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2013年を占うTECH.ASCII.jpアワード 第1回

2013年注目のIT製品とサービスを選ぶ

独断と偏見のTECH.ASCII.jpアワード(サーバー&ストレージ編)

2012年12月30日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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ASCII.jpのITニュースメディアであるTECH.ASCII.jpの担当者が、2012年に発表された製品の中で優れたと思われる製品やサービスを独断と偏見で選んでみた。関連記事とともに2012年の動向を振り返ってみよう。

 はじめに断っておくが、ここで選ばれた製品やサービスはTECH.ASCII.jp担当者オオタニ個人の主観に基づいているものだ。オオタニが参加した発表会や取材に基づき、ユニークで、将来を感じさせるものを感覚的に選び、勝手に「大賞」を捧げている。今年の動向を振り返ると共に、来年のIT動向を占う参考にしてもらいたい。ここではサーバーとストレージの分野を紹介していく。

主役に躍り出たストレージ大賞「HP 3PAR」(日本ヒューレット・パッカード)

 ストレージ分野で特に気になったのが、今年HPブランドで一気に主役に躍り出た感のある「3PAR」だ。3PARは、HPのストレージビジネス拡大のために2010年の買収で得た製品だが、価格付けがハイエンド寄りだったこともあり、当初は数あるHPのストレージ製品の1つに過ぎなかった。

 しかし、2012年4月には中小規模向けのパッケージ「HP 3PAR Fクラス スターターキット」を発表。そして、12月にはいよいよ300万円台の新モデルを投入し、HP生え抜きのミッドレンジストレージ「EVAシリーズ」の後継として、3PARを「HP 3PAR StoreServ」という主力のプライマリストレージとして展開することを発表(リブランディングのたびに名前が長くなるのは勘弁してもらいたいところだが……)。日商エレクトロニクスとアライアンスを組み、動作検証センターを立ち上げるところまで一気に進めた。

会場で展示されたHP 3PAR StoreServ 7200

 この2年で、企業でのストレージのニーズは大きく変わっており、信頼性や堅牢性だけではなく、仮想化やスケールアウト対応なども重視されるようになった。また、サービスプロバイダーでのストレージ需要も増大しており、マルチテナントやDR(Disaster Recovery)という点も必要になってくる。こうした中、仮想化やスケールアウト、シンプロビジョニングなどを前提とした新世代ストレージである3PARが、ミッドレンジの価格で導入できるようになったのは1つの事件と捉えられる。

SMBにとってうれしいストレージ大賞「VNXe 3150」(EMCジャパン)

 ストレージ分野でもう1つ注目したいのは、SMB(Small & Medium Business)向けの製品である。EMCとネットアップという2大ストレージベンダーが低価格なSMB向けストレージ製品を投入し、いよいよ今年は100万円を切るモデルが登場した。この100万円以下のSMB向けストレージの市場は、もともと国内周辺機器メーカーのコンシューマ製品が幅を効かせており、エンタープライス系ベンダーの参入により、実に熱い市場となった。

 こうしたSMB向けストレージの皮切りといえるのが、2011年に投入されたEMCジャパンのユニファイドストレージ「VNXeシリーズ」だ。もとより、同社はハイエンドとミッドレンジが主力で、SMB向けはデルとのアライアンスやアイオメガブランドで細々と展開するのみであった。しかし、VNXeの投入により、SMB向け市場に本格参入し、市場を開拓しつつある。

EMCのSMB向けストレージ「VNXe3150」

 そして、11月に市場投入された新モデルが「VNXe3150」である。VNXe3150は、クアッドコアCPUを搭載することで、パフォーマンスを向上。2.5インチのHDDやSSDもサポートしつつ、84万円(シングルプロセッサー・300GB×6本)という低廉な価格を実現した。コンシューマ系ストレージとの争いはもちろん、競合となるネットアップも、虎の子であるDataONTAPを搭載した「FAS2220」を投入しており、両者の戦いも見逃せない。

ビッグデータ先取りサーバー大賞「Express5800/HR120a-1」(NEC)

 サーバーの分野では3月のXeon E5発表を契機に、HPやデルが新世代を謳うサーバーを投入した。特に、NECや富士通との激しいシェア争いを繰り広げているHPの鼻息は荒く、新世代のGen8サーバーでは運用管理や保守サービスなどを製品に取り込むことで、スペック競争から抜け出そうとしている。また、今年はブレードとラックの中間ともいえるマルチノードサーバーがいくつも登場し、データセンターでのサーバーのリプレース需要に答えようとしている。さらに従来別々だったサーバーとストレージのハードウェアプラットフォームが共通化する動きも出ており、インテル自体がリファレンスプラットフォームを提供しているのも注目したいところだ。

 こうした中、ビッグデータ時代を先取りした製品として注目したいのが、インテルの「Xeon Phi」をいち早く搭載したNECの「Express5800/HR120a-1」だ。もともとXeon PhiはHPC(High Performance Computing)での並列処理を前提としたメニーコアプロセッサーだが、今後HPCのニーズはビッグデータのニーズと同一化する。大容量のデータがあれば、格納する容量だけではなく、処理能力が必要になるのは必然だからだ。その点、I/Oまでチューンを施し、単一のサーバーで高い並列処理性能を実現するHR120a-1のようなサーバーは、来年以降ニーズが高まってくることになる。

「Xeon Phi」をいち早く搭載したNECの「Express5800/HR120a-1」

 ちなみに次点は「ディスクをしこたま積める」と書いた「HP ProLiant SL4500」。CPU装置であるサーバーの本筋を考えて、Express5800/HR120a-1を選んだが、この手のストレージサーバーは、来年以降各社が投入してくるに違いない。

 サーバー市場も順風満帆とは言えない。ノークリサーチが12月20日に発表した「2012年度上期PCサーバー出荷調査報告」では、国内のサーバーの出荷台数や金額は微減しており、2012年度全体でもマイナス成長になると見込まれている。こうした市場動向をどう打破していくか、2013年も各社の新しい取り組みに期待したい。

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