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前田知洋の“タネも仕掛けもあるデザインハック” 第8回

頭の良い人ほど騙される!? 数字のトリック

2013年01月11日 09時00分更新

文● 前田知洋

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「消えた1000円の謎」の答え

 何となくお気づきになった読者もいるかもしれないが、これは最後の式の立て方が間違っている。まず、最初に全員が出した総額、3万円は最後の式には必要がない数字だ。本来の計算式は以下の通り。

○9000円(1人あたりの負担額)×3人=2万7000円(預けたお金)
○2万7000円(預けたお金)-2万5000円(炊飯器の値段)=2000円(Eさんへのお礼)

 たった、これだけだ。本来なら経費になるはずのEさんへのお礼を「預けたお金」に足してしまい、最後の計算には必要のない最初の3万円から引いてしまっているところに間違いがある。

 データ(数値)が正しくても、その取り扱いを間違えてしまうと事実とは異なる結果になる。そんなプロセスの誤りを作為的におこなうことで不思議な結末を観客に披露するのがマジックだ。ただし、マジックは算数と違い、ムリに答えを出す必要がない。

 ときどき、算数の世界では「かけ算の順番問題」が保護者や教育者のあいだで話題になり、先日もツイッターのタイムラインを賑わせた。しかし、あまり数字の順番や単位の位置にばかり囚われすぎると、もっと重要なことを見落としてしまわないだろうか。杞憂かもしれないけれど、筆者は少しだけ心配をしている。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす魔法のことば』(日本実業社出版)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。現在、(株)ビジスパからメルマガ「Magical Branding-セルフブランド活用法-」を配信中。

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