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クラウドビジネスやグローバル進出、ビッグデータまで聞いた

クラウドを始めて1年!サイボウズ青野社長が考えたこと

2013年01月30日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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クラウドの隆盛でIT市場はシュリンクするのか?

 もちろん、こうしたクラウドビジネスは、市場のシュリンクをもたらすという見方もある。クラウドの本質である複数ユーザーによるシステムの割り勘は、ユーザーにとってはコスト削減につながるが、ベンダーにとってみればデフレを招くからだ。

導入に100万円かかっていたシステムが月額5000円から使えるようになると、顧客が変わります

 しかし、この見方に対して、青野氏は「確かに単価は下がります」と前置きした上で、「でも、今まで導入に100万円かかっていた業務システムが月額5000円から使えるわけだから、裾野は確実に広がります。たとえば、専用機のゲームは5000円以上しますが、スマホのゲームは300円です。でも、子供がぐずったときに面白そうなゲームをダウンロードして遊ばせることもできますよね。これは今までになかったパターンです」と語る。シュリンクというより、むしろ顧客層が変わるという意見だ。

 とはいえ、無償提供されていた企業向けGoogle Appsが有償化されるといったことも起こっている。これに関しては、「少なくともグーグルのようなやり方はとりません。私たちはクラウドをあくまで『サービス業』と考えているので、顧客やパートナーと対話しながら、展開していきます」と意見を述べる。

 こうしたクラウドのインパクトを青野氏は、「今までの業務システムはある意味、家内制手工業。整然とサーバーが並ぶデータセンターの中で動くクラウドは、まさに工場です」と表現。産業革命に近いインパクトがあるとアピールする。

 一方、オンプレミスでのビジネスはどうなのか? 実はcybozu.comの開始により、クラウドへの移行が半額になるキャンペーンまでやっているにも関わらず、パッケージ版の出荷本数は現在も落ちていない。「パッケージ版とクラウド版はあくまで別の市場なんです。オンプレミスのグループウェアも確実に需要があります」というわけだ。こうした状況もあり、パッケージ版に関しては2013年も確実に改善を進め、ユーザーの満足度をさらに高めていく予定だ。

クラウド注力の背景には「グローバル展開」あり

 このように青野氏がクラウド事業に本腰を入れる背景には、「グローバル展開」というキーワードが隠れている。

米国市場へ進出したが、正直レベルが違うと思いました

 サイボウズは2001年に米国に現地法人を設立しており、その法人の社長を兼務していたのが、ほかでもない青野氏だ。しかし、2006年に撤退という辛酸をなめている。ローカライズしたサイボウズOfficeが売れなかったのだ。青野氏は、米国市場を見てきた感想として、「正直、レベルが違うと思いました。ベンチャーでも、マイクロソフトの製品をターゲットに製品を作っているし、実際それくらいの商品がありました。日本でちょっと売れているくらいでは、勝負になりません」と、鼻っ柱を折られた体験をこう語る。こうした失敗経験から生まれたのが、グーグルやセールスフォース、マイクロソフトなど海外の最大手と真っ向勝負し、グループウェアの分野で勝ちたいという強い思いだ。

 こうしたグローバル向けの戦略商品と作られたのが、kintoneになる。ITに明るくないユーザーでも簡単にデータベースが作れることから「ファストシステム」を謳うkintoneだが、グローバル商材という観点だと、実は「文化に依存しない」というメリットが大きい。「米国でグループウェアについてリサーチすると、『なぜ上司に自分の予定を知らせなければならないんだ』という個人主義的な考え方にぶち当たります。これは文化やビジネスの違いなので、単に言語を変えるだけでは、このギャップを埋められません」と考えたのだ。

 そこでサイボウズは簡単にWebデータベースを作れるkintoneという「器」を用意し、カスタマイズやインテグレーションで文化やビジネスの違いを埋められるようにした。そして、このギャップを埋める役割を担うのが、いわゆるパートナー。クラウドでありながら、パートナーがビジネス展開しやすくしているのが、kintoneのビジネス面での大きな特徴といえる。また、パートナーの利幅を得やすい価格を目指した。「正直、Force.comの価格では、パートナーさんの儲けが出ないと思います。先日のイベントでも、パートナーさんに『とにかく儲かるモデルを作ってください』とお願いしました」と強調する。

(次ページ、グループウェアはビッグデータに飲み込まれる)


 

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