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CGMから「感情」の動きを数式化! 大ヒットの方程式とは何?

2012年12月17日 12時00分更新

文● 美和正臣

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心の動きを表す方程式だから
AKBの選挙にも使えた!

――数字的には広告費というのはものすごく分かりやすいですよね。次に直接コミュニケーションというものを数式に表すと、10人がまた10人という形で等比数列的な表現になるとは思うのですが、間接コミュニケーションを数式でモデル化するというのはどう考えればいいのでしょうか?

とりあえず2人が会話をして会話が成り立ちますよね。それを第3者が聞くので3人が絡んでいると考えたわけです。会話をしている2人の「買おう」というテンションが聞いている人に跳ね返るだろうと考えました。単純なモデル化なんです。そこの部分が口コミだと1:1なのに対して、言わば2:1と3人が絡んでいるんです。そこが根本的に違うんですね。

――それを数式に置き換えたというわけですか。

普通の口コミは1人から聞くので1乗なんですけど、間接コミュニケーションはそれが2乗になるわけです。この2乗というのは、普通のかけ算を思い出していただければ分かるとおり、1を2乗すると1、2を2乗すると4、0.5を2乗すると0.25となり、数値が小さいとあまり効かないわけです。ところが大きくなると凄く効いてくる。日韓ワールドカップの時とか、アバターの3Dを初めて見たとかいうのは、この間接コミュニケーションの部分がドーンと大きくなったわけですね。

こちらは「カップヌードルごはん」のシミュレーションとBlogの言及数の比較。同じような動きを取っているのがわかる

――この数式で実際の映画の動員数とBlogの書き込み数を比較して、極めて似た動きになるということを示されたわけですが、最初に調べられたときにこんな動きになると思われましたか? 素人のイメージとしては、なだらかに上がっていって、公開日より数日あとがピークに来て、少しずつまた下がっていくというグラフになるのではないかという気がしたのですが。

かなりピークが鋭いですよね。予想はしていませんでした。私も調べる前は言われたイメージに近くて、もう少し上がなだらかとか、もう少し凸凹があるのではないかと思っていました。

――この数式によって、広告費をどれくらいかけて、途中にBlogの言及数がどれくらいかというのが分かると、売れ行きというのも簡単に予測ができるようになりますか?

多分できますね。

――著書では映画をサンプルにしていましたが、我々としては本の売れ行きとか分かると嬉しいなぁ、と思うわけです。広告を打ってどれくらいの売り上げがあるとか事前に分かると、上司への言い訳も事前に考えられて嬉しいわけです(笑)。

本の場合は、映画と違って種類が多いじゃないですか。マンガもあればちょっと難し本もあるし、厚いけど皆が読む大衆向けのものがあれば、ほんのちょっとの人しか読まない専門的なものもあります。それぞれごとにちょっとずつ違うので、本は一概に計算できるとは言えないのですが、一般的に皆が読むようなベストセラーに入るような本だとある程度できそうな気がします。

――ベストセラーというと10万部を越えるような、平積みされているような本ですか?

そう。アマゾンとか楽天とか、ああいうサイトに行ってやっと来るといった本ではなくて、平積みであるような本ですね。

――他のものでは何か応用できるものはあるのでしょうか?

割と気楽に購入できるものに適応できると思います。

――気楽にといいますと?

逆に気楽じゃないものというのは、例えば不動産を買うだとか、新車を買うとかいうものです。結構大枚をはたくものは、性能とかを十分に考えますよね。だから宣伝でカワイイ子がやっていたからといって、この車を買うということはあまりありません。でも、気楽に買えるもの、例えば普通にコンビニで買っているお菓子とかは、どこどこの会社のチョコレートを買うなんて義理もないわけですから、その日の気分で買いますよね。そういうものに結構効くのではないかと思います。要するにこの数式は「心の動き」を示す方程式ですから、心の動きだけで決まるのはOKなんですよ。でも心の動きではある程度決まったけれど、ちょっと家に帰って奥さんとか親族みんなに諮らないと決められないというのは無理です。

――何か人間が気楽に買える曲線みたいなものを出せるのだったら、そこのピークに近いものだったら行けそうなわけですね? 1~2万円程度だったらOKという感じですかね?

