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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第110回

あのヒッキーPが実名でアルバムを発売!

ボカロシーンの鬼才を口説いたGINGAレーベルとは

2012年12月22日 19時00分更新

文● 四本淑三

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有名ボカロPのソロやコンピを作ろうと思ったが

―― じゃあそう言って騙してヒッキーを出したとか。

曽根原 いや、騙してないです! 東方とかアニソンとかボカロとか、世の中にはオレたちよりインディーなものがあるんだ、という話をしたら面白がられて。それがまさに2009年くらい。有名ボカロPのソロやコンピを作ろうと思ったんです。それでいろいろ会っていたんですが、ちょっとつまらなくて。

―― ボカロPが、ですか?

曽根原 俺よりもビジネスしているみたいな。もう色んなコンピに参加していて、権利関係も中途半端に知っていて、前提としてまず音楽の話をしたいし、向こうもしたかったと思うんですけど、会社がでかいとか小さいとか、みたいな話になってしまう。うちはちっちゃいよ、カネもねえよって。

―― あの時期はビジネス方向に振れる転換期でしたからね。

曽根原 それで止めて1年くらい。でも上司から「アレどうなった」と言われて、ニコニコ動画のランキング以外のところを初めて見たんです。テクノだのハードコアだの、その懐の広さ、新鮮さ、いろんなジャンルに渡るさまざまな音楽がある。

―― どのあたりの人達ですか?

曽根原 Kiichiくんとか、ウチのぽわぽわって呼ばれている椎名もたとか、ピノキオPとか、sansuiさんとか、competorさんとか。それで、上司に聴かせたんですよ。ボーカロイドにはこんなものがあると。そしたら「なんだ、インディーバンドを毎日見たりしている僕らも、こんなの聴いたこともないぞ」と。オレはオレで、もともと電子音楽やブレイクコアが好きだったんで、同人、アキバ系にもそういうヤツがいるんだっていう衝撃。

有名ボカロPに描いてもらったGINGAのイラストだそうだ

―― 分かります、そこら辺が音楽マニア的には面白いところですよね。

曽根原 そこから20人くらいに会いました。で、どうするかなと考えて、やっぱレーベルだなと。当たり前だけど、最近薄れていた概念を活用するということです。ブランド力を高め、その物に付加価値をつける。それで世にアピールできればいいなと。

レーベルで働きたいなんて1ミリも思わなかったが

―― 曽根原さんはワンダーグラウンドにいつ頃入りましたか?

曽根原 5年くらい前ですね。ここは2000年に始まっています。元々、七尾旅人のCDを出すために、うちの上司が始めたんです。

―― もともと音楽を売りたかったんですか?

曽根原 いや、もう全然。僕は学生の頃に音楽をやっていて、同じ音楽サークルにいたバンドがここからCDを出したんです※1。仲のいい奴らだったんで、大阪から東京へ行く時に車を運転したり、いろいろ手伝ったんです。

※1 PaperBagLunchboxというバンド。ワンダーグラウンドからシングル1枚、アルバム3枚が出ている。

―― それでワンダーグラウンドの人達とは面識ができたと。

曽根原 はい。それから5年くらい経って「お前何してるんだ」って電話が来て。実家でニートしていますと言ったら、こっち来て働けと。はーい、って。

―― ははは。

曽根原 だから音楽業界で働きたいんだという野心や希望を持ちながら、インディーのレーベルに履歴書を送るとか、そういうことは一切していないし、音楽レーベルで働きたいなんて、1ミリも思ったことはないです。だったら出版の方がいいなって、漫画好きだから。

―― まあどっちも一緒ですけど。

曽根原 いろんな話を聞いていたし、そういう幻想を持っていないんです、音楽の方には。でも望まれるんなら、別に職種はなんでもいいやって。

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