1月23日、A10ネットワークスは創設者兼米本社CEOのリー・チェン氏による2013年の事業戦略説明会を開催した。その中で同氏は、同社の中核技術であるソフトウェアプラットフォーム「ACOS」の新バージョンを今年後半にリリースする計画であることを明らかにした。
さらなる進化を遂げるACOS
A10ネットワークス米国本社のCEOで同社の創設者でもあるリー・チェン氏は、同社を8年前に創業して以来順調に成長を遂げ、2012年は31%成長を達成したと語った。次いで同氏は、同社のミッションについて「Software Defined Application Platformのリーダー/イノベーターになること」だとした。これを実現するためのツールとなるのが、同社の独自OSであるACOS(Advanced Core Operating System)だ。
7年に渡って開発が続けられているACOSは業界初の64ビットOSであり、現在でもSymmetric Multi-Core/共有メモリアーキテクチャの64ビットOSとしては業界で唯一の存在だという。同氏は、ACOSでは当初からコントロールプレーンとデータプレーンが分離されていたことも紹介した。コントロールプレーンとデータプレーンの分離は、SDNの実現を目指すOpenFlowが注力したことでSDN(Software-Defined Network)の重要な要件と見なされるようになったコンセプトだが、ACOSはこの点でSDNとの親和性も高いと考えられる。強力なOS上にロードバランシングを始めとしたさまざまな機能をソフトウェアモジュールとして実装したことが同社の製品の強みでもあるわけだが、この構造はそのままSDNへの対応強化の際にもアドバンテージとなるというわけだ。
こうした点を背景に、同氏が2013年の製品戦略としてまず明らかにしたのが、ACOSのメジャーバージョンアップ版となる「ACOS 3.0」の投入だ。リリース時期は今年後半とされており、予定される拡張点は、「新たな40Gbps/100Gbps対応ハードウェアのサポート」「新たなACOSアプリケーションの追加」「管理ソリューションの強化」「SDN対応強化」となる。同氏は「コンパクトで強力な新ハードウェアでACOSの新バージョンをデモンストレーションする」と予告しており、ACOSのバージョンアップのタイミングでハードウェアも更新されると予想される。
また、サービスプロバイダーやクラウドプロバイダーに対する拡販も今年の重要戦略となっている。同氏は現状の販売比率について、サービスプロバイダー向けが75%、エンタープライズが20%、クラウドプロバイダーが5%とした上で、3年後にはこの比率をそれぞれ1/3ずつという構成にしたいと語っている。
日本法人の代表取締役兼CEOで米本社のヴァイスプレジデント南APACも兼任する小枝 逸人氏は、国内での事業が3年間で10倍という目覚ましい成長を遂げているとした上で、調査会社各社の資料によっても競合他社を大きく上回る成長が裏付けられているとした。この理由について同社は、PCやサーバーのトラフィックへの対応を軸にしていた他社に対し、同社製品はモバイルトラフィックを意識したアーキテクチャになっていることから、PCからモバイルへという市場のトレンドの変化のなかで唯一成長を遂げているのだと説明している。
リー・チェン氏はACOS 3.0のリリースに関して「The Magic is Back!!」(魔法が帰ってくる)との表現で自信を語ったが、具体的などのようなOSとしてリリースされるのか、今年下半期とされるリリース時期が楽しみである。
初出時、現状の販売比率に関する記述が誤っておりました。お詫びし、訂正させていただきます。本文は訂正済みです。(2012年1月24日)