そうそう。映画は1000円ちょっとくらいですよね。その範囲内に十分入るわけです。

――心の動きということは、AKBの総選挙みたいなものにもこの式は利用できるわけですか?

はい。現実にちょっと使ってみました。Blogでしか書いていないのですけど、意外といい線はいったと思いますね。

――正確さという点ではいかがでした?

思ったよりもいいですね。これはピークの位置を揃えて、Blogの書き込みの減り方を見たわけです。この減り方をみると大体、上位の順位がわかります。とにかく1位になった大島優子さんは、2日目でもが数が減らないわけです。初日の投票を2日目に速報として発表するのですが、そのときはどのメンバーもそこにBlogとかの書き込みのピークが来るのですが、翌日を見ると大島さんの場合はほとんど減っていない。で、大島さんの次に減りが緩やかなのが柏木さんと渡辺さんです。

AKBの総選挙のBlogの投稿数と推移の様子。各アイドルの投稿数の減衰を見ると、ある程度の順位の予想が可能という

――ピークからの傾きを見れば大体何位くらいにくるのかわかるということですか?

ある程度ですね。ただ最近結構上昇傾向にある松井珠理奈さんという人は、この評価だとそこまで高くはないんですよ。もちろんベスト10には入るのだけど、上位を伺うほど強くは見えない。それは松井珠理奈さんが15歳なので、その年齢より下の人達というのはファンが多くともBlogやTwitterで書かない。やはりファンは同年代の高校生くらいが多いので。AKBのメンバーで若い子ほど反映されにくくなっています。

――今の数値はBlogで判断されているわけですよね? 例えばそれをTwitterとかそういうものも含めると、より精度の高いものができあがるという感じですか?

そうですね。ちょうど先週も研究会があったのですが、BlogとTwitterはどこが違うというのは結構研究課題でもあります。少なくとも気楽に書けるのがTwitterで、Blogの方がもうちょっと気合いを入れて書かなければならない。そこで出方は多少違いますね。最近の映画で見ても、BlogとTwitterで書かれる量の割合が逆転しているものもあるんですよ。映画だからどっちが多いということはなくて、例えば「宇宙兄弟」はBlogの方が多いんですよ。逆に「テルマエ・ロマエ」はTwitterの方が圧倒的に多いんです。

「宇宙兄弟」と「テルマエ」を比較したもの

――作品によって差があるんですか。

そうではなくて「テルマエ・ロマエ」は気楽なことを書いているんですよね。「よくあんなに濃い顔が集まった」とか「あんなにまじめにローマをやっているとは思わなかった」とか、そういう気楽なことが多い。いくつかの映画をAKBと同じ分析を行なったわけですよ。この2つが「テルマエ・ロマエ」のTwitterとBlogの数値ですね。この真ん中が「ヘルタースケルター」で、これが「宇宙兄弟」」の数値です。公開日から2日で完全に分かれますよね。

――当たるものは公開日後に上がりますね。

そう。これはなぜかというと、内容は公開日で見るわけじゃないですか。見た人はもちろん書くし、その見た人から聞いた人も多分書いているわけです。何かおもしろいらしい、次にオレも行こうと。そういうのがあるからここが盛り上がるわけです。だから宇宙兄弟は本当に凄い下がり方で……。

――例えば「テルマエ」のグラフなんですが、上がTwitterで、下がBlogですよね? 同じような曲線の動きをするんですね。

そうです。凄く似ています。「宇宙兄弟」と「テルマエ」動きも、高さは違いますけど見るとアバウトに似ていますよね。だから人間が何かちょっとネットに書こうというところまでは、初動は同じなのでしょう。あとはどっちに慣れているのか、どっちが友達が多いとか、いろいろな要素でどちらかに書くわけですよね。Blogに書いたり、Twitterに書いたり、場合によってはFacebookに書いたり。

「テルマエ・ロマエ」「宇宙兄弟」「へルタースケルター」の3つのソーシャルメディアでの言及数を示したグラフ。減衰の低いものが大ヒットしたものとなる

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