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40代記者が身につまされた生々しい介護の実態とクラウド

両親が倒れたら?介護の課題をクラウドで乗り越える

2013年01月28日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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Google AppsとSkypeでコミュニケーション

 しかし、北海道に移住して、東京の仕事をやるという道は簡単ではなかった。そもそも会社にはテレワークという制度がなく、家族の理解を得るのも苦労があった。「仕事はどこでもできるようになったが、これはあくまで技術的な話。しかし、この問題の本質は技術ではない」ということで、辞めるのを覚悟で会社に何度もかけあい、家族と話し合いを持つことで、テレワークと移住を実現できたと話す。

そもそもテレワークや在宅勤務という制度自体がない

 北海道への移住を決めた田名辺氏は、会社でGoogle AppsとSkypeを導入し、東京本社とのコミュニケーションツールにした。「ほかにもいろいろなツールがあるが、誰でも使えるという点で、Skypeは最強だった」(田名辺氏)。実際、東京にいる間に自宅での仕事を試してみたが、「試してみると、これがびっくりするほど順調。会議やソースコードレビューでの”まったり感”も伝わってきた。ここまでできるとは意外だった」とのことで、テレワークでもほとんど問題ないことがわかった。

 田名辺氏は、2ヶ月後に家族で北海道に移住。その後、欧文印刷という企業に所属しながら1年間クラウド型のテレワークを実践してきた。田名辺氏は、「インフラは整い、技術的な敷居が下がっているのを実感している」と語る。そして、家族と会社の理解があれば、IT業界の人にはこうした働き方は向いているとアピール。今後、「社会的に認知されてくれば、より導入も進むのでは?」と希望を語った。

インフラは整っている。特にIT屋は取り組みやすい

250km離れて両親を介護してきた
相羽氏が決めたこと

 続いて登壇したドリームガレージの相羽大輔氏は、クラウド型のワークスタイルを取り入れることで、親の介護と仕事を両立してきた事例を語った。ベンチャーでソフトウェア開発を手がけてきた相羽氏は、仕事のかたわら母親の介護を手がけていた父親が突然倒れたことで、昨年いきなり両親を介護しなければならない立場に放り込まれた。そのため、自身が働く金沢市と妙高市の実家を往復し、介護保険の申請や手続き、待ち人数の多い介護施設への入所などに対応していた。しかし、「母親の体調不良で、250km離れた金沢と妙高を1日に2往復したこともあった。仕事の納期も迫ってくるし、お金の問題も出てきて、だんだんつらくなってきた」(相羽氏)と吐露する。

 行き詰まりを感じた相羽氏は仕事と介護の両立をきちんと考え直すことにし、AWSに開発環境を構築。妙高市の実家から仕事できる環境を整えた。「自分の仕事環境をクラウドに移し、どこでも仕事をできるようにした。そのタイミングで、実家の近くに母親の入所施設が見つかった」とのこと。以降、クラウド環境をフル活用し、仕事と介護の両立を実践しているという。相羽氏は、「避けて通れないこうした介護に対する準備を怠って、大好きな仕事を辞めなければならないのは幸せなことではない。クラウドを活用して、幸せなエンジニアライフを実現してもらいたい」とエールを送った。

 また、介護向けのソフトウェアを手がけるビーブリッドの竹下康平氏は、新しいサービスの登場や人材交流が進む、介護業界でのさまざまな取り組みを紹介。一般的なイメージと異なり、介護業界が明るく活力がある業界であることを強調した。「厚生労働省のイベントでは、人口ピラミッドは変えられないという話が必ず出る。介護は当たり前のように来るものなので、先入観を持たずに、まずは積極的に関わった方がよい」(竹下氏)と述べ、積極的に介護について知ることが重要だと指摘した。そして、Q&Aセッションでは、クラウド型のワークスタイルを成功させるコツや会社との交渉の仕方、介護への関わり方などが語られた。

 震災以降、社会的に大きな注目を集めてきた在宅勤務やテレワークだが、多くの企業ではそれを実現する制度が整備されておらず、社会的な認知も乏しい。一方、PCとネットワークのみで仕事が済むことの多いIT業界は、こうした新しいワークスタイルをもっとも実践しやすい業界でもある。実際、インフラやツール面での敷居は低くなっており、先進的な事例も現れている。今後の人口減少・少子高齢化社会を考えると、業界ぐるみで積極的に推進していくべきだと感じられた。

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