スマートフォンやタブレットPCの普及に伴い爆発的な勢いで広がりを見せているタッチパネルであるが、パネル感度の善し悪しがCPUの処理速度とともに使い勝手を左右するため、メーカーは部材選びには気を遣う。
2012年12月にシャープは従来の逐次駆動方式に比べてS/N比を約8倍の高感度化を実現したタッチパネルシステムを発表した。現在、このタッチパネルシステムを搭載した製品としては、IGZOと組み合わせたタブレット「AQUOS PAD SHT21」のほか、1月30日に市場に登場した20型タッチディスプレイ「LL-S201A」などがあり、今後も同システムを搭載した製品が続々と登場するという。このタッチパネルシステムに関して、先日メディア向けの内覧会が開催された。この製品がどのようなものなのか見ていこう。
高感度だから鉛筆でも入力可能!
タッチパネルの種類は感圧式、赤外線方式、電磁誘導方式などいくつかあるが、現在販売されているスマートフォンやタブレットに使われているものは静電容量方式が多い。静電容量方式は他の方式に比べてS/N比が高く、マルチタッチのセンシングが比較的簡単という利点がある。一方で20インチ以上の製品を実現しにくい、ディスプレイからの電磁ノイズに弱い、手袋やペンなどで利用できないといったデメリットもある。
今回シャープが発表したタッチパネルシステムはこれら静電容量方式のデメリットを排除。S/N比では前述の通り従来方式に比べて約8倍の高感度を実現したほか、60インチまでの大型化、手袋や鉛筆などでの使用も可能となった。
タッチパネルシステムはコントローラーチップとセンサーシートのセットになっており、下記の表のようにサイズによりチップ数が異なる。また5型のもの以外はマルチタッチ点数は10点を実現しており、両手すべてを使った入力もできる。特筆すべきは、紙にペンで文字を書くときに手のひらを画面に置いての入力も誤動作なくできるところ。より自然な形での入力ができるようになっているのでストレスレスな環境も構築可能だ。なお、現状は液晶ペンタブレットのような筆圧による線の描画コントロールはできないので、このあたりは今後の技術的な対応が望まれるところだ。
高感度化を実現した秘密
従来の逐次駆動方式と比べて約8倍の高感度化を実現した背景には、「独自並列駆動方式」という新たな読み込み方式を採用したのが大きい。逐次駆動方式はタッチパネル上に格子状に張り巡らされているセンサーを1ラインずつ順に読み込むことで位置を検出する。一方、新たに採用された「独自並列駆動方式」では複数ラインを同時に読み取ることができるため、素早い動きをしても正確に読み取り可能としている。また従来方式だと大画面化をするとどうしても感度が劣化してしまうが、今回の方式では画面サイズが大きくなっても感度の低下は起きず、「理論的には100インチまで対応可能」(シャープ)という話だ。
高感度化にはセンサーへのノイズ除去技術も大きく寄与している。従来の方式ではディスプレイ自体が発するノイズを軽減するためにセンサーシートとディスプレイモジュールの間に空間を設けていた。今回のタッチパネルシステムでは同社がAV機器で培った低雑音アンプ技術を応用することにより、センサーが受信するディスプレイからのノイズを認識し、除去。タッチした信号のみを増幅するようにしたため、感度が上がり、ノイズ対策用の空間も不要だ。このことによりタッチパネルモジュールの薄型化も可能となった。
さてデモでは60型4K2Kのディスプレイにタッチパネルシステムを搭載したものを動作させていたが、触ってみたところ、静電容量方式のため大きなサイズのタッチパネルの割には動作が機敏で、以前展示会などで触れたどのタッチパネルよりもストレスなく使用できた。将来的には「デジタルサイネージの場にもこのシステムを使用した製品を投入したい」(シャープ)としており、新たな製品への採用も期待される。