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電アス・ゲーム部 第54回

『拡散性ミリオンアーサー』今だからわかる2人から見た本作の魅力とは?

鎌池先生&岩野Pにいろんなこと聞いちゃいました 最終回

2013年01月27日 18時00分更新

文● 電撃オンライン編集部

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 スクウェア・エニックスから大好評配信中のiOS/Android用アプリ『拡散性ミリオンアーサー』の魅力をお届けする特集“電撃ミリオンアーサー”。全4回にわたってお届けする開発陣対談のラストを掲載。

 対談していただいたのは、プロデューサーである岩野弘明氏と、小説『とある魔術の禁書目録(インデックス)』の作者にして、本アプリのシナリオを担当した鎌池和馬先生。対談企画の最後を飾るこの記事では、『拡散性ミリオンアーサー』の制作時に注意したポイントなどを中心にお届け!(第1回第2回第3回

無料でプレイできる『拡散性ミリオンアーサー』の魅力とは?

――今回は初期段階で150人という膨大なキャラクターを作られましたが、キャラクター作りのコツのようなものはあるのでしょうか?

鎌池先生:今回に関して言えば、元々アーサー王伝説という下地ができているので、アーサーやモードレッドなどの設定を調べて、そこをゲームにアレンジしていった感じです。0からキャラクターを作ったというわけではないので、作業的にはそれほど大変だったわけではありません。アーサー王伝説というのは、1冊の本にまとまっているものはなくて、いろいろな研究者の調べた角度によって、描かれる内容が変わってくるんですね。今回のシナリオはメインシナリオがあるものの、誰もが主人公になれるという設定なので、いろいろな視点によって物語がガラリと変わっていくのは、それらを参考にしました。

――卑弥呼など、アーサー王伝説には関係のないキャラクターも出てきますよね。

鎌池先生:それはですね。西洋ファンタジーだけだと、毎日カレーみたいになってしまうんじゃないかということで、東洋系も出したいとのオーダーがあったからなんです(笑)。ただ、『拡散性ミリオンアーサー』の世界だと、“外敵”という勢力が大陸を占めていて、ブリテンから東の国に海を渡って行けるというわけではないんです。だから、時空間を超えてやって来たとか、うまく外敵と接しないような設定を考えて作りました。

――キャラの解説を読んでいると、海岸に流れ着いていたなどがありますよね。

鎌池先生:バミューダトライアングルとかのネタを使って、海賊を呼んだりするんですよ(笑)。

卑弥呼や安倍晴明など、日本の伝説上の英雄も『拡散性ミリオンアーサー』には登場。海岸に流れ着いたり、骨から採取した因子から製造されたりと、さまざま形でアーサーのもとに集ってくることに

白雪姫やナポレオンなど、童話や別の時代の英雄もカードとして登場。中には宇宙人のような外見のカードが登場することも……

――作中でブリテンを狙う外敵とはどんな勢力なのでしょう。

鎌池先生:皇帝が治めている国という設定ですね。第1部から登場しているドラゴンというのも外敵の生物で、強力な兵器として使えるんですけど、これが自然を食い荒らしてしまうので、国内で囲えば囲うほど、国が荒廃していくという設定があります。あくまでもブリテンを侵略してくるという敵なので、あまりユートピアのような国にはしたくなかったんですね。それと、ブリテンには妖精という扱いの難しいキャラクターがいたので、それと対になるように、首輪を付けなきゃ制御ができない、とてつもない力を持つドラゴンを出して対比させようとしました。

――ボツになった設定などはありますか?

鎌池先生:最初のころですが、地球自体をブリテンにして、宇宙からやってくる外敵を倒すという、よくわからないスケールの物語にしようとして、没になりました(笑)。今はブリテンがそのままイギリスで、外敵がヨーロッパ全域というサイズに収まっています。

――開発段階も含めると、約3年ほど経過している本作ですが、今だから話せるウラ話的なものはありますか?

岩野氏:やっぱりジャンルを変えるという決断をしたところですね。それ以外は予想外に大きなトラブルもなく、順調に進んでいるのかなと。ただ、後々に控えている第3部がちょっと怖いですね。これはキャラクターの数がとても多くてですね、今フルボイス化をさせようとしているのですが、これらのキャラたちにどうやってボイスを付けていこうかと。第1弾、第2弾のボイスでは、人気のある声優さんにお願いしているのですが、第3弾もそれに負けないくらいの方にお願いしたいんですけど、この人数はどう収集つければいいんだと(笑)。

鎌池先生:会話シーンはあまり長くならないようにと、1ブロック(章をさらに細かく分けたもののこと)を1,000文字までというルールを最初に決めていたんです。でも後になって、1,000文字だと収まりませんと相談したら、じゃあ1,000文字以上でもいいですよって(笑)。今は1ブロックあたり2,000文字くらい書いていますね。

岩野氏:こちらが想定した以上のシナリオを鎌池先生が書いてくださるんですね。それが、ゲームの都合で切るのがもったいないくらいおもしろいんですよ。だったら全部入れちゃおうと、制限を外しました。

鎌池先生:ちなみに第1章の文量的には、1勢力ごとに電撃文庫に換算して300ページくらいだったかなと……。

――ということは、3勢力で文庫約3冊もあるんですね! これが無料で楽しめるというのは、本当にスゴイことだと思います。

岩野氏:やっぱり無料だからこそというインパクトがあると思うんです。このタイプのコンテンツって、無料という取っ掛かりはあるけれど、これ以上先を楽しむには、お金を出してくださいっていうのが多いじゃないですか。

 鎌池先生のテキストを読みたいという方は大勢いらっしゃると思うんですけど、それでユーザーを集めたものの、これより先を読むにはお金が必要ですとは言いたくないじゃないですか。ですから、鎌池先生のシナリオを読みきるところまでは、無料で提供しようと。ただ、そこからさらに遊びたい人には、ガチャなどでお金を払っていただければいいなと。無料部分で遊べるところを、かなり今回は広げてみた感じですね。

――スクウェア・エニックスさんのスマートフォン向けのゲームって、『ケイオスリングス』や『星葬ドラグニル』などをはじめ、独特なものが多いですよね。特に今例に出したタイトルは1,000円以上する、アプリとしてはかなり高額な部類に入ります。そんな中で無料のゲームが出てくるというのは、発表段階でもかなりのインパクトがありました。

岩野氏:値付けというのはかなり重要な要素なんです。単純に儲けたいからこの値段というわけじゃないんですね。まずはいいものをユーザーに提供しなければいけなくて、それを提供するには、それなりに開発費がかかってしまいます。それをまっとうな価格で回収させていただこうと。そうしないと、次に出てくるものはどんどん質の悪いものになってしまうんですね。

 そんな中、100円とか85円のタイトルばかりが出てくると、成長は見込めないかなって。だから『ケイオスリングス』や『星葬ドラグニル』は、それなりの価格で出させていただいています。そういうものもありつつ、『拡散性ミリオンアーサー』はそれと対になるような形で、無料でプレイできて、しかも結構遊べる衝撃的なタイトルになっています。ですから本作の場合は、値付けというところでも、ユーザーに驚きを与えるコンテンツにしたいと思って挑戦してみました。本作に関して言えば、単純に儲けたいという部分ではなく、1つの話題性として提供できればなと。

→最後に、『拡散性ミリオンアーサー』のこれからについて(2ページ目へ)

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