく」と語る。
だが、デジタルカメラを含むキヤノンMJのデジタルイメージング事業の業績は、今後3年間は厳しい見通しを立てている。
同社が1月29日に発表した2015年度を最終年度とする中期経営計画では、ビジネスソリューション、ITソリューション、産業機器の3部門では、2012年比で2015年までに2桁増の売上高成長を目指すのに対して、イメージングシステム(現在のデジタルイメージングから改称)では5.7%増の2105億円と1桁成長に留まる。営業利益では部門別で最大規模を誇るものの、やはり成長率は最も低い。
これに対して、川崎社長は次のように語る。
川崎 「デジタルカメラ市場全体では、右肩上がりで利益を拡大できる時代は終わった。デジタルカメラに関しては、この3年間においては、利益成長よりも、存在感を高めていくことに力を注ぎたい」
コンパクトカメラでの戦い方に加えて、エントリークラスの一眼カメラであるミラーレスでの戦い方もこれからの課題だ。一眼カメラ市場全体の半分を占めるミラーレスは、同市場の牽引役。だが、キヤノンMJでは今年の計画でもミラーレスの構成比は約2割に留まる。
しかし、ミラーレス市場の拡大に追随すると、価格が安い機種の拡大につながり、収益性の悪化を招くことにもなる。
「レンズ交換式デジタルカメラでは、一眼レフのプロ、ミドル、エントリーおよびミラーレスの各層に対して、最適なマーケティングを展開していく。豊富な交換レンズで差別化を図り、健全な事業拡大とともに、シェアNo.1を維持する。また、コンパクトデジタルカメラではプレミアムモデルへの注力により、収益性向上とシェアNo.1確立を図る」と川崎社長は語る。
「健全な事業拡大」というのがひとつのキーワードだ。
デジタルカメラの利益成長はないものの、それでもプレミアムモデルによる差別化により、利益は確実に確保しながら、そのなかでカメラメーカーとしての存在感をいかに高めていくかがこれからの課題となる。
カメラメーカーとして、カメラ市場において、電機メーカーとどう戦うのか。キヤノンMJにとって、これから3年の重要なテーマとなる。
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