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ワールドカフェスタイルで組織や人材の限界を討論

自ら動く人たちが大集合!次世代イノベーター大会議

2013年01月23日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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組織の生活習慣を変えるために
なにをすべきか?

 こうした討論の後、リバーサイド・パートナーズ 代表パートナー 森時彦氏が、「結果のでない組織はこう変えろ! 組織トレーニングの勧め」というテーマで基調講演を行なった。森氏は、組織開発のベストセラーである「ザ・ファシリテーター」という本を上梓しており、イノベーションを興すための組織作りについて説明した。

ファシリティーションについて語るリバーサイド・パートナーズ 代表パートナー 森時彦氏

 森氏は、組織を人間に例え、悪い生活習慣を改善しなければ、結果は出せないと述べる。ここでいう悪い生活習慣とは、「できない理由を見つけるのが上手い」「情報伝達が遅い。不正確」「手続きにこだわる。結果にこだわない」などの傾向が見られるという。森氏は、こうした生活習慣の悪い上に、業績も悪い企業はそのままでは業績を上げることはできないという。「こうした会社は、システムを入れようが、コンサルティングを入れようが、なにをやってもダメ。まずは生活習慣を改善しなければならない」と指摘した。

悪い組織の生活習慣

生活習慣を変えなければ結果は出せない

 こうした組織の悪い生活習慣を矯正する組織トレーニングが、森氏の提唱するファシリテーションになる。組織に内発的な動機付けを促すことで、「PDCAを回すクロック数を上げたり、正しい意思決定を行なうため、組織を矯正していく」ための活動というわけだ。

 森氏はある病院での例を挙げる。その病院の外科では1日にできる手術の数が限られており、2割程度手術の数を増やしたいという課題があったという。しかし、そこでの議論を聞いてみると、医者の数が足りないとか、医療過誤が怖いといった話が多く、「どうやったら改善できるのかという議論に対して、そこの職員はなぜできないかという議論が延々と続けていた」と実態であった。

 そこで、森氏が「プロセスマッピング」という手法を用いて、ボトルネックを調べてみたところ、手術の数がこなせないのは医者の数ではなく、付帯となる雑用の負荷が非常に重いことがわかった。その結果、「ボトルネックがわかった段階で、みなさんの目の色が変わり、時間の使い方を考え直すようになった」という。こうした気づきや業務見える化を進め、自己改革を促していくのが、ファシリテーションだ。

 手順としては、まず悪い生活習慣を洗い出し、これを直すためのシンプルな「行動規範」を作る。そして、組織トレーナーを設置し、その行動規範をチェックし、組織を継続的に改善を進めていくという流れになる。とはいえ、行動規範も「顧客の満足を第一とする」や「良き企業市民として行動する」といったお仕着せのものは、従業員の頭に残らず、意味がないという。ある会社は、「すぐやる」「必ずやる」「できるまでやる」の3つだけを「憲法」として決め、顧客や取引先の要望にスピーディに対応する組織に生まれ変わったという。

 森氏が手がけたあるコールセンターの業績改善プロジェクトでは、接客を重視し、上意下達の文化があった。これに対して、その企業は、「何を言ってもよい」「『できない』と言わない」という2つの憲法を定め、データ分析重視、全員参画を手がけるようにしたという。また、若手の組織トレーナーを設け、トップやミドルと連携しながら、プロジェクトを進めた。この結果、収益は10%改善し、問題解決のアプローチを変わり、業務の見える化も一気に進んだという。

シンプルな行動規範を憲法として定める

コールセンターの業績改善プロジェクト

 森氏は最後に変革を成功するための条件として「危機感」「ビジョンの共有」「ビジョンの創造」「巻き込み」「行動の変化」「成功体験」「勢いの持続」という7つがすべて必要と述べ、「ビジョンが共有できない人には、いなくなってもらうしかない」という過激な発言も出た。組織論を語ったワールドカフェのディスカッションを受けた内容だけに、参加者も大いに溜飲を下げたようだ。

変革を成功するための条件

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