原価1円? 数秒あれば作れるiPad用スタイラスペン
iPad/iPad mini/iPhoneのようなタッチパネルは、押された場所の検出を電気的に処理する。「静電容量方式(静電式)」と呼ばれるこの技術は、パネル上に微弱な電流を通して“電気の膜”を作り、指先で触れることによりパネル上に発生した表面電荷の変化をとらえ、触れられた位置を測定する。パネル上に発生した圧力で位置を測る感圧式とは異なり、爪や布地のように電気を通さない物質が間に入ると測定不可能になることが特徴だ。
だから、爪楊枝や細く丸めた紙では、iPad/iPad mini用スタイラスペンにはならない。偶然目の前にあったSHARP「SL-C1000」(Linux Zaurus)のスタイラスペンで試してみたが、やはりダメだった。しつこいようだが、Palm「m500」のスタイラスペンも失敗。これらのデバイスは感圧式のパネルなので無理もない。
電気を通す素材であればいいのかというとそうではないようで、スチールクリップを試したがアウト。かなり昔、理科の授業で鉛筆の芯に電流を通す実験をしたことを思い出し、指先でつまんだシャープペンシルの芯で書いてもダメだった。
そういえば、前述したボールペンのヘッド部分には、柔らかいゴム状の素材が取り付けられていた。多少押し込むように書かなければ手書き文字は認識されないのだが、まがりなりにも書けるので、ボールペンから流れてきた微弱な電気を伝える素材に違いない。
そこで、ヘッド部分に微弱な電気が伝わるよう、ボールペンを調理用アルミホイルでざっくり巻いてみた。アルミホイルの長さは約10×25cmだから、原価は1円程度だ。すると……BINGO! ヘッド部分から離れた位置を握って書いても、タッチパネルは反応した。しかもすらすら書けて書き心地は上々。せっかくのスリムなデザインは台無しだが、当初の目的は果たせたことになる。
アルミホイル製スタイラスペン
そして、ここで閃いた。微弱な電流が筆者の指先からアルミホイルを通じてゴム状素材へ流れているとして、わざわざそこへ伝える必要があるのか。「アルミホイルが直接タッチパネルに触れるほうが効率はいいんじゃね?」というわけで、ボールペンからアルミホイルを剥がし、今度はアルミホイルのみをペン状に巻いてタッチパネルに書き込んでみた。
結果は……うん、いける。いけるぞ。すらすら書ける! 見てくれは最悪に近いが、緊張すると途端に滑りが悪くなる指先に比べれば、書き心地は数段上でしかも安定感がある。理屈はともかく、アルミホイルが微弱な電気を通すほどの導電性を備えていることは確かなようだ。パネルに細かい擦り傷がつきそうな点は気になるが、これで思い立ったときいつでもiPad/iPad mini用スタイラスを自作できる。インタビューのとき使うと、「それはなんですか」と怪訝そうな顔をされそうだけれども。
アルミホイルをいいかげんに丸めたものでもすらすら書けた。ポイントは、ペン先(?)をかなり太めにして、ディスプレーに接する面積が広くなるようにすることだ。細いと認識されない点に注意しよう |
この連載の記事
-
第187回
iPhone
NFCの世界を一変させる!? iOS 11「Core NFC」の提供開始が意味するもの -
第186回
iPhone
Appleと「4K HDR」 - iOS 11で写真/動画を変える「HEIF」と「HEVC」 -
第185回
iPhone
iPhone 7搭載の「A10 Fusion」「W1」は何を変えるか -
第184回
iPhone
オープンソース化された「PowerShell」をMacで使う -
第183回
iPhone
アップル製デバイス連携の鍵、「Continuity」とは? -
第182回
iPhone
DCI-P3準拠へと歩むiPhone/iPad - WWDC基調講演で秘められた新技術は、ここにある(2) -
第181回
iPhone
WWDC基調講演で秘められた新技術は、ここにある(1) -
第180回
iPhone
WWDC直前、買い替え前にマイMacのココをチェック -
第179回
iPhone
私がiTunesを使わなくなった5つの理由 -
第178回
iPhone
今あえてiPhone「Live Photos」を知る -
第177回
iPhone
「Windows Subsystem for Linux」はOS Xのライバルとなるか? - この連載の一覧へ